この記事は特に記述がない限り、中華人民共和国の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。
中華人民共和国老年人権益保障法(ちゅうかじんみんきょうわこくろうねんじんけんえきほしょうほう、中国語: 中?人民共和国老年人?益保障法)は、1996年に制定された高齢者に関する中華人民共和国の法律[1]。日本語では「高齢者権益保障法」と翻訳される[1][2][3][4]。
中国における高齢者事業を法制化した初めての法律である[5]。高齢者福祉に対する国家の責務を規定し、高齢者の扶養義務を有する人を広めに設定していることを特徴とする[1]。特に「親元への頻繁な帰省の強制」を規定した第18条は中国国内で大きな波紋を呼んだ[2]。 1996年制定当時の法(以下「旧法」とする)は6章50条で構成され、どちらかといえば宣言的な内容の法律であった[6]。旧法の構成は次の通り[7]。 総則の次に「家族扶養」がきているところからも分かるように、国家の社会福祉に対する義務よりも家族の扶養義務を強く打ち出した法律であると言える[8]。第2章で規定された高齢者の扶養義務者は、扶養義務者の配偶者までとされる[8]。 2013年施行の改正法(以下「改正法」とする)は9章85条に大幅拡充されているが、法律としての構成は旧法を踏襲している[7]。すなわち、次のような構成である[7]。 大きな変更点は、旧法第3章で規定していた社会保障を、改正法では第3章から第6章までに分割し、旧法の規定を独立した章立てとし、明確化したところである[7]。特に旧法では高齢者の居住環境について簡単に触れる程度であったが、改正法ではバリアフリー住宅の建設など具体策が盛り込まれた[7]。また、第2章にある「膽養」(せんよう[9])の語は、「子供が親を物質的に生活の世話をすること」という意味であり、高齢夫婦間ないしは高齢兄弟姉妹間よりも子供による世話を強調する形となった[8]。 第1条では「高齢者の合法的権益を保障し、老齢事業を発展させ、中華民族の敬老・養老・助老の美徳を発揚し、憲法に基づき本法を制定する」と法律の目的を示す[10]。「助老」は改正法で新たに付加された文言であり、「老人を助ける」という考えが追加される形となった[10]。 第9条では、旧暦9月9日を「高齢者の日」(中国語: 老年?)と制定し、新たな祝日とした[3]。 第18条では、家族が高齢者を冷遇・無視することを禁止するとともに、別居している場合は頻繁に顔を合わせるように求めている[3]。これを達成するため、雇用主には雇用者の見舞休暇の取得を保障する義務を課している[3]。ただし罰則は特に定められていない[4]。見舞休暇の制度自体は1981年から存在したが一般に知られておらず、知っていても取得すれば職位を失うことを危惧する労働者も多いことから、あまり普及しないのではないかという意見がある[3]。この条項は中国国内のマスメディアやインターネット上で広く論争の対象となり、条文中の「常に帰省して世話をせよ」の「常に」が指す頻度が一体どれくらいなのか、といった議論が展開された[11]。 第46条では、介護体制の強化を謳い、介護人材の育成、介護職の給与向上、専門職・兼業職・ボランティアから成る介護サービスの構築を定めている[3]。中国では介護施設・介護関係の人材ともに圧倒的に不足しており、現状の打破が望まれている[3]。 第52条では、県以上の人民政府に地元戸籍を有しない常住高齢者に対しても、戸籍保持者と同等の待遇を与えることを規定し、都市部を中心に戸籍保持者と同等水準の介護サービスなどを享受できるようになった[3]。ただし財源の問題で、同じ権利を行使できるわけではなく、広州市のように地元戸籍を有しない高齢者は何もサービスが受けられない都市も存在する[3]。 中国では一人っ子政策により原則1組の夫婦は1人の子供しか授かることができないが、この政策に反して2人以上子供をもうけた高齢夫婦の方が忠実に守った高齢夫婦よりも裕福な暮らしを享受できるという社会矛盾を抱えており、その解決が必要であった[12]。また同政策により、ただ1人の子供が都市へ働きに出てしまい、高齢者のみ自宅に取り残される「空巣老人」の問題も浮上してきた[13]。
構成
旧法
第1章 総則(第1 - 9条)
第2章 家族扶養(第10 - 19条)
第3章 社会保障(第20 - 39条)
第4章 社会発展への参与(第40 - 42条)
第5章 法律責任(第43 - 48条)
第6章 附則(第49 - 50条)
改正法
第1章 総則(第1 - 12条)
第2章 家族膽養と扶養(第13 - 27条)
第3章 社会保障(第28 - 36条)
第4章 社会サービス(第37 - 51条)
第5章 社会優待(第52- 59条)
第6章 居住環境(第60- 64条)
第7章 社会発展への参与(第65 - 71条)
第8章 法律責任(第72 - 82条)
第9章 附則(第83 - 85条)
経緯
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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