乞食
[Wikipedia|▼Menu]
.mw-parser-output .hatnote{margin:0.5em 0;padding:3px 2em;background-color:transparent;border-bottom:1px solid #a2a9b1;font-size:90%}

この項目では、仏教用語・職業について説明しています。1961年のイタリア映画については「アッカトーネ」をご覧ください。

乞食(こつじき、こじき)は、
本来は仏教用語で「こつじき」と読む。比丘僧侶)が自己の色身(物質的な身体)を維持するために人に乞うこと。行乞(ぎょうこつ)。また托鉢。十二頭陀行(じゅうにずだぎょう)の一つで、これを清浄の正命と定める。もし自ら種々の生業(なりわい)を作(な)して自活することは邪命であると定める。

上の意味が転じて、路上などで物乞いをする行為。具体的には他人の憐憫の情を利用して自己のために金銭や物品の施与を受けることをいう[1]

由来

古代インドバラモン階級では、人の一生を学生期・家長期・林住期・遊行(遍歴)期という、四住期に分けて人生を送った。このうち最後の遊行期は、各所を遍歴して食物を乞い、ひたすら解脱を求める生活を送る期間である。またこの時代には、バラモン階級以外の自由な思想家・修行者たちもこの作法に則り、少欲知足を旨として修行していた。釈迦もまたこれに随い、本来の仏教では修行形態の大きな柱であった。

特に釈迦の筆頭弟子であったサーリプッタ(舎利弗)は、五比丘の一人であるアッサジ(阿説示)が乞食で各家を周っている姿を見て、その所作が端正で理に適っていることに感じ入り、これを契機に改宗して弟子入りしたことは有名な故事である。このように仏教では乞食・行乞することを頭陀行(ずだぎょう)といい、簡素で清貧な修行によって煩悩の損減を図るのが特徴である。

また、僧侶は比丘(びく)というが、これはサンスクリット語の音写訳で、「食を乞う者」という意味である。これが後々に中国で仏典を訳した際に乞食(こつじき)、また乞者(こっしゃ)などと翻訳されたことにはじまる。.mw-parser-output .templatequote{overflow:hidden;margin:1em 0;padding:0 40px}.mw-parser-output .templatequote .templatequotecite{line-height:1.5em;text-align:left;padding-left:1.6em;margin-top:0}

Na tena bhikkh? hoti y?vat? bhikkhate pare;Vissa? dhamma? sam?d?ya bhikkhu hoti na t?vat?.
Yo'dha punnca p?panca b?hetv? brahmacariyav?;Sa?kh?ya loke carati sa ce bhikkh?'ti vuccati.

他に乞ふのみにては比丘ならず、一切の所應行を服膺するのみにては比丘ならず。
人若し現世に於て罪福を離れて淨行に住し、愼重にして世を行けば眞の比丘と謂はる。—パーリ仏典, ダンマパダ,266-267, Sri Lanka Tripitaka Project

『大乗義章』15に「専行乞食。所為有二。一者為自。省事修道。二者為他。福利済世利人」、『行事鈔』下に「善見云。三乗聖人悉皆乞食」、また「善見云。分衛者乞食也」とあり、『法集経』に「行乞食者。破一切?慢」、『十二頭陀経』に「食有三種。一受請食。二衆請食。三常乞食。若前二食起諸漏因縁。所以者何。受請食者。若得請便言我有福徳好人。若不請則嫌根彼。或自鄙薄。是食憂法則能遮道。若僧食者。当隋衆法断事擯人料理僧事。心則散乱妨廃行道。有
生活の形態としての乞食カナダの乞食(バンクーバー、2008年)乞食。江戸職人歌合 石原正明著(片野東四郎、1900年)乞食
(『和漢三才図会』(正徳2年(1712年)成立)より)

上記の仏教の修行における乞食が転じて、他人から物品や金銭の施しを受けて生活している者を指すようにもなった。ただし、家族による仕送りや行政による保護を受けて生活している者はこれには含まない。一般に住居を持たない貧困者(ホームレス)が行う事が多いと誤解されているため、転じてホームレスをさす言葉としても使われる場合がある。乞食は必ずしも住所不定ではないし、住所不定者でも物乞いをせず働いている者もいる[2]。また、2000年代からインターネット上で乞食をするネット乞食が出現した。
西洋

古代、ローマ帝国の成立において大規模な戦争によって土地を失った人々が大量に都市に流入し、物乞いを行う人々の人口を膨張させた[3]

産業革命が起きた際にも手織職工や機織職人が食べて行けなくなり、都市部を中心に物乞いを行う人々を増大させた[3]
日本

前近代には被差別民として乞食が存在した。中世には乞食は組織化され、都市部で物乞いをする代わりに清掃業務などを請け負った。特に癩者の稼業としての乞食行為は公的にも認められていたので、癩患者ではない物も被り物などで癩者の風体で乞食行為を行った。こうして乞食は非人身分ととらえられるようになり、地域によっては施行を受ける被差別民そのものの呼称ともなった。

1869年明治2年)に東京府が乞食行為を禁止したことを嚆矢として全国的に乞食行為への取り締まりが行われ、1871年(明治4年)には賤民廃止令により身分としての乞食も無くなった。1933年(昭和8年)児童虐待防止法が成立。内務省令により児童虐待の例示の一つとして乞食が明記され、児童を使用することが禁じられた[4]

現代の日本において乞食行為は、日本国憲法第27条のもと、軽犯罪法児童福祉法で禁止されている[2]

軽犯罪法

軽犯罪法1条22号は、こじきをし、又はこじきをさせることを禁止し、違反者には拘留又は科料の刑事罰が規定されている。


児童福祉法

児童福祉法34条1項2号は、児童にこじきをさせ、又は児童を利用してこじきをする行為を禁止し、違反者には3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又はこれの併科とする刑事罰が規定されている。

児童福祉法の規定は児童に直接乞食をさせるのではなく、児童を利用して乞食をする行為を処罰する規定である[1]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:35 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef