京鹿子娘道成寺
[Wikipedia|▼Menu]
『京鹿子娘道成寺』 嘉永5年3月(1852年4月)江戸市村座上演の 『京鹿子娘道成寺』を描いた役者絵。大判錦絵二枚続物、三代目歌川豊国画。左から、初代坂東しうかの白拍子花子、三代目嵐吉三郎のこんから坊、三代目關三十郎のせいたか坊。

『娘道成寺』(むすめどうじょうじ)とは、歌舞伎舞踊の演目のひとつ。またその伴奏音楽である長唄の曲のひとつ。今日では、『京鹿子娘道成寺』(きょうがのこむすめどうじょうじ)が正式な外題である。
概要

の『道成寺』に基づく。

初演:宝暦3年 (1753年) 3月、江戸中村座の『男伊達初買曽我』(おとこだてはつかいそが)の三番目に上演。初代中村富十郎の白拍子(横笛)[1]

作詞:藤本斗文[2]

作曲:初世杵屋弥三郎、補作:初世杵屋作十郎(伝)

振付:初代中村傳次郎[3]

古くは道成寺伝説を題材にした「道成寺もの」と呼ばれる演目や踊りが複数あり、それぞれお家芸である独特の所作や振付けなどを盛り込んだものだった。初代富十郎はそうした「道成寺もの」の中から、初代瀬川菊之丞が踊った『百千鳥娘道成寺』(ももちどりむすめどうじょうじ)を構成の土台とし、自らの当り芸である『娘道成寺』を作り上げた。そして現在まで曲と振付けが揃って伝わるのは初代富十郎の『娘道成寺』のみとなってしまったので、歌舞伎や日本舞踊で『娘道成寺』といえば通常初代富十郎が演じたものを指す。

なお派生形として二人の白拍子が踊りを競う『二人道成寺』(ににんどうじょうじ)や、立役が主役の『奴道成寺』(やっこどうじょうじ)、また男と女二人で踊る『男女道成寺』(めおとどうじょうじ)があるが、いずれも曲や構成は『娘道成寺』のものを基本として使っている。
構成

全体は道行、問答、踊りに大きく分けられる。

幕が開くと「聞いたか、聞いたか」、「聞いたぞ、聞いたぞ」の科白を言いながら大勢の所化が花道より登場(俗にこれを「聞いたか坊主」と呼ぶ)、本舞台に来る[4]。所化たちが舞尽くしの科白をいうくだりなどあり、それを終えると舞台に並んで座る。下手には後見が寺の入口をあらわす小さな木戸を持ってきて舞台に据える。上手からは竹本連中の乗った山台を引出して第一段の道行が始まる。六代目中村歌右衛門の白拍子花子。道行の姿。昭和26年(1951年)。

第一段(上演時間の関係でこの第一段と次の第二段を略し、すぐに第三段に移る場合がある)

道行:花道より白拍子花子が帽子付きの島田髷振袖の娘姿で登場[5]。竹本(義太夫節)で(常磐津を使う事もある[6]に対する恨みを語る。花子が花道での所作を終えると舞台に来て、閉められている木戸のそばに立つ。竹本連中は演奏を終えて引っ込む。



第二段

問答:花子と所化が珍問答をするが、この場面も時間の都合上、短く端折られる事が多い。花子は木戸を通って所化から烏帽子を受け取ると、一旦下手へ引っ込み赤地の振袖に衣装を替え、木戸は片付けられ所化たちも舞台の両側に座り、次の第三段となる。

二代目中村のしほの白拍子さくら木実は横笛亡魂。寛政8年(1796年)、江戸都座。初代歌川豊国画。

第三段

乱拍子:長唄連中が三味線無しで、能の『道成寺』の「花のほかには松ばかり…」の文句をガカリで唄い、花子が烏帽子を付け、能をまねて乱拍子を踏む。ここで演者によっては「道成の卿うけたまわり…」と、花子が謡いながら乱拍子を踏むこともある。

急の舞:これも能にある通り、「急の舞」を中啓という扇を持って舞う。菊五郎系の型では乱拍子を少し見せたあと、この急の舞をやらず直ぐに第四段になる(志賀山流もそうだという)。



第四段

中啓の舞(鐘づくし):三味線が入って歌舞伎らしい踊りとなる。「鐘に恨みは数々ござる」に続く歌詞は、能の『三井寺』から取った「鐘づくし」である。踊りの最後で烏帽子を取るが、鐘の釣り紐に烏帽子を引っ掛けて取る型と、取った烏帽子を開いた中啓の上に乗せてきまる型の二通りがある。現在後者の型で行われることが多い。



第五段

手踊:恋の切なさを娘姿で踊る。最後に「引き抜き」という衣装の仕掛けで振袖が赤地から浅葱色に、舞台上で変わる[7]



第六段

鞠歌:少女の鞠つきをまねて踊る。歌詞は日本各地の遊郭を唄い込む。

初代中村富十郎、花笠踊りの段。勝川春章画。

第七段

花笠踊り:古い流行歌『わきて節』から取った踊り。笠をかぶり、さらに同じ笠を両手に持って踊る。

所化の花傘踊り:花子が一くさり踊って引っ込むと、今度は所化たちが花傘を持って踊る[8]

合方(チンチリレンの合方):花子が次の第八段の仕度をするあいだのつなぎとして演奏される。長唄三味線のみの華やかな連弾きで、曲として聞きどころの一つ。



第八段

手拭いの踊り(くどき):女の恋心を、手拭いを持って踊る。

鞨鼓の合方:次の第九段までのつなぎ。



第九段

山づくし(鞨鼓の踊り):歌詞は二十二の山の名を唄い込む。胸に鞨鼓を着け、これを両手に持った撥で打ちながら踊る。



第十段

手踊:「ただ頼め」の唄で踊る少女らしい踊り。ただしこの段もカットされることが多く、その場合は第九段途中の歌詞「いのり北山稲荷…」から衣装を引き抜き、第十一段の鈴太鼓の踊りとなる。



第十一段

鈴太鼓:鈴太鼓を手に持って踊る。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:22 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef