井戸
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この項目では、地面を掘った設備について説明しています。日本の氏族については「井戸氏」をご覧ください。
一乗谷朝倉氏遺跡で復元した戦国時代の井戸。井桁を備え、つるべと桶で使用する。

井戸(いど)は、広義には地下資源(地下水温泉石油天然ガス地熱など)の採取や調査・観測などのために地中に向かって掘った設備

一般に「井戸」といった場合には地下の帯水層から地下水を汲み上げるために地層や岩石を人工的に掘削した採水施設を指すことが多い[1][2]。以下、地下水を汲む井戸を中心に説明する。
概要

採水施設としての井戸の多くは地面に垂直に掘られた井戸(竪井戸[3][4])である。一般的に井戸は地下深い水源から取水しているものほど水量は安定し水質もよい[5]

現在日本では、伝統的な井戸を新しく設置する事は少なくなってきている。しかし水源としての地下水は今もって重要であり、自治体によっては表流水ではなく、地下水のみを水道水源として井戸を使用している地域もある。水道水源の取水設備としての揚水井戸には浄水場が併設され、全体として浄水場と呼ばれることもある。

日本の政府開発援助NGOの手などにより、アフリカ諸国を中心に、井戸の掘削、手押しポンプの設置などが進められている。

日本語の「いど」の語源は水の集まるところを意味する「井処」に由来する[3]
歴史

東京都伊豆諸島式根島の「まいまいず井戸」東京都目黒区の古い井戸松山城二之丸史跡庭園の大井戸旧小石川養生所の井戸。1923年の関東大震災では飲み水として利用された。

人類の祖先は水源として湧泉渓流を利用していたが、湧出量を増やすあるいは濁らない水を得るといった目的から、やがて湧口を広げ水を溜めて用いるようになった[6]

シリア北東部、新石器時代のテル・セクル・アルアヘイマル遺跡から発見された井戸は約9,000年前のもので、浄水目的では最古の例と云われている[7]。日本での古い井戸として、御井神社 (出雲市)の井戸、法輪寺 (奈良県斑鳩町)の井戸、玉の井(鹿児島県)が挙げられる[8]

井戸は窪地や崖下に作られることが多かったが、地下水面の深くなっている場所では階段式・すりばち式・螺旋式などの方法が用いられた[6]。掘井戸の掘削方法で帯水層に達することができぬほど地表と地下水面(帯水層)が離れている場合には、まず地表にすり鉢状の窪地を掘り、その底に掘井戸を掘削する方法がとられた。これを「まいまいず井戸」と呼ぶ(地域により呼称が異なる)。すり鉢状の斜面には井戸端に降りて行くための螺旋型の歩道が作られた。
井戸の種類
竪井戸と横井戸

地面に垂直に掘って地下水を汲み上げる井戸を竪井戸、山のなど斜面に水平方向に掘る井戸を横井戸という[3][4][2]

横井戸に比べ竪井戸のほうが圧倒的に数が多い[2]。横井戸の代表例としてカナートがある。日本では有名な横井戸として大阪府茨木市岩坂にあった横井戸がある[2]
被圧井戸と重力井戸

井戸が被圧帯水層中に掘られているものを被圧井戸、不圧帯水層中に掘られているものを重力井戸という[1]
掘井戸と掘抜井戸
掘井戸
人が坑内に直接入って掘った井戸
[3]。丸井戸ともいう。地域によって呼称が異なり「ガワ井戸」と呼ぶこともある。英語ではdug well。概ね直径1 - 3メートルの孔を、人力により垂直に地下水面に達するまで掘削する。孔壁が崩壊しないように、掘削しながら、孔壁に石積みブロックで、周りを補強しながら掘削していく。地層の硬さ等によって異なるが、おおよそ10 - 20メートル位掘ることができる。地下水位が浅い地域、特に自由地下水が豊富な地域(例えば関東地方では関東ローム層が分布する台地上)において、作成されていた井戸である。日本国内ではボーリング工法(掘削工法としての上総掘りも含む)による掘り抜き井戸を造る技術が普及する以前や、ボーリング工法を採用するまでもなく地下水位が浅い地域で多く設置されていた。現在ではボーリングによる井戸設置が一般化したため、掘井戸作成の職人が少なくなり、新しく造られることは少なくなってきている。
掘抜井戸
難透水層を掘り抜き深い帯水層の地下水を汲み上げる井戸。地上から棒状のもので穴を掘っていき細い水管を差し込んだものである[3]。具体的にはボーリング工法(掘削工法としての上総掘りも含む)により作成する。江戸時代には上総掘りの普及といった技術の進歩や衛生上の利点といった点から掘抜井戸が普及した[3]降水の少ない砂漠地帯でも水を得ることができる。オーストラリア大鑽井盆地は掘抜井戸が多いことで有名である[6]
自噴井と非自噴井

掘抜井戸は自噴井と非自噴井に分けられる[6]
自噴井
帯水層に大きな圧力がかかって地下水が地上に噴出する井戸を自噴井といい[2][6]、自流井、吹上井、アーティシャンウェルともいう[6]被圧地下水(胚胎する地下水の水面が、その帯水層上面よりも高い状態)に井戸を掘り、その水面が地表面以上になると、地下水は汲み上げなくても井戸から噴き出し、掘抜井戸で被圧帯水層を取水している井戸にこの現象が現れる。地域的には扇状地の先端(地形としては扇端部と言う)にあることが多い。
非自噴井
自噴井ではない掘抜井戸。
浅井戸と深井戸

井戸の深さ(孔底深度)が浅く不透水層の上にあって自由地下水(不圧地下水)を取水している井戸を浅井戸[9](及び浅井戸水)、孔底深度が深く不透水層の下から取水している井戸を深井戸(及び深井戸水)という[5]。ただ、この分類には学問的な定義がなく[6]、一般には深さ20 - 30メートルが基準とされる[10][11]。ただ、地下に分布する帯水層の深度は地域ごとに異なる。
江戸下町の井戸

江戸時代江戸下町地域の井戸は、地下水取水のための設備ではなく、玉川上水を起源とする、市中に埋設された上水道の埋設管路(ライフライン)からの取水設備であった[12][13]。これは大部分の下町地域は太田道灌により海を埋め立てて造成された地域であり、井戸を掘っても海水ばかりがでて使い物にならなかったため[12]、埋設管路により下町に水を供給し、これを井戸(形状としては掘井戸の形)に接続させ、給水を行っていた[12][13]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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