中継
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「中継」は放送放送局以外の場所で制作などを行うことについて説明しているこの項目へ転送されています。電気通信については「中継方式」を、その他の用法については「リレー」をご覧ください。

中継放送(ちゅうけいほうそう)とは、放送ラジオテレビ)における放送内容または番組素材および、そのための技術。一般的に中継(ちゅうけい)と略す。目次

1 概要

2 技術

2.1 中継回線

2.2 連絡回線


3 設備・システム

3.1 常設中継設備

3.2 自動車による中継放送


4 関連項目

5 参考文献等

6 脚注

概要 テレビ中継放送現場の例(百貨店宮崎山形屋

本来の電気的意味における「中継」(長距離の伝送路を伝わって弱くなった信号増幅する)に由来するのではなく、番組素材が通信回線を経由、つまり「中継ぎ」して放送されることからついた呼称である。この「中継ぎ」をするための通信回線のことを「中継回線」という。

放送番組のために、演奏所以外の場所(現場)において内容の音声映像(番組素材)の制作を行う必要が生じた場合、その場所に、臨時にスタジオ副調整室の機能のほとんどもしくはその一部を設け、その場で番組素材のほとんどもしくはその一部を制作し、そこから中継回線を用いて演奏所へ向けて送り、演奏所の副調整室(受けサブまたはリモートサブと呼ばれる)もしくは主調整室において最終加工し、主調整室経由で放送する。これを目的とし、常設の中継設備または機材を積んだ自動車(=中継車。後述)を置き、中継回線を通じ、演奏所に番組素材を送る。

通信回線で送られてくる番組素材をリアルタイムで加工し、番組として放送するものを「生中継放送」という。

通信回線で送られてくる素材を加工して番組としたものを、一度記録したうえで放送するものを「中継録画(録画中継)放送」もしくは「中継録音(録音中継)放送」という。

なお、通信回線を用いずに、VTR等の記録媒体に現場で直接記録して演奏所に持ち帰り、番組として制作・放送するものは収録放送といい、中継放送とは区別している(演奏所のスタジオや副調整室を用いて制作、記録したものと同じ扱いとしている)。
技術「ラインネット」も参照
中継回線

中継回線の種類は、方式別におよそ以下の様に分けられる。
有線回線(公衆電気通信回線)による中継放送

テレビ中継には電電公社の時代からマイクロ回線など映像伝送用の専用回線を使うしかなかった。そのため、マイクロ回線がない中継現場からはFPU演奏所まで伝送し、全国放送の場合は地方局からマイクロ回線に載せて東京キー局に送られることが一般的であった。しかし近年は全国に張り巡らされた光ファイバーを活用するケースが増えている。そのため、KDDIや地域ごとの電力系通信事業者が映像伝送サービスを提供している。またNTTダークファイバーとして光ファイバの芯線を貸与している。これらは一般家庭用のインターネットと同様の光ファイバーである。すなわち、全国の電柱からテレビ中継ができるということである。(あくまで芯線を使うのであって、インターネットで伝送するわけではない)

この手段は大きく分けて二つある。一つは演奏所から比較的近い中継場所は非圧縮による伝送である。これはVSU(映像伝送装置)の光出力パワーで演奏所など伝送先へ送信する。そのため(装置により性能に差があるが)おおむね数十kmが限界である。それを超える場合は、中継局に受信VSUを設置し受信した光信号をHD-SDIに変換してから再度送信VSUで光として送信し、伝送距離を伸ばしている。非圧縮のVSUは光波長多重通信を採用している物が多いため一本の光ファイバーで十数チャンネルのHD-SDIを双方向送受信できる。そのため、本線、予備、送り返しのみならず、複数の現場の各カメラの映像をそのまま演奏所に送り、演奏所側でスイッチングするような製作も可能である。昨今はキー局でも、地上波衛星ネット配信などがあり、それぞれに応じた製作信号や送り返しを送受信することもできる。また、映像用の1波を使いメディアコンバーターとしてイーサネットや連絡線も構築できる。

