日本の弁護士制度の「外国法事務弁護士」とは異なります。
事務弁護士(じむべんごし)またはソリシター(英: Solicitor)とは、イギリスをはじめとする一部の英国法系コモン・ロー諸国で、法廷での弁論以外の法律事務を取り扱う法律専門職である。
イギリス、アイルランド等では、法律専門職は法廷弁護士と事務弁護士とに分かれており、いずれか一つの資格しか持たないのが通常である。しかし、カナダ、ニュージーランド、一部のオーストラリアの州では一元化 (fused) されており、例えば「法廷弁護士兼事務弁護士」の肩書きで両方の法律事務を同時に取り扱うことが認められている。 1873年に最高法院が統合される前は、事務弁護士にはソリシター(solicitor)、アトーニー(attorney)およびプロクター(proctor)の3種があり、それぞれ、衡平法裁判所 (courts of chancery) 、コモン・ロー裁判所および教会法裁判所に関してそれぞれ業務を行っていた。現在では事務弁護士はソリシターのみである。 かつての法制度では、事務弁護士は基本的に法廷における弁論 (advocacy) 以外のすべての法律事務を取り扱っていた。ただし治安判事裁判所
イングランドおよびウェールズ
事務弁護士はロー・ソサエティー (Law Society of England and Wales) に所属する。事務弁護士規制委員会 (Solicitors Regulation Authority
) と苦情処理委員会 (Legal Complaints Service) は、ロー・ソサエティーから独立した組織であり、ともに事務弁護士の業務規制に当たる。事務弁護士になるための研修と資格授与は、事務弁護士規制委員会が管轄する。事務弁護士になろうとする者は、まず法学の学位を取得するか[1]、他の学位からの転換コースを修了しなければならない[2]。そして、ロー・ソサエティーに研修生として登録し、1年の法律実務コース (Legal Practice Course) と通常2年の実習(「実習生契約 (training contract)」と呼ばれる)を受けなくてはならない[3]。
事務弁護士と法廷弁護士の職務の厳格な区別は部分的に崩れてきており、事務弁護士が下位裁判所だけでなく上位の裁判所(高等法院、控訴院など)に出頭することが増えてきている(ただし試験に合格することが必要である)。独立開業の事務弁護士もまだたくさんいるが、法律事務所では法廷弁護士やソリシター・アドヴォケイト(上級事務弁護士)を雇い、法廷での代理業務を行っている。
一方、法廷弁護士も、現在では労働組合、会計士などの組織から直接事件を受任することができる。さらに、弁護士団理事会 (Bar Council) の「パブリック・アクセス[4]」課程を修了した法廷弁護士は、一般市民からの事件の依頼も直接受けることができる。ただし、その場合は訴訟追行(conduct) や婚姻に関する問題は取り扱えないなどの制限がある。 スコットランドの法制度は、イングランドおよびウェールズ、北アイルランドの法制度とは独立している。法律職は事務弁護士(ソリシター)と法廷弁護士(アドヴォケイト)に分かれており、その区別はイングランドおよびウェールズにおける事務弁護士と法廷弁護士の違いに似ている。事務弁護士は昔から下位の裁判所(州裁判所
スコットランド
事務弁護士はスコットランド・ロー・ソサエティー (Law Society of Scotland) の監督を受ける。事務弁護士になるためには、ロー・ソサエティーの指定するカリキュラムで試験に合格することが求められる。通常は、ロー・ソサエティーが認めた大学でのスコットランド法の法学士 (LL.B.) 取得がこれに当たるが、ロー・ソサエティー独自の試験を受けることもできる。その後、法律実務課程(いくつかのスコットランドの大学で提供されている1年の課程)で学位を取得し、法律事務所で2年間の実習を受けなければならない。アドヴォケイト同業者組合 (Faculty of Advocates) が、アドヴォケイトになろうとする者に文学修士号 (M.A.) の取得を求めていたことから、昔はスコットランドの大学で法学士と文学修士を併せた5年の課程をとるのが一般的であった。
ロー・ソサエティーの設立前は、事務弁護士は多くの地域で弁護士同業者団体 (Faculty of Procurators (and Solicitors)) に属していた。