九二式普通実包
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この項目では、7.7mm口径銃用の九二式実包について説明しています。13.2mm口径銃(砲)用の九二式実包については「九二式車載十三粍機関砲#弾薬」をご覧ください。

九二式普通実包
各種九二式実包のカットモデル図。
種類機関銃弾
原開発国 日本
使用史
使用期間1933-1945
使用者・地域日本
使用戦争日中戦争
太平洋戦争
製造の歴史
設計時期1932-1933
生産期間1933-1945
派生品九七式普通実包
九九式普通実包
特徴
元モデル八九式普通実包
薬莢形状セミリムド、ボトルネック
(後に リムレス)
弾丸径7.9 mm (0.31 in)
首径8.69 mm (0.342 in)
リム径12.7 mm (0.50 in)
(後に 12.1 mm (0.48 in))
薬莢長58 mm (2.3 in)
全長80 mm (3.1 in)
火薬無煙小銃薬乙
(後に三番管状薬)
火薬重量2.85 g
弾丸性能

弾頭重量/種類初速エネルギー
13.2 g (204 gr)
九二式普通実包750 m/s (2,500 ft/s)3,712 J (2,738 ft?lbf)
10.5 g (162 gr)
九二式徹甲実包820 m/s (2,700 ft/s)3,530 J (2,600 ft?lbf)
10.7 g (165 gr)
九二式焼夷実包810 m/s (2,700 ft/s)3,510 J (2,590 ft?lbf)
10.1 g (156 gr)
九二式曳光実包810 m/s (2,700 ft/s)3,313 J (2,444 ft?lbf)
10.5 g (162 gr)
八九式普通実包800 m/s (2,600 ft/s)3,360 J (2,480 ft?lbf)

算出時の銃砲身の長さ: 721 mm

九二式普通実包(きゅうにしきふつうじっぽう)とは、日本陸軍が使用した7.7mm弾薬の名称である。主として九二式重機関銃に用いられた。
概要

弾丸の全長は35mm、弾径7.9mm。銃身の口径7.7mmよりも径が太いのは、ライフリングに噛ませるためである。硬鉛の弾身を黄銅で被甲し、弾丸の重量は13.2g、弾尾は狭窄されている。円筒部にローレットが施されている。薬莢は半起縁式で、金質は黄銅第二号を使用した。装薬には無煙小銃薬乙を使用し、装薬重量2.85gである。雷管は0.03gの爆粉を備える。実包の全重量は27.5gで、全長は80mmである。九二式重機関銃から発射された場合、最大射程4,100mでも人馬の殺傷能力を持っていた。なお、1936年昭和11年)9月に装薬が三番管状薬へと変更されているが、これは無煙小銃薬乙の腔圧の高さによるものであった[1]

1932年(昭和7年)2月に第一回審査が行われ、この結果を踏まえて、弾丸形状、被甲の金質、弾身の金質、装薬量を研究した。同年6月に第二回試験を行い、人馬の殺傷能力を確認して良好だった。同年9月から12月、また1933年(昭和8年)2月から3月にかけ、陸軍歩兵学校と協同して試験を実施、概ね実用に適していることを確認した。1933年(昭和8年)6月に仮制式制定の上申が行われた[2]
その他の弾種

以下の弾種が存在した。

なお「兵器細目名称表」においては、弾薬の名称は「○○式○○銃弾薬○○式○○実包」、「○○式○○銃弾薬空包」という型式で呼称する。後に名称の簡易化を図るため、従来同一の弾薬でありながら銃毎に制定してあった弾薬の名称が、全て「七粍七銃弾薬○○式○○実包」、「七粍七銃弾薬○○銃空包」へと統一された[3]
九二式徹甲実包

九二式重機関銃、八九式旋回機関銃八九式固定機関銃と共用である。装甲自動車飛行機の装甲部分を貫通し、内部を破壊、殺傷する目的で開発された。飛行機のエンジン、燃料タンクの破壊も目的とされている。

弾丸の全長は35mm、直径7.9mm、弾尾は狭窄されている。弾丸重量は10.5g。被甲は黄銅。鋼製弾身を備えている。

使用する薬莢、装薬、雷管は九二式普通実包と同様である。装薬量は3.0g。実包全体の重量は24.6gであった。九二式重機関銃で射撃した場合、初速は820m/s、命中精度は中距離以下において普通実包と同様である。日本製鋼で生産されたニセコ鋼板を射撃した結果、鋼板を距離200mで12mm侵徹した。350mでは10mm、500mでは8mm、750mでは6mm、1,000mでは4mmを侵徹した。

1933年(昭和8年)11月に富津射場で審査、実用に適すると認められ仮制式制定の上申に至った[4]
九二式焼夷実包

九二式重機関銃、八九式旋回機関銃、八九式固定機関銃と共用である。これは普通実包、徹甲実包と混用するか、連続発射して、航空機、気球を破壊する銃弾だった。

弾丸の長さ37.5mm、直径7.9mm、重量10.7g。被甲は白銅である。黄燐焼夷剤0.7gが充填され、弾身は白銅で覆った硬鉛である。弾身前部の表面には8条の細い縦溝が刻まれている。また縦溝の下部を繋ぐ太い横溝が1条刻まれており、この横溝付近の被甲部には直径0.6mmの噴気孔が設けられており、ハンダ蝋で塞がれている。薬莢、雷管、装薬は九二式普通実包と同様である。装薬量は3.0g。実包の全体重量は24.8gである。

発射すると銃身との摩擦熱によって被甲のハンダが溶け、弾頭内部の黄燐も溶ける。黄燐は縦溝、横溝を順に通り噴気孔から流出、空気に触れて燃焼する。日中は燃焼煙、夜間は曳光によって弾道を指示した。また目標に命中すると可燃物に引火した。九二式重機関銃を用いた場合、初速810m/sで射出され、射程1,000mでの命中精度は普通弾にやや劣った。夜間は弾道が900m視認でき、昼間は弾道が500m視認できた。ただし昼間では、観測状況によっては側方からの視認が困難であり、また夏季においては視認できる距離が相当短縮された。水素を充填した気球に対しては、単射で距離250mまで効果を発揮した。ガソリンタンクに対しては連射で350mまで効果を発揮した。

1933年(昭和8年)7月に伊良湖射場で試験された。試験銃には八九式旋回機関銃と八九式固定機関銃を用いた。この時には発煙と発光を視認できる距離が不十分であり、また旋回機関銃では装填不能を生じた。これにより弾頭と弾身に修正を加え、同年8月に伊良湖射場で試験した。機能は良好であったが夏季のために視認距離がなお短く、同年11月に九二式重機関銃で再試験した。結果、機能と弾道性が良好であった。1934年(昭和9年)2月9日に仮制式制定が上申された[5]

なお、焼夷実包は専ら航空用として使用されていたことから、1939年(昭和14年)に規定された弾薬統制要領に基づき、地上用である九二式重機関銃弾薬の制式からは削除された[6]
九二式曳光実包

九二式重機関銃、八九式旋回機関銃、八九式固定機関銃と共用である。曳光によって弾道を指示する銃弾で、弾種標識は緑色である。

弾丸全長37.5mm、直径7.9mm、重量10.1g。被甲は白銅、弾身は硬鉛。弾丸後部の銅製内管の内部に、硝酸ストロンチウムを主剤とする曳光剤0.8g、過酸化バリウムを主剤とする点火剤0.4gが充填されている。薬莢、雷管、装薬は九二式普通実包と同じである。装薬量は3.0g。


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