もう一つの方法は圧縮による伝送である。非圧縮では中継回数が多すぎて品質劣化やコスト増が生じるような遠距離は圧縮をかけてNTTグループが提供するるビジネスイーサなどの広域イーサネット網を利用する。従来は帯域保証型のATM回線が使われてきたが、サービス終了に伴い、帯域確保型のビジネスイーサなどを使わざるを得ない。数日程度の中継では、1日単位の臨時契約を行う。国際中継は伝送距離が数千?数万kmにも達するため、国際イーサネット網で伝送している。

光ファイバーによる伝送のメリットは、衛星などと違い天候に左右されないことである。そのため非常に安定的な中継が可能となる。その一方で市中の電柱に張り巡らせている光ファイバーを使うため交通事故による電柱倒壊などのリスクは(確率的にほぼ無いとはいえ)完全には避けられない。そのため光ファイバー伝送を行う場合でも、生放送の場合はFPUや衛星でのバックアップを準備する事が多い。

これら光ファイバーによる中継は通信会社系ではソフトバンクKDDI、独立系でネクシオンが伝送装置を含めてパッケージで受託している。また、全国の競技場、スタジアム、コンサート会場など、都内スタジオなど、中継が多い場所には予め回線を敷設し、接続するだけですぐに中継できる体制がとられている。なお、お天気カメラや記者クラブのような常時中継があるような所は放送局側が通信会社から芯線のみ賃借して自営で構築する場合もある。[1]ソフトバンクKDDIネクシオンから各キー局並びに生放送が多い衛星局の回線センターへは常設の映像伝送回線が敷設されている。

その他に、現場の中継車と局側の連絡手段や送り返しの音声を臨時専用電話回線(臨時専用線)で構築する場合もある。2線式の場合は臨時2W(りんじツーワイヤー)、4線式なら臨時4W(りんじフォーワイヤー)などと呼ばれている[2]
地上無線回線による中継放送

自社で所有する制作用の無線回線を用いて中継を行う例。加工した音声のみ、あるいは音声および映像を自社所有のFPUと呼ばれる可搬型無線送信機により、演奏所に番組素材として送る。ラジオではVHF帯ないしUHF帯が、テレビではマイクロ波帯が使用される。受信基地まで電波が直接届かない場合は、「中継ぎ」のための中継車を間に入れて2段中継となることもある。
人工衛星回線による中継放送

特にテレビでは、自社単独あるいは系列各社共同で所有する人工衛星回線(SNG)を用いて中継放送を行う例がある。現場に「SNG車」(後述)等を置き、映像・音声を加工して、「可搬型地球局」という通信装置を用いて人工衛星にそれらを送信し、人工衛星に搭載されているトランスポンダーを経由させて、演奏所に番組素材として送る。

衛星携帯電話の通信速度の高速化により、報道番組を中心に、インマルサットBGANを用いたテレビ中継方式が広まっている。これらは画質面で従来のFPUやSNGに劣るものの、それらの1/10以下のコストで導入出来ることや、片手で持ち運びが出来るほどの小型であるという点において、簡便性という利点がある。
携帯電話回線による中継放送

昨今は携帯電話網の速度が劇的に高速化しており、理論上HD-SDIの伝送(35M/bps)には十分な速度である。現実的にはベストエフォード型であるため安定的な伝送は期待できないが、複数のデータ通信カードを使用し、一種のロードバランスによりトラフィック分散し低速でもHD-SDI伝送するLIVE-Uなどが登場している。光回線やFPUの構築と比べれば安定度は低いが、ショルダーバック程度の容積のため、電車やバイクでも一人で中継機材を運べてしまう。そのため災害時や緊急時、中継車が間に合わないような場所からでも瞬時に中継できたり、車等で移動しながらでも中継できるため、本放送や予備回線として使われることもある。


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