この項目では、食用野菜について説明しています。
主に「高麗人参」などの名称で呼ばれる薬用植物については「オタネニンジン」をご覧ください。
その他の用例については「ニンジン (曖昧さ回避)」をご覧ください。
広義: Daucus carota L. (1753)[3]
シノニム
Daucus carota L. var. sativus Hoffm. (1791)[4]
和名
ニンジン
英名
carrot
ニンジン(人参[5]、学名: Daucus carota subsp. sativus)は中央アジア原産のセリ科ニンジン属の二年草。畑で栽培し、多肉質の根は食用にされる。
名称[ソースを編集]「オタネニンジン」も参照
属名 Daucus、種小名 carota はラテン語でそれぞれ「パースニップ」、「ニンジン」の意。英名キャロットの名は種小名に由来する。
なお、本来、ニンジン(人参)とはオタネニンジン(朝鮮人参)を指す語であり、本種は本来は胡蘿蔔(こらふ・こらふく)[7]と呼ばれた外来野菜であった。現在でも中国では胡蘿蔔と記述している。ちなみに「蘿蔔」とは「すずしろ」(ダイコンの異名)のことであり、「胡」は外来であることを示している。(胡麻=ゴマ・胡椒=コショウ・胡桃=クルミ・胡瓜=キュウリなども同様)陶穀の『清異録』には「皺面還丹」の別名がある[8]。
特徴[ソースを編集]
東洋系ニンジンと西洋系ニンジンに大きく分けられ、東洋系は細長く、西洋系は太く短いが、ともに古くから薬や食用としての栽培が行われてきた。クセのある香りがあり、加熱すると甘味が出る[9]。
食用とする根は長い倒円錐形で、ふつう長さは15 - 20センチメートル (cm) であるが、中には4 cmほどの短いものや、1メートル (m) を超す長い品種もある[10]。根の色は橙色のほか、赤色、黄色などの種類がある[10]。カロテノイドを含む黄色や橙色のものや、黒人参などアントシアニンを含む濃紫色や紅紫色のものがある。春から秋に大型の複散形花序を出して、多数の小さな白い5弁花を咲かせる[11]。果実は細長い楕円形で、表面を覆うように鋭いトゲが多数つく[11]。
なお、一般に薬草として用いられているオタネニンジン(朝鮮人参・高麗人参とも)はウコギ科 [12][13]の植物であり、本種とは別の科に分類される。
ニンジンの根
ニンジンの葉
セリ科に特徴的な散形花序
種子のように見える果実
果実(格子は5 mm)
挿絵
歴史[ソースを編集]
ニンジンは中央アジアの原産で[14]、西洋系ニンジンの原産地は小アジア、東洋系ニンジンの原産地は中央アジアともいわれている[9]。原産地のアフガニスタン周辺で東西に分岐したともいわれ[15]、世界各地に伝播した。西洋系ニンジンは15世紀ごろまでにヨーロッパに広まり、オランダやフランスを通り、イギリスへと西方へ伝来しながら改良が行われた[9]。東洋系ニンジンは、10世紀ごろにはすでに中国に伝わっていたとみられる[9]。
日本には16 - 17世紀ごろに中国から伝わり[14]、短い期間で全国に広まった[9]。江戸時代の農書に「菜園に欠くべからず」とある[9]。日本で江戸時代に栽培されていた品種は東洋系が主流だったが、江戸時代後期に西洋系ニンジンが伝わり、明治期に入ると欧米品種が次々と導入されるようになった[9]。東洋系ニンジンは栽培の難しさから生産量が減少し、戦後は西洋系品種が主流になっている。
栽培[ソースを編集]
種蒔きから収穫まで3 - 4か月ほどかかる野菜である[16]。栽培方法は、初春に種をまき晩春から初夏に収穫する春にんじん(春まき栽培)と、夏から初秋に種をまいて晩秋から冬に収穫する秋冬にんじん(夏まき栽培)、冬にハウスで種をまき、春から晩秋に収穫する冬まき栽培がある[5]。秋まきで育てる方が、収穫までとうが立ちにくい[16]。栽培土壌は肥えている土地がよく、苗が小さいうちは雑草をこまめに除草する[5]。連作は可能であるが、栽培はやや難しく、十分な日照が必要で[17]、15 - 25度が栽培適温とされる[16]。品種によって生育に適した時期がある。短根品種は、家庭で大型のプランター(コンテナ)を使った栽培もできる[17]。
涼しい気候が適しているが、苗の段階では比較的高い温度にも耐えられる。ニンジンは発芽率が低く、種は好光性で吸水力が弱いため種撒き後は覆土はごく薄くし、雨後を狙って筋まきあるいは1か所に5 - 6粒ほど種を撒き、発芽するまで乾燥させないように管理する必要がある[16][17][5]。