人口集中地区(じんこうしゅうちゅうちく)とは、日本の国勢調査において設定される統計上の地区である。英語による "Densely Inhabited District" を略して「DID」とも呼ばれる。市区町村の区域内で人口密度が4,000人/km2以上の基本単位区(平成2年(1990年)以前は調査区)が互いに隣接して人口が5,000人以上となる地区に設定される。ただし、空港、港湾、工業地帯、公園など都市的傾向の強い基本単位区は、人口密度が低くても人口集中地区に含めることがある。都市的地域と農村的地域の区分けや、狭義の都市としての市街地の規模を示す指標として使用される。 基本単位区[注 1](基本単位区内に複数の調査区がある場合は調査区)を基礎単位として定義される。基礎単位となる区域が、市区町村の境界の内部で、以下の2つの条件を両方満たして連なっている場合に、人口集中地区 (DID) となる[1] [2]。 以下の図のようなA、B、Cの3地域があり、いずれの地域でも、その内部の基本単位区の人口密度が4000人/km2以上だとしよう(基本単位区をさらに分割した調査区はないものとする)。密度基準を満たすのはBとCのみである(Aは1つの基本単位区だけからなるので、「区が連続している」という条件に該当しない)。ここで、B地域の総人口は6000人、C地域は4000人であったとすると、規模基準をも満たすB地域のみが、人口集中地区となる。 さらに、こうして定義された人口集中地区に隣接する基礎単位区域については、つぎの条件のどちらかを満たす場合には、密度基準を満たさなくとも人口集中地区にふくめる[1]: 人口集中地区が1つもない市町村もあれば、複数の人口集中地区を持つ市町村も現れる。 人口集中地区の合計人口をDID人口、DID人口を総人口で割り100倍したものをDID人口比ないしは都市化率[3]・都市人口率という。 人口集中地区は、市区町村別に定義するものである。したがって、市区町村の境界をまたいで隣接する場合、別々の人口集中地区としてあつかわれる。 政令指定都市と東京都区部についてのみ、区の境界を挟んで地理的に連接している人口集中地区をまとめて連合人口集中地区と呼ぶ。これは政令指定都市になる前後での統計上の接続性を考慮したものである[4]。 準人口集中地区というものも定義されている。これは、規模基準を3000人以上5000人未満とするほかは、人口集中地区とおなじ基準によって市区町村の境域内で人口密度の高い区域を切り出すものである。[4] いわゆる「昭和の大合併」により市町の区域が大幅に拡大した。このため市町の区域内に広大な農村的区域を抱え込むことになり、市部=大都市・中都市、町=小都市、村=農村的地域という図式は成り立たなくなった。統計上都市的地域と農村的地域を区別することはできなくなり、不都合をきたした。そこで昭和35年(1960年)の国勢調査から人口集中地区が設定されるようになった。[4] 以下に昭和35年からの市及びDIDの数、市部人口比率及びDID人口比率を示す(東京都区部は1市とする、連合人口集中地区は1人口集中地区とする)。 全国市数DID数総人口 (人)市部人口 (人)DID人口 (人)市部人口比率DID人口比率 北海道市数DID数総人口 (人)市部人口 (人)DID人口 (人)市部人口比率DID人口比率 石狩地方市数DID数総人口 (人)市部人口 (人)DID人口 (人)市部人口比率DID人口比率 渡島地方市数DID数総人口 (人)市部人口 (人)DID人口 (人)市部人口比率DID人口比率 檜山地方市数DID数総人口 (人)市部人口 (人)DID人口 (人)市部人口比率DID人口比率 後志地方市数DID数総人口 (人)市部人口 (人)DID人口 (人)市部人口比率DID人口比率 空知地方市数DID数総人口 (人)市部人口 (人)DID人口 (人)市部人口比率DID人口比率 上川地方市数DID数総人口 (人)市部人口 (人)DID人口 (人)市部人口比率DID人口比率 留萌地方市数DID数総人口 (人)市部人口 (人)DID人口 (人)市部人口比率DID人口比率 宗谷地方市数DID数総人口 (人)市部人口 (人)DID人口 (人)市部人口比率DID人口比率
定義
人口密度が4000人/km2以上であるような基礎単位区域が連続していること(密度基準[3])
上記の連続する基礎単位区域の合計人口が5000人以上(規模基準[3])
文教レクリエーション施設、宗教施設、産業施設,官公庁、公共施設、社会福祉施設などが面積の半分以上を占める
これらの施設をのぞいた残りの区域に人口が密集している
問題点
あくまで人口が集中している地域を抜き出しているというだけであるため、一般的に連想される「都市」とは一致しない場合がある[3]。例えば土屋(2009)は、埼玉県にそのような地域があると指摘している。
DIDを用いた都市化率の定義は他の主要先進国の都市化率の定義に比べ、厳しいことが指摘されている[3]。例えば2005年(平成17年)の国勢調査人口を用いて日本の都市化率を試算すると、日本の定義(DIDを用いた定義)では66.0%であるが、イギリスの定義を日本に適用すれば100%、カナダの定義を適用すれば92.0%まで上昇する[3]。
人口集中地区登場の経緯
昭和35年5618919430,16235967,78854082,999163.3%43.7%
昭和40年56710029920,91376735,61584726,145567.9%48.1%
昭和45年58811561,0466,51717542,86605599,688572.1%53.6%
昭和50年64412571,1193,96438496,72696382,264875.9%57.0%
昭和55年64713201,1706,03968918,74096993,485476.2%59.7%
昭和60年65213681,2104,89239288,92367334,412176.7%60.6%
平成2年65613731,2361,11679564,35217815,245277.4%63.2%
平成7年66513891,2557,02469800,91078125,467078.1%64.7%
平成12年67213591,2692,58439986,52898280,968278.7%65.2%
平成17年75113341,2776,79941,1026,43248433,141586.3%66.0%
平成22年78613191,2805,73521,1615,66318612,146290.7%67.3%
各都道府県の人口集中地区の統計
北海道地方
昭和35年2756503,9206258,9717211,965351.4%42.1%
昭和40年2865517,1800297,3574240,865057.5%46.6%
昭和45年3092518,4287331,7514296,940464.0%57.3%
昭和50年3290533,8206372,9598324,019469.9%60.7%
昭和55年3291557,5989398,2676366,165871.4%65.7%
昭和60年3286567,9439412,2135378,957772.6%66.7%
平成2年3280564,3647416,7409393,079273.8%69.6%
平成7年3282569,2321424,9121410,972974.6%72.2%
