人事(じんじ)とは、企業やその他の団体・組織における職員の処遇などの決定に関する業務。
人事制度とは従業員の処遇を決定する仕組みをいい、狭義には、等級制度(職能、職務、役割)、評価制度(能力、職務、役割)、報酬制度(基本給、手当、賞与)の3つの制度から構成される[1]。広義には、勤務形態、労働時間、福利厚生など従業員に関するすべての仕組みを指す[1]。 人事制度は、従業員の企業に対するエンゲージメントを高めるため、目標設定、評価レビュー、能力開発/後継者育成、褒賞が密接に連携して運営される体系である[2]。人事制度は、従業員意識さらに組織風土に大きな影響を与えるほか、人件費の負担や増加にも影響を与える[3]。 米国発祥のHuman resource management(HRM)の日本語訳である人材マネジメントの概念があり、米国では従来の労務管理(personal management)にかわって登場した概念である[4]。従来の労務管理(personal management)は、短期的・受動的で、雇用に関する視点が集団的、システムも機械的・集権的で人に対して規定された役割を求めるといった特徴があった[5]。また、従来の労務管理の実行責任者は会社の人事部門とされ、評価基準はコストの最小化にあった[5]。これに対して人材マネジメント(Human resource management)は、長期的・能動的で、雇用関係に関する視点は個人にあり、システムも権限移譲など柔軟な役割で規定される特徴がある[5]。また、人材マネジメントでは実行責任者は会社の人事部門ではなくラインマネージャーとされ、評価もコストの最小化よりも人材の最大限の活用にある[5]。 入社から退職までの一連の流れをリソースフローという[6]。 等級制度とは、個人の能力や職務内容に応じた等級(資格・職階)を定めて、企業内での従業員の位置づけを決定することをいう[1]。一般的に、職責(職務)や能力の差で階差をつけ、上位等級ほど賃金が高くなるようになっている。 等級制度には、職能資格制度、職務等級制度、役割等級制度がある。 等級制度において、上位等級に上がることを昇格(昇級)といい、例えば4級だった従業員が5級に上がるといったことである。なお、役職が上がることを昇進といい、例えば課長だった従業員が部長になるといったことである。 評価制度とは、人事考課あるいは査定ともいい、従業員の職務上の成果や勤務上の態度を評価して等級や報酬を決定することをいう[1]。 評価は、従業員の報酬の決定、昇格昇進の決定、配置や異動の参考、個人の能力開発などのために行われる[8]。
概説
等級制度
職能資格制度職務遂行能力(職能)に応じて等級を決定する仕組みを職能資格制度という[7]。一般的に、職能要件書などと呼ばれる等級ごとの能力の定義を行い、従業員の能力をもとに等級の位置づけを行うものである。昇格の基準には、卒業方式と入学方式があり、前者は現在の等級に求められる能力を満たしたときに上位等級に昇格させるもので、後者は上位等級に求められる能力を満たしたときにその等級に昇格させるものである。
職務等級制度職務内容(職種及び役職)に応じて等級を決定する仕組みを職務等級制度という[7]。なお職階制とは、主に公務員などに取り入れられている制度で、役職と等級を一致させる制度である。この制度のメリットとしては、仕事の役割(役職)と賃金がマッチするので、納得感を得やすいことであろう。その反面として、賃金と業務との相関関係が解析されることはなく、また上位ポストが空いていないと本人にどれだけ能力があっても昇進(昇格)ができないため、モチベーションが下がってしまうことがある。
役割等級制度役割(役職及び習熟度)に応じて等級を決定する仕組みを役割等級制度という[7]
評価制度詳細は「人事評価」を参照
使用目的による分類
昇給考課: 昇給を決定するための評価[8]。
賞与考課: 賞与を決定するための評価[8]。
評価内容による分類
成果評価(業績評価): 仕事上の実績(売上目標や生産個数など)による評価[8]。
能力評価: 仕事の遂行上の能力(判断力など)による評価[8]。
情意評価: 仕事への取り組みや勤務態度(積極性など)やコンプライアンス(法令遵守)による評価[8]。