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「乳」のその他の用法については「乳 (曖昧さ回避)」をご覧ください。
人間の母乳をサンプルとした、初乳(右)と後期乳(左)の比較。パスチャライゼーションで処理された牛乳

乳汁(にゅうじゅう、ちしる、ちちしる)とは、乳(ちち、にゅう)、ミルク(: milk)とも言われる、動物のうち哺乳類乳幼児に栄養を与えて育てるために母体が作りだす分泌液である。特に母乳(ぼにゅう)と呼ぶ場合は、ヒト女性が出す乳汁を指すのが慣例である。誕生後の哺乳類が他の食物を摂取できるようになるまでの間、子供の成長に見合った栄養を獲得できる最初の源となる[1]
概要母親からの乳を飲む人間の乳児。ヤギが母乳を飲む様子。ホルスタイン。今日、工業化された酪農業において広く飼育される種。

一般の食物は、本来は生体組織種子などである。それに対しミルクは食糧として作られる唯一の天然物である[2]

ミルクは、分泌作用を持つ外分泌腺の一種である乳腺から引き出されている[3]。この事から、授乳機構とは、原始的には湿度を維持する役目が発達したものと考えられる。この仮説は、カモノハシ目(卵生哺乳類)の生態を根拠に立てられた[3][4][5]。授乳の根本目的は、栄養摂取[6]もしくは免疫による防御[7][8]であったという考えが受け入れられている。そしてこの分泌物は、進化を遂げる時間の中で、その量を増やし、複雑な栄養素を含むようになった[3]

最初に授乳されるミルク(初乳)には、母体から赤ん坊へ与えられる抗体が含まれ、以後のさまざまな病気にかかる危険性を低める効果がある[9]。また、ウサギの母乳から、子供を乳首に吸いつけさせるフェロモン (2-methylbut-2-enal, 2MB2) が発見された報告もある[10]生乳が含んでいる栄養成分は動物のによって差異があるが、主に飽和脂肪酸タンパク質カルシウムそしてビタミンCを含む。牛乳は水素イオン指数 (pH) 6.4 - 6.8 を示す弱酸性である[11][12]

ウシが提供するミルクは、多くの栄養素を含む重要な食品である[1]。2011年、世界中では、1億3189万頭の乳牛が飼育され、4億4467万トンの牛乳が生産された[13]。国別ではインドが生産および消費のいずれも1位であり、ミルクの輸出入は行われていない。ニュージーランドEU加盟15ヶ国、オーストラリアがミルクや乳製品の3大輸出国である。一方で輸入は中華人民共和国メキシコ日本が上位3位までに入る。ミルクは特に発展途上国において、栄養供給と食糧の安全保障の確立に貢献する重要な食品である。家畜の改良、酪農技術、およびミルクの品質は、貧困問題や世界的な食糧問題の解決に、大きく役立つものとも考えられている[14]
母乳以外のミルク

単語「乳」または「ミルク」は、色や食感が似ている動物由来ではない飲料を表す際にも使われる。豆乳 (soy milk) 、 (rice milk) 、アーモンドミルクココナッツミルクなどがこれに該当する。また、植物に切れ目等の傷を入れた際に滲み出る樹液等,白色(または,橙黄色等も含む)液汁も「乳」(: latex)と言う[15]

また、哺乳類以外でもこどもに与える栄養物を分泌する例はある。ハト目の親が若鳥に与えるため分泌する液体も素嚢乳 (crop milk) と呼ばれ、哺乳類のミルクとの共通性も見られる[16]熱帯魚として知られるディスカスは雌雄で子育てするが、その際に体表から分泌物を出し、これを子供が食べる。これは「ディスカスのミルク」といわれる。クモ類のヒメグモ科の幾つかのものは幼生に口から分泌物を出して与え、「スパイダーミルク」と呼ばれる。
需要

ミルクを消費する方法には、大きく2種類がある。ひとつは幼い哺乳類が授乳される自然な状態であり、もうひとつは人類が他の動物から得たミルクを加工して食品とする場合である。
授乳

ほとんど全ての哺乳類では、ミルクは赤ん坊母乳栄養を与えるために直接または一時的に貯めた状態のものを飲ませる[1]。その中で人間は、幼年期を過ぎてもミルクを消費する数少ない例外に当る。ミルクを常飲するグループの中には、ウシだけでなく家畜化した有蹄類の乳を利用する地域もある[17]。インドは牛乳だけでなく水牛の乳の生産や消費も世界一である[18]

乳糖は、ミルクの他にレンギョウの花やわずかな熱帯性低木の中だけに含まれるもので、これを消化するために必要な酵素であるラクターゼの数は出生後に小腸の中で最も高くなるが、ミルクを恒常的に飲まなくなるにつれ徐々に減退する[19]。人がヤギの生乳を乳児に与える事があるが、ここには危険が潜んでいる事が知られている。水電解質平衡異常、代謝性アシドーシス巨赤芽球性貧血や数々のアレルギー反応などである[20]
乳製品

牛乳を元に様々な乳製品が作られている。脂肪を集めて得られたクリームからは生クリームバター、逆に脂肪を取り除いた脱脂乳からは脱脂粉乳スキムミルクなどが出来る。牛乳を濃縮したコンデンスミルク発酵させたヨーグルト凝固・発酵させたナチュラルチーズ.それに加熱などのプロセスを経て作られるプロセスチーズなどである[21]
消費量

牛乳および牛乳製品の一人当たり消費量、上位10ヶ国
(2006年)
[22]国ミルク(L)チーズ(kg)バター(kg)
 フィンランド183.919.15.3
 スウェーデン145.518.51.0
アイルランド129.810.52.9
オランダ122.920.43.3
 ノルウェー116.716.04.3
スペイン119.19.61.0
スイス112.522.25.6
イギリス111.212.23.7


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