平成12年3475568,3062438,9368412,920577.2%72.7%
平成17年3472562,7737441,0600410,797278.4%73.0%
平成22年3568550,6419444,9360407,674380.8%74.0%
昭和35年3677,964460,575754,488577.7%69.9%
昭和40年34100,083989,066172,470389.0%72.4%
昭和45年310121,8050113,000393,097592.8%76.4%
昭和50年414148,7629141,9152117,102895.4%78.7%
昭和55年414169,4196159,7805145,022994.3%85.6%
昭和60年412186,4671175,5222161,597494.1%86.7%
平成2年413202,4041190,3504184,234994.0%91.0%
平成7年415215,4646201,9737200,922093.7%93.3%
平成12年613224,2564221,2679209,199398.7%93.3%
平成17年614231,0015228,6296215,604699.0%93.3%
平成22年614234,2338232,0057220,217399.0%94.0%
昭和35年1348,241824,301225,022550.4%51.9%
昭和40年1648,294824,341827,414950.4%56.8%
昭和45年1648,321524,166329,143250.0%60.3%
昭和50年1649,678730,745330,676561.9%61.7%
昭和55年1751,074232,015433,694562.7%66.0%
昭和60年1650,554331,919432,763763.1%64.8%
平成2年1548,318330,724931,179463.6%64.5%
平成7年1947,409629,888132,883263.0%69.4%
平成12年1946,167728,763731,274562.3%67.7%
平成17年1944,943529,426430,465965.5%67.8%
平成22年2842,780732,715929,156976.5%68.2%
昭和35年0110,5010051060%4.9%
昭和40年019,6589059330%6.1%
昭和45年028,527401,50510%17.7%
昭和50年017,8048099910%12.8%
昭和55年017,3949090940%12.3%
昭和60年016,9441091560%13.2%
平成2年016,2359088800%14.2%
平成7年015,7642081360%14.1%
平成12年015,4830073560%13.4%
平成17年014,6996064760%13.8%
平成22年014,2058054990%13.1%
昭和35年1438,912119,851120,088851.0%51.6%
昭和40年1536,973919,677119,631653.2%53.1%
昭和45年1634,768219,185621,219855.2%61.0%
昭和50年1533,083318,440620,541555.7%62.1%
昭和55年1630,891518,072820,854858.5%67.5%
昭和60年1530,504517,248619,207356.5%63.0%
平成2年1528,758016,321118,360856.8%63.8%
平成7年1527,489315,702217,973957.1%65.4%
平成12年1626,281115,068716,971657.3%64.6%
平成17年1625,006614,216115,938256.9%63.7%
平成22年1623,294013,192814,798556.6%63.5%
昭和35年91782,438653,878032,616865.4%39.6%
昭和40年101870,487349,410428,698570.1%40.7%
昭和45年101859,900643,256529,835672.2%49.8%
昭和50年101550,848237,337523,188573.4%45.6%
昭和55年101548,863036,241121,533474.2%44.1%
昭和60年101446,561634,519420,669374.1%44.4%
平成2年101042,000630,979117,178273.8%40.9%
平成7年10940,480829,685716,647473.3%41.1%
平成12年10938,665728,279616,083473.1%41.6%
平成17年10836,559426,720214,889573.1%40.7%
平成22年10733,625425,690913,499676.4%40.1%
平成17年から平成22年の間に雨竜郡幌加内町が空知地方から上川地方へ移動
昭和35年3556,909426,311919,984246.2%35.1%
昭和40年3858,196331,785423,676954.6%40.7%
昭和45年4956,652438,744729,442868.4%52.0%
昭和50年41154,996141,485433,066075.4%60.1%
昭和55年4758,248944,512037,151276.4%63.8%
昭和60年4658,292945,330537,620577.8%64.5%
平成2年4656,159544,226637,747578.8%67.2%
平成7年4655,381243,965638,609079.4%69.7%
平成12年4654,770443,647339,213079.7%71.6%
平成17年4653,548043,008138,695580.3%72.3%
平成22年4552,036542,373237,325981.4%71.7%
平成17年から平成22年の間に雨竜郡幌加内町が空知地方から上川地方へ移動
昭和35年1113,47733,58182,042626.6%15.2%
昭和40年1213,42044,02313,649030.0%27.2%
昭和45年1211,86293,86914,196632.6%35.4%
昭和50年129,37893,68823,573939.3%38.1%
昭和55年128,95543,66263,901940.9%43.6%
昭和60年128,42483,55423,680542.2%43.7%
平成2年127,62623,24293,302442.5%43.3%
平成7年127,04033,00603,067042.7%43.6%
平成12年126,58912,83252,859343.0%43.4%
平成17年126,14942,68262,657843.6%43.2%
平成22年115,31052,44571,928446.1%36.3%
平成17年から平成22年の間に天塩郡幌延町が留萌地方から宗谷地方へ移動
Size:162 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
担当:undef