予算委員会
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衆議院予算委員会の審議(2017年2月24日国会議事堂にて)

予算委員会(よさんいいんかい)は、日本衆議院参議院における常任委員会の一つ。
概要参議院予算委員会の審議(2007年10月15日国会議事堂にて)

予算委員会の所管事項は端的に「予算」とだけ定められている(衆議院規則92条・参議院規則74条)。内閣が提出する予算案の審議を行うことが基本的な役割であるが、予算とは一年間の国政方針を財政面から裏付けるものであり、また予算案の作成と予算の執行は内閣の責任の下で行われる(日本国憲法第73条)。そのため質疑の範囲は直接予算に関連するものに限らず、広く国政全般にわたる例である[1]。実際、予算委員会の審議を通じて、予算の執行主体である内閣の政策方針や行政各部の対応さらには閣僚の資質などの問題点が浮き彫りになることもある。その反面、分科会や委嘱審査(後述)といった手続を別にすれば、一連の予算審議において各省庁・政府機関の政策・予算を個別に精査する議論はほとんど行われていないのが実情である。このため、より予算内容についての審議を充実させるべきではないかという議論も根強い[2][3]野田改造内閣での閣僚の席順:総理大臣(野田佳彦)、副総理(岡田克也)、財務大臣(安住淳)…

予算委員会の委員長には閣僚経験者が当てられるのが一般的である[4]

予算委員会は本会議党首討論と並んで国会審議の「花形」として広く認識されている[2]。衆参ともに委員の一列目には理事が座る[5]

一方、閣僚席は財務大臣内閣総理大臣の隣に座ることを固定されているが、鳩山由紀夫内閣野田改造内閣では副総理の役職が存在しており、副総理が財務大臣でなかったため財務大臣は副総理の隣の席に座ることとなる(内閣総理大臣→副総理→財務大臣となる)。また、中央省庁再編以降は官房長官が総理大臣の真後ろに就くことが多くなっている。

国会審議の充実に関する申し合わせ(平成26年5月27日)では、内閣総理大臣は、予算委員会に関しては1.基本的質疑と締めくくり質疑、2.理事会の決定に基く、審査を通して必要と認められる特定の事案に関する集中審議に出席することとされている[6]

国会日程と大臣の外交日程の調整が問題になることもあり、2023年(令和5年)3月には林芳正外務大臣が予算委員会の基本的質疑への出席のためにインドでの20カ国・地域(G20)外相会合を欠席することになり議論となった[7]。「平成のうちに衆議院改革実現会議」では、外交上重要な海外出張等が生じる場合には副大臣・政務官の活用を促進することも提言されている(外務大臣が日米会議に出席するため全閣僚出席の予算委員会への欠席を認めた前例もある)[6]

なお、特に予算の議決を経る必要がない場合でも「予算の執行状況に関する調査」といった名目で開催されることもある。
予算審議の流れ

衆議院には予算先議権が認められているため(日本国憲法第60条第1項)、予算案は、まず、通常国会の召集日に内閣から衆議院に提出され、予算委員会に付託される。本予算審議の流れは、基本的に以下のようになる。予算プロセス全体については「予算 (日本)#予算プロセス」を参照
質疑等
基本的質疑

内閣総理大臣その他の全閣僚が出席する質疑で[4]1999年(平成11年)以前は総括質疑(そうかつしつぎ)と呼ばれた。

基本的質疑・総括質疑など、予算案を審議するために全ての閣僚が出席する場合は、その同時間帯には他の全ての委員会は開会されない。各会派の質問が一巡するまでの間、NHKでは総合テレビ(NHK G)及びR1にて、災害報道を除く全ての通常番組の放送を一切中止して国会中継が優先して放送される[8]。詳細は「国会中継#概要」および「報道特別番組#NHK」を参照
一般的質疑

一般的質疑は財務大臣と関係閣僚が出席する質疑である[4]
集中審議

特定の政治テーマに関する審議を集中審議として行うことがある[4]。NHKでは、集中審議についても内閣総理大臣が出席するなど必要があれば中継を行い、全国放送する。
公聴会

公聴会も開催され、学者や利害関係人から意見の聴取が行われる[1]。各委員会は、一般的関心及び目的を有する重要な案件について、公聴会を開くことができるとされている(国会法51条1項)。しかし、総予算及び重要な歳入法案については公聴会の開催が義務付けられている(ただし、すでに公聴会を開いた案件と同一の内容のものについては不要)(国会法51条2項)。この予算案採決の前提となる公聴会を中央公聴会という[9]。また、予算委員会のメンバーが地方に赴き、地元の首長や経済団体役員らとの質疑を実施する地方公聴会も通常2回実施される[10][11]
分科会

予算審議も終盤になると、各省庁ごとに予算審議を行うため分科会が開催される。分科会が設置できるのは、衆議院では予算委員会及び決算行政監視委員会、参議院では予算委員会及び決算委員会のみである(衆議院規則97条、参議院規則75条)。ただし、参議院では委嘱審査の制度が設けられた1982年(昭和57年)以降は、分科会が設けられることはなくなった(次項参照)。

通例、所管省庁ごとに最大8つの分科会が設けられる。分科会と所管省庁は以下のとおり。

第一分科会:皇室費国会裁判所会計検査院内閣内閣府復興庁デジタル庁及び防衛省並びに他の分科会の所管以外の事項[12]

第二分科会:総務省[13]

第三分科会:法務省外務省及び財務省[14]

第四分科会:文部科学省[15]

第五分科会:厚生労働省[16]

第六分科会:農林水産省及び環境省[17]

第七分科会:経済産業省[18]

第八分科会:国土交通省[19]

委嘱審査

参議院規則では、予算委員会は、他の委員会に対し、審査中の総予算について、当該委員会の所管に係る部分の審査を期限を付して委嘱することができるとしている(参議院規則74条の4)。
締めくくり質疑

最後に全閣僚出席のもとで締めくくり質疑が行われる。こちらも、1999年以前は締めくくり総括質疑と呼ばれた。「質疑#締めくくり質疑」も参照
討論と採決

締めくくり質疑を経て、各党各会派の代表者が予算の賛否について意見を述べる討論を経て採決に付される。

その後、予算委員長は本会議において予算委員会における審議の経過と結果を報告し、本会議で採決が行われる[1]。衆議院を通過した予算案は参議院に送られ同様の審議を受ける[1]
明治憲法下

1947年(昭和22年)以前の明治憲法下でも国家予算は内閣が帝国議会に提出して協賛を得る(皇室費を除く)とされていたが、帝国議会時代の衆議院・貴族院に設けられた予算委員会では、議院法第40条の定めにより委員会付託後15日以内にすべての審査を完了し、本会議に送って委員長報告、討論採決を行わなければならず、かつ総予算を否決することは許されなかった。


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