中高一貫教育
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中高一貫教育(ちゅうこういっかんきょういく)とは、前期中等教育(一般の中学校で行われている教育)と後期中等教育(一般の高等学校で行われている教育)の課程を調整し、一貫性を持たせた体系的な教育方式のことである。また、これを行っている学校を中高一貫校(ちゅうこういっかんこう)という。
概要

無試験で上級学校に進学する中学校(や受け入れる上級学校)を俗に「エスカレーター式」「エレベーター式」と呼ぶこともあるため、中等教育学校や中高一貫校もこのように呼ばれることがある。しかし後期中等教育は義務教育ではないため、必ずしも全ての生徒が系列高校に進学、または中等教育学校の後期課程に進級できるとは限らない[注釈 1]

国立・私立の中学校と高等学校の多くが戦後6年制一貫教育を行ってきた。最近では、公立においても中高一貫教育が可能になったため、児童の進路選択の多様性を増すために導入する実例が増えている。
日本「日本の中高一貫校」も参照
分類・統計

実施校には以下の3種類がある。(出典「学校基本調査 - 平成22年度(確定値)結果」)

同一学校型(
中等教育学校

中学校の課程と高等学校の課程を統合した一体の学校。中学校に相当する前期課程と高等学校に相当する後期課程がある。前期課程を修了すると中学校を卒業したものと同じ資格を持つ。通常後期課程の募集は行われないが、発足当初は生徒を募集することがある。また、2013年1月には海陽中等教育学校の後期課程で30名を募集する第4学年編入学試験が行われる[1]

全48校。国立4校。公立28校。私立16校。


併設型(中学校・高校)

同じ設置者(都道府県・市町村など)が中学校と高等学校を設置して接続するタイプ。中学校から高等学校へは無選抜で進学することができる。また高等学校は外部からの募集も行う。私立の場合は外部募集がないこともある。

全273組。国立1組[2]。公立69組。私立203組。

比較的都市部に設置されることが多い。また交通の便のよい学校に設置されることが多い。都道府県立中学校が設置されることにより、地域の市区町村立中学校に影響が出る。広く広範囲から生徒を集めることができれば、地元中学校への影響が小さくなる利点がある。一方過疎地に設置された県立中学校では定員割れを起こすなどしたことが原因で廃止されるケースが出てきている(新潟県など)。

理数教育に重点を置く学校、グローバル教育を重視する学校、将来のリーダーの養成を目指す学校などそれぞれの学校が特色を作って教育活動を行っている。

外進生と内進生はミックスしてホームルームを形成する場合と、3年間別のクラスを形成する場合(京都市立西京高等学校・附属中学校など)がある。

中学校においては、中学校の標準授業時間数よりも授業時間を増やして教育を行っているところが多い。また、高校受験がないことや教育課程の特例を生かし、高校内容の先取り学習を行う学校が多い。

部活動は中学校・高等学校が連携して行っており、文化部を中心に中高合同で行っている。


連携型(中学校・高校)

設置者が異なる中学校と高等学校が連携して教育を行うタイプ。中学校の教師と高校の教師がチームティーチングを行ったり、教育課程をスムーズに接続したりする。連携中学校から高校へは簡便な試験で選抜する。また高校は、一般の試験で、他の中学校出身者を受け入れる。

全177組。国立2組[3]。公立174組。私立1組(水戸英宏中学校ならびに水戸葵陵高等学校および水戸啓明高等学校[4]

過疎地域で採用されることが多い。その地域に根ざした教育が展開される。

あくまで連携であるため、中高一貫教育の効果は中等教育学校や併設型より小さい。特色的な教育課程を組むこともしにくい欠点がある。

上記の数字は「学校基本調査」(文部科学省統計)で対象にしている中高一貫校のみであり、ある中学校からある高校に一般入試をせずに進学できる場合(内部進学)も両校を中高一貫校と呼び慣わしているため、実質的な一貫校はもっと多い(国立や私立の進学校など)。代表的な一貫校はいずれも上記の数字には含まれない。このように実際には私立中高の大部分が一貫校と考えられる。実質的な私立中高一貫校の数は、2012年5月1日現在732校(中等教育学校に転換しない私立中高一貫校は715校)に上る[5]。傾向としては、国立私立には中等教育学校(完全中高一貫校)や併設型(別クラス型と混合型に大別される)が多く、公立には連携型が多い。
高校募集

