中毒性表皮壊死症
[Wikipedia|▼Menu]

中毒性表皮壊死症

Toxic epidermal necrolysis
概要
診療科皮膚科学
分類および外部参照情報
ICD-10L51.2
ICD-9-CM695.15
OMIM608579
DiseasesDB4450
eMedicineemerg/599 med/2291 derm/405
Patient UK中毒性表皮壊死症
MeSHD004816
[ウィキデータで編集]

中毒性表皮壊死症(ちゅうどくせいひょうひえししょう、Toxic epidermal necrolysis、TEN)はライエル症候群(Lyell's syndrome)[1]としても知られる重篤な皮膚障害で、通常医薬品の副作用として発生する[2]。全身の皮膚表皮真皮と分離して重篤な感染症を招く。死亡率は20?40%で、死因の多くは敗血症[3]と続発性の多臓器不全である。治療はまず原因と思われる薬剤の投与を全て中止する事と、集中治療室などでの支持療法(対症療法)である[4][5]

TENの発生率は毎年100万人当り0.4?1.9人である[6]。TENはスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)と連続した概念である。体表面の3割以上に病変があるとTENとされ、1割以下の場合はSJSとされる。その中間の、1?3割に病変がある場合は“SJS/TEN”と呼ばれる[7][8]多形紅斑(EM)とTEN/SJSを一元的に捉えようと議論された事が過去にあるが、現在では異なる概念とされている[6][9][10]。.mw-parser-output .toclimit-2 .toclevel-1 ul,.mw-parser-output .toclimit-3 .toclevel-2 ul,.mw-parser-output .toclimit-4 .toclevel-3 ul,.mw-parser-output .toclimit-5 .toclevel-4 ul,.mw-parser-output .toclimit-6 .toclevel-5 ul,.mw-parser-output .toclimit-7 .toclevel-6 ul{display:none}
兆候と症状
前駆症状

TENは最終的に広範囲の皮膚紅斑壊死、皮膚・粘膜の表層剥離に至るが、それに先立って多くの場合インフルエンザ様症状(咳嗽、鼻水、発熱、食欲不振(英語版)、不快感)を経験する。薬剤の使用歴は平均で症状発現前14日間(1?4週間)であるが、再曝露(薬物の再使用)後48時間で再発する事もある[11]
皮膚症状

初期の皮膚症状は体躯の赤紫色で黒ずんだ平坦な斑(英語版)であり、そこから拡大して行き、大きな水疱を形成する。病変部の皮膚は壊死し始め、または弛み、大きく剥離する[4]
粘膜症状

TENを発症するほぼ全ての人で、口腔、眼、外陰部にも症状が現れる。有痛性の痂皮とびらんが粘膜表面に形成される[12]。口腔内の水疱やびらんのため、食事が困難となり、経鼻胃管または経皮内視鏡的胃瘻造設術(英語版)が必要となる。眼は腫脹し、痂皮を生じ、潰瘍が生成して失明に至る危険がある。眼に関する最も重篤な症状は結膜炎である[13]
病因

TENの病因として最多のものは薬剤性であり、80?95%とされる[6]

TENを最も引き起こしやすい薬剤は:

抗てんかん薬ラモトリギンフェノバルビタールフェニトインカルバマゼピンバルプロ酸[2]

尿酸血症治療薬・アロプリノール

抗生物質

サルファ薬スルファメトキサゾールスルファジアジン、スルファピリジン(英語版))

β-ラクタム系抗生物質セファロスポリン系ペニシリン系カルバペネム系


非ステロイド性抗炎症薬


代謝拮抗剤メトトレキサート

抗HIVウイルス薬ネビラピン

副腎皮質ホルモン

抗不安薬クロルメザノン


そのほか、肺炎マイコプラズマ(英語版) 感染症、デングウイルス感染症でTENが発生した例も報告されている。画像診断に用いる造影剤や骨髄や臓器の移植もTENの発生に関連があると指摘されている[2][6]

薬剤以外の要因として、溶連菌の関与を指摘する報告がある[14]
HIV

HIV-陽性の患者はその他の場合よりも1,000倍、SJS/TENのリスクが高いが、その理由は定かではない[4]
遺伝学的因子

一部の遺伝子型がTENリスクと相関している。例を挙げると、一部のHLA抗原、HLA-B*1502[15]、HLA-A*3101[16]、HLA-B*5801[17]は特定の薬剤でのTEN発症リスクが高い。
発症機序

TENにおける免疫系の役割は明らかではないが、一部の免疫細胞(細胞傷害性CD8+ T細胞)は角化細胞の死と続発性の皮膚剥離の主因である。角化細胞は表皮深部に存在し、皮膚細胞を支えている。CD8+ T細胞が薬剤やその代謝物で過剰に活性化されて角化細胞を攻撃しているのではないかとの仮説が立てられる。すなわちCD8+ T細胞がパーフォリングランザイムB、グラヌリシン(英語版)、腫瘍壊死因子αFasリガンドなどの分子を大量に放出し、角化細胞を死滅させ、TENを呈するというものである[6]
診断

TENの診断は臨床的知見と組織学的知見の両方に基づく。早期のTENは非特異的薬剤反応と似ているので、臨床家は早い内にTENの可能性を念頭に置く必要がある。口腔、眼、性器の粘膜炎はほとんどの患者に現れるので、TENの診断に結び付く症状だと言える。ニコルスキー徴候(英語版)(穏やかに横方向に力を加えると基底層から真皮乳頭層が分離する)およびアスボー・ハンセン徴候(英語版)(水疱に圧を掛けると横方向に拡がる)もTENに見られる現象である[4]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:42 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef