中毒性表皮壊死症
Toxic epidermal necrolysis
概要
診療科皮膚科学
分類および外部参照情報
ICD-10L51.2
中毒性表皮壊死症(ちゅうどくせいひょうひえししょう、Toxic epidermal necrolysis、TEN)はライエル症候群(Lyell's syndrome)[1]としても知られる重篤な皮膚障害で、通常医薬品の副作用として発生する[2]。全身の皮膚表皮が真皮と分離して重篤な感染症を招く。死亡率は20?40%で、死因の多くは敗血症[3]と続発性の多臓器不全である。治療はまず原因と思われる薬剤の投与を全て中止する事と、集中治療室などでの支持療法(対症療法)である[4][5]。
TENの発生率は毎年100万人当り0.4?1.9人である[6]。TENはスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)と連続した概念である。体表面の3割以上に病変があるとTENとされ、1割以下の場合はSJSとされる。その中間の、1?3割に病変がある場合は“SJS/TEN”と呼ばれる[7][8]。多形紅斑(EM)とTEN/SJSを一元的に捉えようと議論された事が過去にあるが、現在では異なる概念とされている[6][9][10]。.mw-parser-output .toclimit-2 .toclevel-1 ul,.mw-parser-output .toclimit-3 .toclevel-2 ul,.mw-parser-output .toclimit-4 .toclevel-3 ul,.mw-parser-output .toclimit-5 .toclevel-4 ul,.mw-parser-output .toclimit-6 .toclevel-5 ul,.mw-parser-output .toclimit-7 .toclevel-6 ul{display:none} TENは最終的に広範囲の皮膚紅斑、壊死、皮膚・粘膜の表層剥離に至るが、それに先立って多くの場合インフルエンザ様症状(咳嗽、鼻水、発熱、食欲不振 初期の皮膚症状は体躯の赤紫色で黒ずんだ平坦な斑 TENを発症するほぼ全ての人で、口腔、眼、外陰部にも症状が現れる。有痛性の痂皮とびらんが粘膜表面に形成される[12]。口腔内の水疱やびらんのため、食事が困難となり、経鼻胃管または経皮内視鏡的胃瘻造設術(英語版 TENの病因として最多のものは薬剤性であり、80?95%とされる[6]。 TENを最も引き起こしやすい薬剤は:
兆候と症状
前駆症状
皮膚症状
粘膜症状
病因
抗てんかん薬(ラモトリギン、フェノバルビタール、フェニトイン、カルバマゼピン、バルプロ酸)[2]
高尿酸血症治療薬・アロプリノール
抗生物質
サルファ薬(スルファメトキサゾール、スルファジアジン、スルファピリジン
β-ラクタム系抗生物質(セファロスポリン系、ペニシリン系、カルバペネム系)
非ステロイド性抗炎症薬
代謝拮抗剤(メトトレキサート)
抗HIVウイルス薬(ネビラピン)
副腎皮質ホルモン
抗不安薬(クロルメザノン)
そのほか、肺炎マイコプラズマ(英語版) 感染症、デングウイルス感染症でTENが発生した例も報告されている。画像診断に用いる造影剤や骨髄や臓器の移植もTENの発生に関連があると指摘されている[2][6]。
薬剤以外の要因として、溶連菌の関与を指摘する報告がある[14]。 HIV-陽性の患者はその他の場合よりも1,000倍、SJS/TENのリスクが高いが、その理由は定かではない[4]。 一部の遺伝子型がTENリスクと相関している。例を挙げると、一部のHLA抗原、HLA-B*1502[15]、HLA-A*3101[16]、HLA-B*5801[17]は特定の薬剤でのTEN発症リスクが高い。 TENにおける免疫系の役割は明らかではないが、一部の免疫細胞(細胞傷害性CD8+ T細胞)は角化細胞の死と続発性の皮膚剥離の主因である。角化細胞は表皮深部に存在し、皮膚細胞を支えている。CD8+ T細胞が薬剤やその代謝物で過剰に活性化されて角化細胞を攻撃しているのではないかとの仮説が立てられる。すなわちCD8+ T細胞がパーフォリン、グランザイムB、グラヌリシン TENの診断は臨床的知見と組織学的知見の両方に基づく。早期のTENは非特異的薬剤反応と似ているので、臨床家は早い内にTENの可能性を念頭に置く必要がある。口腔、眼、性器の粘膜炎はほとんどの患者に現れるので、TENの診断に結び付く症状だと言える。ニコルスキー徴候
HIV
遺伝学的因子
発症機序
診断