外部からの生徒を受け入れることによって、生徒に一定の緊張感を持たせて一貫校特有の中だるみを防ぐことを目的としている学校もある。中高一貫校の高校入学組の中には、中学受験失敗の巻き返しを目指した生徒も少なくない。近年、中学受験の普及と少子化の影響により優秀な外部進学者が減少しているため、多くの学校が高校入学を廃止して完全中高一貫校へ移行している。また、高校入学組の進学実績が内部進学組に比べて著しく低いのも要因となっている。

それに対して、高校募集をしない学校を完全中高一貫校という。完全中高一貫校は中等教育学校とは制度上は別物である[6]。高校募集を停止して完全中高一貫校になる学校が徐々に増えつつある。その背景として、外部生(高校入学組)は中高一貫のカリキュラムを受けた内部生に比べて進度が遅いことがある。高校募集を継続していても、高校から入学した生徒への未履修分野の補講が必要となったり、中には、高校から入学した生徒を中学からの内進生のクラスに組み込まず、別クラスにする学校もある。中等教育学校も基本的に後期課程募集はしない。

なお、中高一貫校と銘打ちながら、中学卒業段階で県立の高等学校に生徒の多くが流出し、系列高校への進学が少ないため、中学は評価が高いものの、高校は中学と比較して評価が著しく低く、中高一貫校としての評価が全く得られていないという、南関東近畿等の中高一貫校(中高一貫教育を提供する6年制コースと高校受験準備教育を提供する3年制コースがある履正社中学校・高等学校を除く)では見られない特異な現象が起きている学校もある(愛知県東三河地方の桜丘中学校・高等学校愛知産業大学三河中学校・高等学校など)。

私立の中高一貫校では同じ学校法人によって、「高等学校のみ」の学校を別に設置している所もある。学校により、中高一貫校で「○○中学高等学校」、高等学校では「○○高等学校」と名称するところや中高一貫校を6年制、高等学校を3年制とコースづけしていたりする。

同じ名を冠する学校でありながらそれぞれ「進学校」「非進学校」という二極分化が起きることがある[注釈 2]

また、制服についても似ているが、中高一貫校の方が高価な素材を使ったり、学校法人側でも差別化を図っていることがある。
制度変更

中学高校併設の私立校国立校では従来から行われてきた教育方式[7]だが、公立校では、東京都立世田谷工業高等学校1959年から1973年にかけて付属中学校を設置したくらいしか例が無く、1998年学校教育法改正により正式に認められ、積極的に一貫教育ができるようになった。

法的に中高一貫校の形をとっている学校としては、1999年度に公立中等教育学校の宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校、公立併設型の岡山市立岡山後楽館中学校・高等学校、公立連携型の松阪市立飯南中学校・松阪市立飯高中学校・三重県立飯南高等学校、私立併設型の横浜共立学園中学校・高等学校の4組が設置されたのが最初である。文部科学省は日本に500校の中高一貫校を設置する予定である[8]
中高一貫教育のメリット・デメリット「日本の中高一貫校#問題点」および「格差社会#教育による階層化」も参照

中高一貫校では高校・後期課程進学時に高校受験が不要または簡単な試験で済むため、6年間のうち大部分を試験勉強に追われずに過ごせるという点が人気の一因となっている。これは従来、一定以上の学力成績を達成していれば、確実に地元の公立普通科高校に進学できるようにした総合選抜制度などで実現されていたことでもある(その後総合選抜は、少子化の影響や、進路選択の余地が少ないなどの拘束性が嫌気されて、徐々に衰退していった)。

高校受験などの負担が少ないことは大きなメリットの一つであるが、学年が上がるにつれて、学校内での生徒間の学力差が顕著になる傾向がある。中高一貫校の中には高校段階で募集をやめた学校も多いため、学校の校風が自分に合わなくても別な学校に進学しにくいという問題もある。私立大学の附属校は一般入試を受けなくても大学に内部進学できる場合が多く、そのため、難関大学の附属校は人気が高くなっている。

中学校の選択は親の関心が優先しがちなため、公立中高一貫校も「選ばれた生徒だけの特別の学校」になるのは構造的な必然であるという指摘がある[9]

しかし、一般の地元公立中学校にはゆとり教育いじめ問題や学級崩壊などの諸問題が発生する場合が比較的多いため、公立中学校に入学することへの不安も強い。これは日本の地方は教育に関する法整備が遅れているためであり、その土地に住む日本人は大学や大学院教育を知らずに過ごしていることが多い。


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