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人工内耳(じんこうないじ、英:Cochlear implant)は、聴覚障害者の内耳の蝸牛に電極を接触させ、聴覚を補助する器具である。
装着と訓練により、中途失聴者が一定程度音声を聞き取れるようになったり、聴覚障害のある乳幼児の言語発達を支援できる場合がある。
日本では一部の機器に健康保険が適用される[1]。
構成実際の利用例。黒色の機器が人工内耳の体外部である。後頭部には磁石によって張り付いている送信コイル、耳の上部から裏にかけて耳掛けマイクとスピーチプロセッサなどが見える。
人工内耳は体内装置と体外装置とから成る。体内装置は手術で埋め込まれ、原則として交換しない。体外装置は耳にかけるなどして装着し、必要があれば容易に交換可能である。体内装置の電源は体外装置から電磁誘導により供給される。
体外装置はマイクロホン、音声分析装置、刺激電極、電波の送・受信機からなる。マイクロホンが外の音声をとらえ、音声分析装置で音を電気信号に変換する。電気信号は、非接触で体内装置へ送られ、内耳にある電極へ送られ、電極が聴覚神経を刺激する。蝸牛は部位による周波数特異性をもつので、電極は複数個埋め込む。どの電極をどの程度刺激するかは音声分析装置の中のプロセッサが決定する。
初期の人工内耳システムの対外装置は、耳にかけるマイクロホンと、胸ポケットに入れるプロセッサ、後頭部の送信コイルの3点から構成された。後にプロセッサを小型化し耳掛け部分に内蔵した機種が現れた。これは外観上耳掛け式補聴器に似ている。さらに送信コイルに全てを集約したコイル一体型の機種も現れた。2022年現在では、耳掛け式の機種とコイル一体型の機種が併売されている。 @media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}人工内耳をつけた場合、一般的に90 - 100dB以上の聴力レベルが、35 - 40dBぐらいの聞こえ方になる。[要出典] 電極の数には限界があり、プロセッサのプログラミングにも限界があるので、蝸牛本来の信号は得られないが、現状でも一般的に言えば、かなりの程度で言葉を聞き取ることができるようになる。しかしこれには個人差があり、劇的に聞こえるようになる人もいれば、成人の聾者に多い例だが、中にはあまり効果がなく外してしまう人もいる。すなわち人工内耳は万能の聴力回復技術ではなく、一定の限界がある医療技術であると言える。[要出典] 人工内耳の効果の大小は失聴時期と人工内耳手術を行った時期によって大きく左右される。早い時期の手術が効果が高いともされるが、自己選択のできない乳幼児への手術には議論がある(#手術の時期)。 聴覚による音声言語の獲得後、事故や病気で難聴になった中途失聴者の場合、人工内耳によって言葉の判別は可能となる場合が多い。[要出典] 人工内耳や補聴器の使用は、認知能力を向上させる[2]。 黒田は、人工内耳が単に音声言語の使用可能性の問題に留まらず、装用者の生活の質 (QOL:Quality of Life) に大きな影響を及ぼすことを報告している。黒田が調査対象とした中途失聴者の二つの事例においては、人工内耳装用が障害認識・障害受容[3]の面でも大きな効果をもたらした[4]。とされている他、職場でのストレスの低減や、鳥や虫の鳴き声に季節を感じるようになったことなどが紹介されている。なお、ここでのろう者とは自然言語としての手話の話者である重度聴覚障害者という定義ではなく、医学的な観点からの聾者という意味である。 また乳幼児の事例においても、音声言語による会話すなわちバーバル・コミュニケーションだけでなく、非言語コミュニケーションすなわちノンバーバル・コミュニケーションの量も飛躍的に増大し、親子ともにQOLが改善したとの報告がなされている[5]。 日本における事例では、人工内耳を先天性の重度聴覚障害児が装用した結果、それまで当該児とのコミュニケーションを断念していた親族が積極的に手話や指文字を学んでコミュニケーションを試みるようになったという現象が報告されている[6]。 人工内耳の手術においては顔面神経の麻痺や痙攣など若干のリスクが存在している。例えば黒田が報告した、日本の成人女性の二つの事例では、いずれも手術後数ヶ月に渡って顔面神経の麻痺が見られた[7]。宮崎医科大学は1995年までの26件中の症例で2件の顔面神経刺激を報告した[8]。 元々聴覚者であり聴覚を失った場合は、埋め込み手術をした後、音に慣れるために1 - 2ヶ月ぐらいのリハビリテーションが必要になる。リハビリテーション後は、電話での会話も出来るほどに回復する例も多い。
効果
人工内耳と認知機能向上
人工内耳とQOL
人工内耳と手話・指文字
留意点
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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