酸化チタン(IV)
IUPAC名
titanium(IV) oxide
別称二酸化チタン
チタニア
金紅石
アナタース
板チタン石
識別情報
CAS登録番号13463-67-7
1870 °C
沸点
2972 °C
熱化学
標準生成熱 ΔfHo-944.7 kJ mol-1(rutile)[1]
標準モルエントロピー So50.33 J mol-1K-1(rutile)
標準定圧モル比熱, Cpo55.02 J mol-1K-1(rutile)
危険性
EU分類分類無し
NFPA 704010
発火点不燃性
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
酸化チタン(IV)(さんかチタン よん、英: titanium(IV) oxide)は組成式 TiO2、式量79.9の無機化合物。チタンの酸化物で、二酸化チタン(英: titanium dioxide)や、単に酸化チタン(英: titanium oxide)、およびチタニア(英: titania)とも呼ばれる。
天然には金紅石(正方晶系)、鋭錐石(正方晶系)、板チタン石(斜方晶系)の主成分として産出する無色の固体で光電効果を持つ金属酸化物。屈折率はダイヤモンドよりも高い。 結晶構造にはアナターゼ型(正方晶)、ルチル型(正方晶、図参照)、ブルッカイト型(斜方晶)がある。アナターゼ型の酸化チタン(IV)を900 ℃以上に加熱すると、ルチル型に転移する。また、ブルッカイトを650 ℃以上に加熱すると、やはりルチル型に転移する。ルチル型は最安定構造であるため、一度ルチルに転移すると低温に戻してもルチル型を維持する。 アナターゼ型のバンドギャップは3.2 eVであり、387 nm(紫外線)より短波長の光を吸収すると価電子帯の電子が伝導帯に励起され、自由電子と正孔を生成する。これはいわゆる光触媒である。通常、自由電子と正孔は直ちに再結合し、熱に変わる。しかし、この正孔の酸化力は非常に強いため、これら自由電子と正孔が例えば水と反応すると活性酸素種が生成される。活性酸素種の生成は二酸化チタンへの超音波照射によっても引き起こすことができる[2]。 600℃以上では水素ガスにより部分的に還元され、青色のチタン(III)の混ざった酸化物を生成する。ただし酸素に触れると速やかに酸化チタン(IV)に戻る。酸化チタン(IV)に担持した貴金属触媒を高温で水素還元すると、SMSI 白色の塗料、絵具、釉薬、化合繊用途などの顔料として使われる。塗料の顔料には触媒としての活性の低く熱安定性等に優れるルチル型が用いられ、チタン白、チタニウムホワイト(英: titanium white)と呼ばれ、高い隠蔽力を持つ。絵具として他の色と混ぜて使った場合、日光に長期間さらされると光触媒の作用によって脱色したり、絵具が割れてしまったりする場合があるが、この問題を防ぐため無機材料によるコーティングも顔料に施される[6][7][8][9][10]。また、人体への影響が小さいと考えられているため、食品や医薬品、化粧品の着色料(食品添加物)として利用されている。 アナターゼ型とルチル型が用いられるが、アナターゼ型の方がバンドギャップが大きく一般的に光触媒としての活性が高い。 387 nmより短波長の光を受けると、水と反応して活性酸素種を生成する性質がある。活性酸素種は非常に強い酸化力をもち、化学薬品や細菌などに対して分解作用を示す。酸化チタン(IV)を含む壁や床のコーティングは、ブラックライト(紫外線ランプ)の照射により殺菌処理できる[11]。酸化チタンの分解剤としての特徴として以下があげられる[12]。 光を照射すると導電化する性質を利用し、オフセット印刷の感光体として用いられている。感光波長が紫外域のため、明室処理が可能である。酸化亜鉛を利用した従来のものよりも耐久性が高く、解像度も高い。 固体触媒の担体として用いられる場合がある。 400 nmよりも短波長の光を強く吸収する一方で、可視光吸収は無いため日焼け止め(サンスクリーン剤)にも使われる[18]。 色素増感太陽電池の開発において、増感色素を担持させて可視光線?赤外線を取り込む電極材料として注目されている。 工業的生産では原料にルチル鉱石またはイルメナイト鉱石(FeTiO3)が用いられている。主な製造法には塩素法英: chlorine method(気相法英: gas phase method)と硫酸法英: sulfuric acid method(液相法英: liquid‐phase method)の二種類があり、欧米では塩素法、日本では硫酸法が主流である。
構造
化学的性質に溶解するが、それ以外の酸、アルカリ、水および有機溶剤には溶解しない。
用途
顔料・着色料
光触媒
化学物質や微生物などの分解
照射する光強度を制御することで、分解活性を調節することができる。
光強度が一定のとき、反応速度、すなわち基質に対する作用の強さも一定となる。
光のON/OFF操作で、その効果を瞬時に変更できる。活性酸素種の寿命は非常に短く、OFF後には直ちに消失して反応系内に残留しない。
オフセット印刷
触媒担体
日焼け止め
色素増感太陽電池
製造イルメナイト鉱石(FeTiO3)
塩素法
原料(ルチル鉱石)をコークス・塩素と反応させ、一度ガス状の四塩化チタンにする。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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