予防接種
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経口ポリオ生ワクチンを投与される子供

予防接種(よぼうせっしゅ、: vaccination)とは、病気に対する免疫をつけるために抗原物質(ワクチン)を投与(接種)すること。接種により病原体の感染による発病障害死亡を防いだり和らげたりすることができる[1]。さらに伝染病の抑止に最も簡便かつ効果的で、コストパフォーマンスの高い予防医学である。

日本における予防接種法では、「疾病に対して免疫の効果を得させるため、疾病の予防に有効であることが確認されているワクチンを、人体に注射し、又は接種すること」と定義されている(予防接種法2条1項)。

接種で投与される物質は、生きているが毒性を弱めた状態の病原体(細菌ウイルス)の場合もあれば、死んだり不活性化された状態の病原体の場合も、タンパク質などの精製物質の場合もある。

WHOによれば現在の世界では、予防接種により200-300万人の死を回避しているとしているという[1]。しかしさらに接種率が向上すれば、加えて150万人の死を回避できるという[1]
歴史最初の予防接種に関する、ジェンナーの手書き草稿

人間が、故意に別種の感染を受けることで病気を軽減しようとした最初の例は、天然痘である。紀元前1000年頃には、インド人痘接種法(人痘法)が実践され[2]、天然痘患者のを健康人に接種し、軽度の発症を起こさせて免疫を得る方法が行なわれていた。この人痘法は18世紀前半にイギリス、次いでアメリカにももたらされた。

1718年、メアリー・ワートリー・モンターギュは、症状の軽い天然痘から採取した液体を接種させるトルコ人の習慣について書き、また自らの子供に同様の接種を施している[3]イギリスの医師エドワード・ジェンナーは、牛痘ワクチンを人間の天然痘に対する免疫生成に利用できるかに関して、1796年までの数年間に少なくとも6人に試験を行っている。この6人は、身元不明のイングランド人(1771年ごろ)、ミセス・ゼベル(ドイツ人、1772年ごろ)、ミスター・ジェンセン(ドイツ人、1770年ごろ)、ベンジャミン・ジェスティ(イングランド人、1774年)、ミセス・レンダール(イングランド人、1782年ごろ)、ピーター・プレット(ドイツ人、1791年)である[4][5]

予防接種(vaccination)の語が最初に使われたのは1796年エドワード・ジェンナーによってである。この後ルイ・パスツールが微生物学の先進的研究によって予防接種の概念をさらに進歩させた。予防接種(Vaccination 「牛」を意味するラテン語vaccaより)の命名の由来は、最初のワクチン(vaccine)が牛に感染する牛痘ウイルスで、天然痘よりも症状が軽く、治りにくく致死性の天然痘に対してある程度の免疫をつけるものであったからである[4][5]

種痘の試みに対しては、倫理・政治・安全性・宗教などをめぐっての論争(en:Vaccine controversy)はその初期からあった。初期の成功と義務化によって、予防接種は広範囲にわたって受け入れられ、また大規模な予防接種キャンペーンが実施されたことで、多くの地域にわたって多数の病気の発病が激減したと評価されている。
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日本では1948年の「予防接種法」以降、強制接種や集団接種が拡大していったが、安全な方法で行われていなかった。一例を挙げれば、1964年茨城県で行われた集団接種では、不十分な問診、複数の人に対して注射針を変えずに接種、マスクをせずに接種、不正確な量の注入、などのやり方が行われていた[6]。複数の人に対して針を替えずに接種をする行為が蔓延していたことが、日本でB型C型肝炎が多発した原因である[7]、と考えられている( 医原病も参照)。
使用される物質「ワクチン」も参照
不活性化ワクチン

毒性を十分に弱めた、生きたウイルスを接種する。ウイルスは繁殖するが、その速度は遅い。接種後も繁殖し、抗原として存在し続けるため、追加免疫はあまり必要ない。このワクチンは、組織培養によって毒性の少ない種類のウイルスを残したり、遺伝子の突然変異を誘発したり、毒性を発揮する特定遺伝子を除去することで作られる。この主のワクチンには毒性が再発するリスクがあるが、特定遺伝子の除去は比較的このリスクが少ない。
サブユニットワクチン

免疫系に示す抗原としてウイルス性物質を接種しない。ウイルス中の特定のタンパク質を分離して接種する、などの方法がある。この方式の弱点は、分離したタンパク質が変質する可能性があり、その場合ウイルスに対応するものとは別の抗体が作られてしまうと言うことである。

他のサブユニットワクチンには、組み替え型ワクチンがある。これは対象となるウイルスのタンパク質遺伝子を別のウイルスに注入する方法である。この第二のウイルスはタンパク質情報を発現するが、病気のリスクはない。この種のワクチンは現在ウイルス性肝炎に用いられており、エボラウイルスHIVなど、予防接種が難しいウイルスに対するワクチンを作るため、さかんに研究されている[8]
ヒトに対する予防接種

世界における接種状況は以下の通り。

ジフテリア破傷風百日咳の三種混合 - 全世界で86%[1]

麻疹 - 全世界で85%[1]

ポリオ - 全世界で86%[1]

ロタウイルス - 全世界で23%[1]

風疹 - 全世界で46%[1]

ワクチンの種類「ワクチン」も参照
生ワクチン
生きた病原体の毒性を弱めたもの。ロタウイルス感染症、結核麻しん(はしか)、風しんおたふくかぜ水痘(みずぼうそう)、黄熱病 など。生の病原体を入れるため、接種した病原体により軽い症状(副反応)が出ることがある。接種後は4週(中27日)以上の間隔をあけて別のワクチンを接種する。
不活化ワクチン
死んで毒性を失った病原体の成分のみのもの。B型肝炎、ヒブ感染症、小児の肺炎球菌感染症、百日せきポリオ日本脳炎インフルエンザA型肝炎狂犬病など。


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