五塩化リン
IUPAC名
Phosphorus pentachloride
Phosphorus(V) chloride
別称Pentachlorophosphorane
塩化リン(V)
識別情報
CAS登録番号10026-13-8
166.8 °C, 440.0 K, 332.2 °F
沸点
160 °C, 433 K, 320 °F (昇華)
水への溶解度分解
溶解度CS2、ハロゲン化アルキル、ベンゼンに可溶
危険性
安全データシート(外部リンク)ICSC 0544
EU分類Very toxic (T+)
EU Index015-008-00-X
NFPA 704032W
RフレーズR14, R22, R26, R34, R48/20
Sフレーズ(S1/2), S7/8, S26, S36/37/39, S45
引火点不燃性
半数致死量 LD50660 mg/kg
関連する物質
関連する五ハロゲン化リン五フッ化リン
五臭化リン
五ヨウ化リン
関連物質三塩化リン
塩化ホスホリル
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
五塩化リン(ごえんかリン、phosphorus pentachloride)は、化学式 PCl5 で表される無機化合物である。リンの塩化物としては三塩化リン、塩化ホスホリルと並んで重要な化合物である。合成化学において特殊材料ガス、各種塩化物の製造として用いられる[1]。不快な刺激臭を持つ淡黄色の固体(結晶)であり、水により加水分解し塩素ガス及びリン酸を生成する。不燃性、腐食性が強く毒物に指定されている。
構造五塩化リンの原子価を描いた図。
気体および融解液の五塩化リンは三方両錐形構造(tbp構造、3回対称の三角錐を2つ持つD3h構造)の単量体をとっているが、溶液中での構造は溶媒に依存する[2]。
極性溶媒の希薄溶液中では次の平衡が成立する。 PCl 5 ⇄ [ PCl 4 + ] Cl − {\displaystyle {\ce {PCl5\ \rightleftarrows \ [PCl4^{+}]Cl^{-}}}}
高濃度になると、不均化を含む次の平衡がより顕著となる。 2 PCl 5 ⇄ [ PCl 4 + ] [ PCl 6 − ] {\displaystyle {\ce {2PCl5\ \rightleftarrows \ [PCl4^{+}][PCl6^{-}]}}}
カチオンの PCl4+ とアニオンの PCl6- はそれぞれ正四面体構造、正八面体構造を取る。リン塩化物は常に原子価殻電子対反発則に従う。
二硫化炭素や四塩化炭素などの非極性溶媒中では、PCl5の気体、液体状態でみられる D3h 構造が保たれている[3]。
かつて五塩化リンは溶液中で二量体 P2Cl10 として存在していると考えられていたが、この説はラマン分光法により否定された。 三塩化リンの塩素化により合成される。この反応により約1万トンの五塩化リンが生産されている (2000年) [4]。 PCl 3 + Cl 2 ⇄ PCl 5 {\displaystyle {\ce {PCl3\ +Cl2\ \rightleftarrows \ PCl5}}} ( Δ H = − 124 kJ/mol ) {\displaystyle (\Delta H=-124{\mbox{ kJ/mol}})} 180 ℃ では、五塩化リンは三塩化リン + 塩素との間の平衡状態にあり、約40%が解離している[4]。この平衡のために五塩化リンには塩素が含まれていることが多く、その多くが緑がかった色をしている。
合成