二つの世界の男
The Man Between
監督キャロル・リード
脚本ハリー・カーニッツ
『二つの世界の男』(ふたつのせかいのおとこ、原題:The Man Between)は、1953年にキャロル・リードにより制作・監督されたイギリスのサスペンス映画である。第二次世界大戦直後の東西両陣営に分割占領され、紛争の絶えないベルリンが舞台となっている[2]。 本作はリードの作品の例にもれず、そのスタッフ・キャストはまことに国際的である。音楽はジョン・アディソン
作品の特徴
キャロル・リードと言えば、戦後間もなくのウィーンを舞台にした『第三の男』が最も有名だが、『第三の男』が国家間と言うよりは、個人に隠された秘密を核にして物語が組み立てられていたのに対して、本作では東側陣営と西側陣営という、冷戦下の国家体制の綱引きのなかで翻弄されて行く個人たちの姿へと興味が移されている。特に、前半は東西ベルリンに秘匿されている何やら不可解な感触、一般の人間には窺い知ることができない政治の闇の世界へとヒロインのスザンヌを通して、案内していくことに重きが置かれている[3]。1953年3月にスターリンが死去し、56年にフルシチョフがスターリン批判を行い、東西冷戦が雪解けに向かうこととなる。本作は、その直前の最大の緊張状態にあった当時のベルリンの、生々しい様子をまざまざと伝える作品でもあった[3]。
他のリードの作品同様に、本作においても、野外風景は現地で撮影されている。周到に撮影されたリアリスティックな背景映像はリードの真骨頂であり、彼はこの映画の特徴的な存在として扱われる東ドイツの現地警察を、複数のシーンで十数分に亘って撮影している[4]。カメラは雪に覆われたベルリンの廃墟を捉え、スターリンのポスターがあちこちに見受けられる。まだ、ベルリンの壁が建設される以前の状態である[5]。 スザンヌは占領されなかった戦勝国である英国の衝動的で若々しい理想主義的存在であり、イーヴォは散々に打ち負かされた敗戦国のドイツ人だが、幾度となく失敗を経験した懐疑主義的な成熟した大人である。女学生のように純真なスザンヌは国際人であり、かつての弁護士であり、些細な犯罪にさえ手を染めたイーヴォに惹きつけられるが、二人の会話はかみ合わない。二人の愛情の葛藤はこのドラマの胸の高鳴るものだが、リードはこれに過剰な感情を込めず、淡々と表現している[6]。 子供の扱いについては、ホルスト少年が崇拝するように尊敬しているイーヴォは少年に常に学校へ行くことを勧めている。子供の将来を考えているからだ。しかし、少年はイーヴォのスパイ役を務めている。イーヴォは少年の夢の大人だからだった。?中略?少年の尽力にもかかわらず、夢の大人は殺されて否定される。しかし、悪や罪の意識をイーヴォに感じないので、少年はいくらか救われている[7]。 ロバート・モスによれば「公開時の批評家たちには、成功作『第三の男』の再現を狙うリードの試みは、霊感に満ちた作品と言うよりは、メカニカルなものと映った」と言う[8]。
筋立て設定
評価