乳癌
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乳癌

乳癌のX線画像(左上隅の矢印)
概要
診療科腫瘍学
分類および外部参照情報
ICD-10C50
ICD-9-CM174- ⇒175, ⇒V10.3
OMIM114480
DiseasesDB1598
MedlinePlus000913
eMedicinemed/2808 med/3287 radio/115 plastic/521
Patient UK乳癌
MeSHD001943
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乳癌(にゅうがん、: Breast cancer、:Brustkrebs、:Carcinoma mamae、略称:BC)とは、乳腺内の乳管および乳腺小葉の上皮由来の悪性腫瘍である。診療科目では「婦人科」や「乳腺外来」の範疇に入る。

40歳代後半から60歳代後半に多い[1]。患者の大半は女性である。トランス女性も併せてホルモン治療性別適合手術をしている場合など、女性と同様に乳癌の発症率が一般男性に比べて50倍にのぼる[2]。一般男性の場合は、女性の約1/100の頻度で発生する。

乳房の腫瘤(しこり)として発見されることが最も多い。
症状
女性

乳房のしこり、隆起(新たにできたもの)。痛みはないことが多いが、時に圧痛を伴うことがある。

乳房の陥凹(新たにできた「えくぼ」)。

乳汁分泌、血性乳汁。膿汁滲出

脇の下のリンパ節を触れる。

などの症状がみられる。
男性

男性の胸のしこりに関しては、「乳癌は男性には発生しない」と
誤解する人が多いことから、女性に比べて発見・受診・治療開始が遅れる傾向がある。

男性では女性に比べ乳腺が表皮胸壁に近接しているために、乳腺外への浸潤をきたしやすい。

男性の場合、乳癌の罹患時に同時に胸が異常発達(女性化乳房)の併発症状が見られることもある。

日本乳癌学会で2015年に新たに発症が登録された全(男女併せ)乳癌患者約8万7000人のうち、男性患者は560人であった[3]。英国で乳癌に罹患した男性の患者の発生は、250人/年と報告されている。

女性乳癌と比べて症状や治療に関する情報が少ない、患者本人が乳癌を想定しないことが多い、女性の様にキャンペーン(ピンクリボンキャンペーン=乳癌啓蒙・乳癌検診の受診推進)を張っての乳癌検診や相談などの機会がほとんどないなどの理由から、NPO法人キャンサーネットジャパンが2018年から男性患者の交流会を開いている[3]
危険因子

乳癌の罹患率は様々な要因の影響を受ける。乳癌を発症しやすい遺伝的要因は複数知られている。また人種によっては乳癌リスクの高いグループが存在し、アジア系に比べてヨーロッパ系とアフリカ系は乳癌リスクが高い。

その他の危険因子としては以下のようなものが考えられている。

妊娠出産歴がない。出産回数が少ない[4]

第一子出産の後、母乳を与えない。なお、関連がないとする報告もあり[4]

初経年齢(月経が始まった年齢)が低い[4]

閉経年齢が高い[4]

ホルモン療法(エストロゲン製剤、ピルなど)を受けている。なお、関連がないとする報告もあり[4]

飲酒[5]

喫煙[6](喫煙については、日本人を対象とした研究では、喫煙女性の乳癌リスクは、非喫煙者に比べて1.9倍となる[6]。)
乳ガンと喫煙の因果関係」も参照

高脂肪の食事

20歳時の体重が低いほど乳癌になりやすい。閉経後の女性では、成人後の体重の増加が多いほど乳癌になりやすい[7]

シフト勤務による不規則な生活(IARC(国際癌研究機関)は、「サーカディアン・リズムを崩すシフト勤務」をグループ2A(ヒトに対する発癌性がおそらくあるもの)と2010年に報告している。主に前立腺癌、乳癌のリスクを高める可能性があるとしている[8]。)

ホジキンリンパ腫治療のためのマントル照射の既往

女性化乳房(男性の場合)

EBウイルス感染(インド[9]・中国[10][11]・北アフリカ[12][13]・南ヨーロッパ[14][15][16] にて、EBウイルスと乳癌との関連が指摘されていた。乳癌検体からのEBウイルス検出率としては約30%ほどである。2016年にはハーバード大学などの研究グループが、EBウイルスが乳腺上皮細胞に感染し、悪性形質転換させることを示している[17]。)
炎症性乳癌の病理組織像(D2-40染色)。

年齢と共に乳癌の発生する確率は高まるが、若年齢で発生した乳癌は活動的である傾向が存在する。乳癌の一種の炎症性乳癌 (Inflammatory Breast Cancer) は特に活動的で、若い女性に多く、初診時のステージがIIIbまたはIVであることが多い。この癌はしばしばしこりを認めず、マンモグラフィー超音波検査で発見することができない。乳腺炎 (Mastitis) のような乳房の炎症が症状として現れる。炎症性乳癌の病理組織像(HE染色)。腫瘍細胞はいずれもリンパ管侵襲として認められる。
遺伝的要因

全乳癌の約5?10%が遺伝性と考えられている[18]

BRCA1BRCA2の2つの遺伝子は家族性乳癌と関連しており、遺伝性乳癌の9割に及ぶとされる。これらの遺伝子が発現している女性は、そうでない女性に比べて乳癌に罹患するリスクが極めて高い。これを「遺伝性乳癌卵巣癌症候群 (Hereditary Breast and Ovarian Cancer syndrome, HBOC)」と呼ぶ。比較的若年で乳癌を発症し、しかもトリプルネガティブ乳癌であることが多い。このため日本では、HBOCが疑われる乳癌患者に対する遺伝子検査と、HBOCと診断され乳癌または卵巣癌を発症した患者に対する予防的手術は、2020年より一部が保険適応となっている[19]

他に乳癌と関連する疾患として、Li-Fraumeni症候群(p53遺伝子)、Cowden症候群(PTEN遺伝子)、Peutz?Jeghers症候群(STK11遺伝子)が知られており、その他にもCHEK2ATMBRIP1、PALB2遺伝子などの関連が知られている[18]
分類

乳癌は、非浸潤乳管癌 (ductal carcinoma in situ) 、非浸潤性小葉癌 (lobular carcinoma in situ) 、浸潤乳管癌 (invasive ductal carcinoma) に代表される浸潤癌、そしてパジェット病(英語版)の4つに大別される。日本の乳癌取扱い規約では、浸潤乳管癌をさらに、乳頭腺管癌、充実腺管癌、硬癌の3つに細分類する。
検診マンモグラフィー

30歳代から高齢の女性ほど罹患率が高いため、今日では多くの国で検診を受けることが推奨されている。検診には胸部自己診断法 (breast self-examination) とマンモグラフィー (mammography) が含まれる。いくつかの国では、壮老年女性の全員の毎年のマンモグラフィー検診が実施され、早期乳癌の発見に効果を挙げている。ただし、検診にもデメリットは存在する。乳癌患者発見の背後には、その10倍以上の乳癌でない被験者が精密検査へと回り、生検(乳房に針を刺して細胞を採取する)を受けていることも事実である。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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