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この項目では、ヒトにおける亜鉛欠乏症について説明しています。植物における亜鉛欠乏症については「亜鉛欠乏症 (植物)」をご覧ください。
亜鉛欠乏症(あえんけつぼうしょう)は、亜鉛欠乏によって生じる微量栄養素の欠乏症で、「亜鉛欠乏の臨床症状」と「血清亜鉛値」によって確定診断が行われる。日本人は潜在的に亜鉛が不足気味であるとの報告がある[1]。
典型的な症状は、味覚障害、貧血、皮膚炎、口内炎、脱毛症、難治性の褥瘡(じょくそう、床ずれ)、食欲低下、発育障害(小児で体重増加不良、低身長)、性腺機能不全、不妊症、易感染性のうち1つ以上の症状を示し、血清亜鉛値が60μg/dL未満で亜鉛欠乏症と診断される[2]。 「亜鉛欠乏症」とは、亜鉛欠乏による症状と検査所見(血清亜鉛値、血清アルカリホスファターゼ値(ALP値)から捉えたものであり、「低亜鉛血症
亜鉛欠乏症と低亜鉛血症
亜鉛が欠乏すると亜鉛酵素の活性が低下する。亜鉛はDNAポリメラーゼやZinc finger protein (ジンクフィンガー)などにも不可欠な微量ミネラルであるため、亜鉛欠乏で体内の蛋白合成全般が低下する。したがって、亜鉛が欠乏するとタンパク質生合成の盛んな細胞・臓器で障害が生じやすい[2]。 舌の上皮細胞は亜鉛が豊富である。特に、糸状乳頭基底部や有郭乳頭部の味蕾を含めた上皮部分には亜鉛は高濃度に存在し、味蕾内、特に味孔周辺にはアルカリホスファターゼ、酸性ホスファターゼ、Cyclic AMP Phosphodiesterase(サイクリックAMPホスホジエステラーゼ)などの亜鉛酵素が多く含まれる。動物実験では、亜鉛欠乏で乳頭の扁平化、味細胞先端の微絨毛の消失、味細胞の空胞化などが観察されている[3][4]。人においても同様の変化が生じている[4]。 赤芽球の分化、増殖にZinc finger proteinであるGATA-1が不可欠で、亜鉛欠乏により赤芽球の分化・増殖が障害され、貧血を生じる[5]。亜鉛欠乏性貧血の特徴は、赤血球数が減少し、正球性または小球性貧血で、血清総鉄結合能(TIBC)は低下している。鉄欠乏を合併している場合は小球性になる。 スポーツ競技者や透析患者では、亜鉛欠乏性溶血により高頻度に貧血になる。スポーツ競技者での亜鉛欠乏の原因は、汗や尿からの亜鉛排泄の増加と考えられている。亜鉛欠乏により赤血球膜の抵抗性が減弱し、強度の機械的刺激(激しい運動、透析など)で溶血するとの機序が推定されている[6][7]。 小児では、亜鉛欠乏で成長障害、すなわち身長の伸びが悪くなり、低身長症になる。亜鉛欠乏での成長障害の病態として、成長ホルモン分泌・肝での成長ホルモン受容体減少・IGF-1産生低下・テストステロン産生低下などが考えられている[8][9][10]。
味覚障害
貧血
発育障害
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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