中華人民共和国の鉄道(ちゅうかじんみんきょうわこくのてつどう)では中華人民共和国(中国)における鉄道について記す。
中国の都市間を結んでいる鉄道は、大部分が中国国家鉄路集団(中国鉄路)によって運営されている。この他に市営の地下鉄や新交通システムなどの都市内交通機関や、産業目的の鉄道などが存在している。.mw-parser-output .toclimit-2 .toclevel-1 ul,.mw-parser-output .toclimit-3 .toclevel-2 ul,.mw-parser-output .toclimit-4 .toclevel-3 ul,.mw-parser-output .toclimit-5 .toclevel-4 ul,.mw-parser-output .toclimit-6 .toclevel-5 ul,.mw-parser-output .toclimit-7 .toclevel-6 ul{display:none}
国鉄全国の鉄道網
中華人民共和国では、長距離輸送・移動において最も多く用いられるのが鉄道である。都市内以外のほとんどの路線が中国国家鉄路集団によって運営されており、事実上の国鉄である。長らく国務院の鉄道部によって運営されてきたが、2013年3月14日、全国人民代表大会での承認を経て設立された中国鉄路総公司に移管された。その後2019年6月18日に中国鉄路総公司が中国国家鉄路集団へ移行している[1]。
中国の鉄道総延長は2021年末時点で150,000kmを超え[2]、アメリカに次ぎ世界第2位である。鉄道の電化率は約7割で、アメリカの約1割を大きく上回る。鉄道網は八縦八横とも呼ばれる幹線をはじめとして、国内縦横に張り巡らされており、マカオの新交通システム澳門軽軌鉄路の開業を以て、現在では、すべての省や特別行政区に広がっている。2009年の時点で、国鉄は貨車603,082両、客車49,355両、機関車18,922両を保有している[3]。また、1日当たり38,000本の列車が運転されていて、その内の3,500本は旅客列車である[3]。
2008年10月に発表された中長期鉄道網計画による政府の2020年までの鉄道投資は総額2兆元になるといわれていた[4]。この計画は、2006 - 2010年に総額1.25兆元を投資するという第11次五か年計画をさらに発展させたものであった。中国の鉄道網は2007年末には78,000kmであったが、2010年末には91,000kmへと拡張され、さらに、2012年末までには110,000kmに達すると予測された。鉄道の重要性が増している理由の一つに貨物輸送需要の増加があり、国鉄は需要に合致した輸送力を確保する必要に迫られている[5]。 中国の鉄道(中国鉄路)は、清朝時代の1876年(光緒2年)にイギリスによって敷設された呉淞鉄道(上海 - 呉淞間14.5 km)が始まりであるが、これは無許可で作ったものなので数年で撤去された。本格的なものは1881年(光緒7年)に李鴻章の命によって敷設され、ラバが引く車両を用いた唐胥鉄道(河北省・唐山 - 胥各荘
歴史
以後、中国の鉄道の多くは外国資本によって敷設されたため中国を搾取する道具と見られ、1899年(光緒25年)に起こった義和団の乱では攻撃対象にされた。1911年(宣統3年)には民間資本で作られていた粤漢鉄道(広州 - 武昌)・川漢鉄道(漢口 - 成都)を国有化して列強の抵当に入れることに反対した四川省の資本家・民衆運動がきっかけで辛亥革命が起こるなど、時代に翻弄される格好となった。
また日露戦争の結果、満洲南部地方(現東北地区の遼寧省)にロシアが建設した東清鉄道南部が日本に譲渡され、南満洲鉄道(満鉄)となった。その利権を保護するために日本は1931年に満洲事変を起こし、翌1932年に満洲国を建国、一部の路線は国有となった。満鉄ではあじあ号など保守的な日本内地の鉄道省とは一線を画した先進的な試みを早くから行った。続く1937年 - 1945年の日中戦争では、日本軍が占領した華北地域の鉄道は満鉄系列の華北交通、華中地域の鉄道は日本と同盟関係にあった中華民国汪兆銘政権の国策会社華中鉄道によって運営され、日本と同盟関係にあったドイツまで中央アジア経由で結ぶ大東亜縦貫鉄道も計画された。
日中戦争後、国共内戦によって1949年に中華人民共和国が成立すると、鉄道は国の重要な産業とみなされるようになり、原則として国有鉄道の運営とされるようになった。そして国の成立当時総延長21,810kmに過ぎなかった鉄道は、国家指導下で急速に建設が進められ、文化大革命後の1978年には43,000km超に、1985年には52,000km超、そして2009年には86,000km超の路線を有するまでになり、インドの62,000kmを抜いてアジア最大、世界でもアメリカについで第2位の路線網を誇っている。現在も、各地で新線の建設が進められており、2006年10月に鉄道部が発表した計画では、第11次五か年計画後の2010年には、総延長を90,000km超にすることを目標にしている。
また、電化区間は中華人民共和国成立当時はゼロであり、複線区間も866kmであったが、2010年末現在ではそれぞれ42,000km超・37,000km超となり、電化区間距離についてもロシアに次ぎ世界第2位となっている。2010年末に電化率と複線化率はそれぞれ46%と41%になった。
2008年の世界金融危機の際の中国政府による4兆元の公共投資策(内需拡大十項措置(英語版))の一環で2010年代に入ると、都市間高速鉄道が北京 - 天津・鄭州 - 西安・武漢 - 広州・深? - 香港などの区間に導入済みとなり、2018年には世界の高速鉄道の距離の3分の2も占める世界最長の高速鉄道網を有するまでになった[6]。また、貨物鉄道輸送では中国政府が国策に掲げた一帯一路構想に後押しされ、中国大陸とヨーロッパをシベリア、モンゴル、中央アジア経由で結ぶ中欧班列(渝新欧鉄道、義烏・ロンドン路線(英語版)、義烏・マドリード路線(英語版))の運行本数は2013年の80本から2018年には1万本を超えるまでになった[7][8]。
現状襄渝線大巴山トンネルに向かう旅客列車「中華人民共和国の高速鉄道」も参照
中国の鉄道の特徴として、同じ路線に高効率で貨物輸送と旅客輸送と兼ねて行うことが挙げられる。
2009年現在、トンベースの年間貨物輸送量はアメリカを上回り、約33.3億トンで世界一である(ただし、トンキロベースでは2兆5239億トンキロ、わずかの差でアメリカに次ぎ世界第2位である)。
一方、旅客輸送は、2009年の年間輸送量は約15.2億人(都市間のみ、北京や上海などの大都市都市鉄道の輸送量を含まないので、日本の約6分の1程度)、7878億人キロ(日本の約3倍で世界一)である。このことは、長距離の利用客が非常に多いことを意味する。実際、旅客輸送は、長距離輸送が中心であり、2 - 3日をかけて走る列車も少なくない。直通を原則としたダイヤ構成で、一部のローカル線を除き、乗り継ぎでの利用は考慮されていない。
中国の鉄道で最も利用客が多くなるのは、毎年1 - 2月の春節(旧正月)の前後における帰省客輸送「春運」である。この時期には列車が全国で大増発されるなど、当局では延べ約2億人とも言われる利用客数を捌くために、40 - 45日程度の特別体制が組まれる。近年は都市部への出稼ぎが多くなったこともあって、輸送力は絶対的に不足しており、切符の購入は困難を極めるほか、切符が高額で取引されることもあった。