人工呼吸器
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この項目では、人工呼吸を自動的に行うための医療機器についての一般事項について説明しています。

人工呼吸器の医学的側面については「機械換気 (医学)」をご覧ください。

人工呼吸器の設定については「人工呼吸器のモード」をご覧ください。

一時的に心臓と肺の機能を代行する医療機器については「人工心肺装置」をご覧ください。

人工呼吸器
ハミルトンC6人工呼吸器
診療科集中治療医学
[edit on Wikidata]

人工呼吸器(じんこうこきゅうき、: ventilator)とは、病的理由により、呼吸ができない、または呼吸が不十分な患者の呼吸を助けるために、呼吸ガス(英語版)をに出し入れして機械換気: mechanical ventilation)ないしは人工呼吸: artificial ventilation)を行う医療機器の一種である。人工呼吸器は、コンピューター制御のマイクロプロセッサーを搭載した機械であるが、手で操作するシンプルなバッグバルブマスクでも患者を換気することができる(用手換気という)。人工呼吸器は、主に集中治療在宅医療救急医療ではスタンドアローン型が、麻酔科では麻酔器の構成機器として使用されている。

人工呼吸器のことを「レスピレーター」と呼ぶことがあるが、これは英語圏で、1950年代によく使われた呼び方である(特にバード・レスピレーター(英語版))。しかし、現代では、空気中の有害物質から着用者を保護するマスクのことを「レスピレーター」と呼ぶことが多い[1]。日本の医学用語では2023年現在、未だにレスピレーターはマスクでは無く、人工呼吸器のことを指すことが多い[2][3]
機能病室での人工呼吸器の標準的な設定。人工呼吸器は、加温・加湿された空気(さらには酸素濃度を上げて)を患者に送り込む。吐いた空気は患者から離れるように流れる。

最も単純な型式では、現代の陽圧人工呼吸器は、圧縮可能な空気リザーバーまたはタービン、空気および酸素の供給装置、バルブおよびチューブ一式、および使い捨てまたは再利用可能な患者回路(又は外回路とも呼ばれる)で構成されている。空気リザーバーは1分間に数回から十数回空気圧で圧縮され、室温の空気、またはほとんどの場合、空気と酸素の混合物を患者に供給する。タービンを使用する場合は、タービンが空気を人工呼吸器に送り込み、流量バルブが患者固有のパラメーターを満たすように圧力を調整する。加圧が解除されると、患者は肺の弾力性により受動的に息を吐き出し、吐き出された空気は通常、患者マニホールドと呼ばれる患者回路内の逆止弁から放出される。

人工呼吸器は、患者関連パラメータ(気道内圧、換気量、呼吸ガス(英語版)流量など)や人工呼吸器機能(空気漏れ、停電、機械故障など)の監視・警報システム、バックアップ電池、酸素ボンベ、リモコンなどを備えていることもある。空気圧稼働システムの多くは、最近ではコンピュータ制御のターボポンプに取って代わられた。

最新の人工呼吸器は、小型の組み込みシステムによって電子的に制御され、回路内圧と呼吸ガス流量の特性を個々の患者のニーズに正確に適合させることができる。人工呼吸器を上手く設定すれば、患者にとって人工呼吸はより我慢しやすく快適なものとなる。カナダとアメリカでは、呼吸療法士(英語版)が、これらの設定を調整する責任を負い、臨床工学技士はメンテナンスを担当する。イギリスやヨーロッパでは、患者と人工呼吸器の相互作用の管理は、ICU看護師(英語版)が行っている。日本でも人工呼吸器の設定や人工呼吸中の鎮静薬の変更等が所定の研修を受けた看護師の特定行為区分として認められている[4]

患者回路は通常、耐久性があり軽量な3本のプラスチック製チューブのセットで構成され、機能別(吸気用、呼気用、回路内圧測定用)に分かれている。必要な換気の種類によって、回路の患者側には非侵襲的なものと侵襲的なものとがある。

非侵襲的な方法としては、持続気道陽圧(英語版)(CPAP)や 非侵襲的換気などがあり、睡眠時や安静時のみ人工呼吸器を必要とする患者に適しており、主に鼻マスクを使用する。侵襲的換気法では気管挿管が必要である。長期的に人工呼吸器に依存している場合は、口や鼻からの挿管よりも気管切開カニューレを使用するのが一般的で、長期療養にはこの方が快適で実用的だからである。
安全最重視のシステム

故障すると患者は換気不全から死に至る可能性があるため、人工呼吸器は安全最重視のシステム(英語版)に分類されている。電源も含めて高い信頼性を確保するための備えが必要である。換気不全(ventilatory failure)とは、機械的補助なしに安定した血液pHを維持するのに十分なCO2排泄速度を維持できないこと、筋肉疲労、耐え難い呼吸困難のことである[5]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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