交響曲第6番 ロ短調 作品54は、ドミートリイ・ショスタコーヴィチが作曲した6番目の交響曲である。 交響曲第5番ニ短調を作曲し、その名誉を回復したショスタコーヴィチが1939年に書いた叙情的な作品である。前作とこの作品との関係は、ベートーヴェンの「運命」と「田園」の関係と似ている。ただ、ベートーヴェンの「田園」は標題的であるのに対して、この作品には標題のようなものはない。 1939年11月5日、エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮、レニングラード・フィルハーモニー交響楽団、レニングラードにて。 3つの楽章から構成される。演奏時間は約35分。 ロ短調。第8交響曲と同じように第1楽章に全体で最も重いクライマックスが来ている。@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}最終的に交響曲第12番で実現することとなる「レーニン交響曲」の原型だったといわれる。[要出典]苦悩と煩悶を描いた長大な楽章。ただし、ミステリアスな幻想性も感じさせる音楽であり、中盤、2本のフルートの不気味なソロと、そのソロを締めくくるトリルがチェレスタに受け継がれる部分は非常に神秘的である。 ト長調。第1楽章とは対照的に、爽やかで喜びに満ちた楽章となっている。 ロンド形式[1]による終曲。ロ短調?ロ長調。リズミックなロンド主題と、第2楽章のリズムを想わせる中間部を経て、ロンド主題の再現の後、ロ長調に転じたコーダは中間部の楽想で陽気に[1]幕を下ろす。 この曲の構成を一般の交響曲の形式に当てはめてみると、第1楽章=緩徐楽章、第2楽章=スケルツォ、第3楽章=終曲となり、通常の交響曲の第1楽章にあたるソナタ形式の楽章がない。そのため、この曲はしばしば「頭のない交響曲」と呼ばれるが、ベートーヴェンの「月光ソナタ」にその先例が見られる。 同時代に活躍した指揮者であるレナード・バーンスタインは、この曲に関して次のように解説している。以下要約。[2] 第1番 - 第2番『十月革命に捧ぐ』 - 第3番『メーデー』 - 第4番 - 第5番 - 第6番
概要
初演
曲の構成
第1楽章
Largo
第2楽章
Allegro
第3楽章
Presto
楽器編成
木管楽器ピッコロ1、フルート2、オーボエ2、イングリッシュホルン1、クラリネット3(うちピッコロクラリネット1持ち替え1)、バスクラリネット1、ファゴット3(うちコントラファゴット持ち替え1)
金管楽器ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、チューバ1
打楽器、その他ティンパニ、トライアングル、大太鼓、小太鼓、シロフォン、タムタム、シンバル、チェレスタ、タンブリン、ハープ
弦楽器第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス
解釈について
バーンスタインによる解釈
チャイコフスキーの「悲愴」とこの曲は共に交響曲第6番で、ロ短調である。そして「悲愴」は音楽史上初めて、長くゆったりとした終楽章を持ってきており、ショスタコーヴィチの第6番は、音楽史上初めて、長くゆったりとした第1楽章になっている。これは偶然などではなく、ショスタコーヴィチの第6番は「悲愴」を受け継いでいるのである。
この曲は当時の世界情勢を反映しており、作曲された1939年にドイツがポーランドに侵攻して第二次世界大戦が始まったが、独ソ不可侵条約により、ドイツはポーランドのソ連領には侵攻しなかった。「我が国は平和だ。」という偽善を表しているのが、第2楽章、第3楽章である。
第1楽章が長いのは、そこに注目させて、第2・第3楽章の真の狙いを覆い隠すためである。
脚注^ a b 千葉潤 『ショスタコーヴィチ』 音楽之友社、2005年、ISBN 4-276-22193-5 193頁。
^ これらの解説は、DVD「ショスタコーヴィチ交響曲第6番&第9番 レナード・バーンスタイン指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団」に収録されており、閲覧可能。
外部リンク
⇒Sinfonia in si minore op.54 n.6(イタリア語) - 『Magazzini Sonori』より《2007年10月に収録された演奏音源(A.ヴェデルニコフ指揮)を掲載》
表
話
編
歴
ショスタコーヴィチの交響曲
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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