この項目では、日本の官職について説明しています。英国の官職については「事務次官 (イギリス)」を、国際連合の役職については「国際連合事務次長」をご覧ください。
事務次官(じむじかん、英: Vice-Minister[注 1]、Administrative Vice-Minister[注 2])は、日本の行政機関における官職のひとつで、各府省および復興庁に置かれる。
各府省において、大臣、副大臣、大臣政務官ら特別職の官職(政務三役)の下で職業公務員(官僚)の就く一般職の官職の最高位であり、事務方の長といわれる。 各省の事務次官は、長である大臣を助け、省務(外局にかかる事務を含む。)を整理し、各部局および機関の事務を監督する(国家行政組織法第18条第2項)ことを職務とする。内閣府の事務次官は、内閣府の長である内閣総理大臣ではなく、内閣官房長官、内閣府特命担当大臣を助け、府務を整理し、内閣府本府(外局を含まない。)の各部局および機関の事務を監督する(内閣府設置法第15条第2項)ことを職務とする。 任命は各大臣が行うが、内閣による事前承認が必要とされる[14]。また1997年以降、各府省の局長以上の幹部人事については、政府全体の立場から首相官邸による統率を行うため、閣議に先だって内閣官房長官と内閣官房副長官3名の4人によって構成される閣議人事検討会議による了承を経ることになっている。 事務次官は、各府省においてキャリアと呼ばれる高級官僚の中でも最高位のポストである。その影響力は大きく、各府省の実質的な最終決定権を有するともいわれる。府省内外にわたる人的資源、調整能力を必要とするポストである。 各府省の事務次官は、事務次官等会議に出席し、政府提出法案等の最終的な調整を行っていたが、2009年9月に発足した鳩山由紀夫内閣では、同会議は廃止された。 2012年12月に発足した第2次安倍内閣は、府省間の情報共有のため、事務担当の内閣官房副長官を主宰者とする「次官連絡会議」を設置した。 事務次官の設置は、内閣制度発足に伴い各省に置かれた次官に遡る。1949年(昭和24年)6月1日の改正国家行政組織法(昭和24年法律第124号)施行により、事務次官に改称[注 3]されて、現在に至る[注 4]。 以前は、事務次官と同格の大臣補佐役として政務次官が存在した。2001年の中央省庁再編に伴って政務次官は廃止され、新たに副大臣と大臣政務官が設置され、国会議員による行政への統制力強化が図られた。職制上、事務次官は政治任用ポストの下で事務を統括する官職に位置付けられた。 事務次官の地位は一般職の国家公務員である(デジタル監および防衛事務次官を除く[注 5])。一般職は、一般職の職員の給与に関する法律(一般職給与法)に基づいて俸給月額が決定される(検察官は除く)が、事務次官は同法による俸給月額のうち最高額の指定職8号俸を支給される[注 6]。 なお、一般職の職員のうち、事務次官以外で同法に基づく指定職8号俸を支給される官職には、会計検査院事務総長、人事院事務総長、宮内庁次長のほか、事務次官等会議の構成員でもあった内閣法制次長、警察庁長官、金融庁長官、消費者庁長官がある。 事務次官の年収は約2,300万円である。 一方で、これらと異なって事務次官等会議の主宰者であった内閣官房副長官は、事務次官よりも数段高い副大臣相当の待遇であり、認証官でもある特別職国家公務員である。 また、特別職および検察官で事務次官と俸給等の待遇が同等の官職には、内閣官房副長官補、内閣広報官、内閣情報官、常勤の内閣総理大臣補佐官と大臣補佐官[注 7]、国家公務員倫理審査会の常勤の委員、公正取引委員会委員、国家公安委員会委員、式部官長、大使・公使の一部、統合幕僚長、検事の一部(検事1号俸)がある。国会においては、各議院事務局の事務次長、衆議院調査局長、各議院法制局の法制次長、国立国会図書館副館長が、裁判所においては、判事の一部、最高裁判所事務総長がこれらに相当する。 事務次官に加えて、各府省には「所掌事務の一部を統括整理する職」(総括整理職)として次官級審議官(いわゆる省名審議官[注 8])が置かれているが、これらの職については外局の長官・警察庁次長などと同等である指定職6号俸が適用される[注 9]。 事務次官等は、キャリア官僚の出世レースのゴールであり、一般に同期採用または後年採用の事務次官が、誕生するまでに、同年次のキャリア組は退官し、省内に唯一残った最古参のキャリア官僚が事務次官となる。もっとも、まれではあるが同期採用者から複数の事務次官を輩出したり、前任者より採用年次の古い者が事務次官に就任したりすることもないわけではない。また、法務省および外務省においては、異なる人事体系がとられている(後述)。 おおむね、法律職、行政職または経済職の国家公務員採用I種試験(旧上級甲種試験)に合格して各府省庁に採用されたキャリアの事務官が事務次官に就任するが、文部科学省、国土交通省では科学技術庁、建設省に採用された技官が事務次官に就任することもある。任期は存在しないが、慣例的に1年から2年とされており、それまでに勇退(依願退職)して後進に譲る慣行である。 任期の慣例を大きく越えることは稀であるが、長期化した事例もないわけではない(鈴木俊一地方自治庁次長、自治事務次官は在任約8年に、守屋武昌防衛事務次官は在任4年1か月にそれぞれ及んだ)。事務次官の定年は1981年の国家公務員法改正で導入され、事務次官の定年は62歳[15]に延長されるが、更に法律に規定される定年延長制度[16]を利用して長期在任する者もいる。 法務省においては検察庁が本省を飲み込むような人事体系が取られている。その理由は、検察庁が最高裁判所を頂点とする司法権に対応する特殊な行政組織であるため、その人事体系も必然的に裁判所を見据えたものでなければならないという観点と、内閣の所轄の下にある通常の一般行政部門である法務省の本省機能とをひとつにまとめたことに起因すると考えられる(検察官の俸給体系が、法務省職員を含む一般職国家公務員のそれではなく裁判官の俸給体系に準拠した別個のものとなっているのは、その顕著な例であるといえる)。 最高裁判所判事および高等裁判所長官はいずれも認証官とされており、最高検察庁の最高幹部である検事総長および次長検事ならびに高等検察庁の長である検事長についても、裁判所の最高幹部の地位に準拠させ、認証官とされている(検察庁法第15条第1項。なお最高裁判所長官は内閣総理大臣と同様に天皇によって任命されるが、これは最高裁判所長官が三権の長であることに由来するためである(日本国憲法第7条第2項、裁判所法第39条第1項))。 それに対し、事務次官は各省における事務方のトップではあるものの認証官ではない。他省の人事体系との均衡の必要性から、法務事務次官だけを認証の有無や俸給の額などの扱いにおいて別個に扱うことは難しい。 この異質な両者をひとつにまとめた結果、(検察庁等を含む広義の)法務省内において、法務事務次官を検事総長、次長検事、検事長の実質的下位に位置させる必要が生じるのである。それは同時に法務事務次官もこの人事ピラミッドにおける「通過点」とならざるを得ないということであり、その結果、慣例的に検察官の経歴を有する者が就任するポストとなっている。ただし、法務事務次官は検察官とは別の官であり、法務事務次官在任中は、検察官ではない。
概説
歴史
地位
事務次官の経歴
概説
法務省における事務次官
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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