中村主水
[Wikipedia|▼Menu]

中村 主水(なかむら もんど)は必殺シリーズに登場する、藤田まことが演じた架空の人物である。小説などの原作を持たないテレビ番組オリジナルのキャラクターである。

第2作『必殺仕置人』の初登場以来、第31作『必殺仕事人2009』まで、シリーズの半分を超える16作にレギュラーとして登場した。その他のシリーズでも『助け人走る(第12話)』や『必殺剣劇人(第8話)』にゲスト出演し、公式にも「必殺の顔」と称されるなど、シリーズを通して活躍した。
キャラクター
表稼業

典型的な「昼行灯」として江戸中で知れ渡っている南町奉行所[注 1]定町廻り同心。職務怠慢が目立つが、自分の担当地域の商家に袖の下(賄賂)を要求したり、同じく軽犯罪の場合には金で見逃すという、現代でいうところの悪徳警官である。史実として同心(役人)に付け届けをすることは頻繁にあったが、当時の時代劇では主人公の同心が小悪党という設定は珍しいことであった。普段は無気力だが、旗本や大名などの巨悪が絡む事件については上役の命令を無視してまで捜査をしようとするなど、元の性格が現れることもある。『必殺仕置人』最終話や『新・必殺仕事人』第47話のように、自身の得にならないことでも、黙って見過ごせない状況について意見することもあった[注 2]

シリーズ中盤までは他の同心と同じく黒の羽織を着ていたが、後期からは紫から茶色へと羽織の色が変わって行った。

上役の多くは主水のことを軽んじるか蔑ろにし、時には疫病神とも呼んだが、中には主水の素質と性格を見抜き、報償金で上手くコントロールする者もいた。同僚たちからも馬鹿にされているが、10年以上に渡って宴会の幹事を務め、宴の仕切りに関しては同僚たちからも信頼されていた。賭け事では胴元を務めることも多く、その際には、普段は口うるさい上司も上手く丸め込んだ。キャリアについての正確な描写は少ないが、後期の作品[1]で、勤続20年の表彰を受けるシーンがある。また、スペシャル『2007』の時点ではせんが『奉行所勤めが30年』と発言している[注 3]

好物は甘いものと目刺。旧仕置人の頃は饅頭や柏餅をほおばる描写が特に多かった。酒は仕置人までは下戸であったが、仕業人から飲むようになる[注 4]。また仕事人では甘い物の好物で和菓子屋に借金が貯まっている事が言われている。

劇中では異動や出張が多く、シリーズによって勤務地や職務が変わっている(#経歴参照)。
裏稼業

晴らせぬ恨みを金銭で晴らす殺し屋。同心(警察)の立場を利用して、標的の経歴や身分を調べ上げる「密偵」の役割と「殺し」の役割を両方担う。敵は主水が犯罪を取り締まる役人である為、殺し屋だと疑う事がほとんど無い為、大半が油断して殺されるパターンがほとんどである。また、仲間たちが殺し屋の疑いが掛からないように、捜査中に証拠を隠滅する重要な役割も担っている。『必殺仕置人』で棺桶の錠が持ち掛けて来た、百姓娘の父親の仇討ちを請け負ったのをきっかけに、裏稼業に足を踏み入れた。以降、「仕置人」や「仕事人」などと名乗りながら、長きに渡って裏稼業を続けてきた。

当初は参謀として登場し、殺しを行った仲間たちの撤収や、侵入が困難な大名屋敷の潜入の手配を主に行っており、『仕置人』は特にその傾向が強く、実際に殺しを行うのは鉄と錠だけで、サポートにすら関わっていないエピソードも存在する。その後、主に実働隊の一員、リーダーとして活躍し、なおかつ参謀として計画を立案することもある。殺し技は剣術#剣術参照)。

なお必殺シリーズでは剣術の殺し屋は浪人が大半を占めるが、主水のような公務に就いている殺し屋は比較的珍しい例でもあった。(後に山田朝右衛門や渡辺小五郎と公務につく殺し屋は度々登場する)

『必殺仕置人』では日々の鬱憤を悪人にぶつけるように積極的に仕置に関わっていたが、『暗闇仕留人』で、糸井貢が仕留人としての生き方に苦悩し命を落としてからは極力感情を面に表わさず、佐渡金山以来の顔馴染みだった念仏の鉄や、中村家の端唄の師匠である三味線屋の勇次、奉行所の同僚である渡辺小五郎などを除き、裏稼業以外では仲間と会う機会があっても知らない者同士を装い、馴れ合いを避けて必要以上に親しく接することはなかった。

仲間が私生活のトラブルで捕まった時は特に敏感になり「お前に何かがあって捕まったら俺たち全員が獄門晒し首になる」と注意する事が多い。

仕置の狙いを定めた獲物に情けをかけることはないが、ごく稀に弱気になることもあった[2]。仲間内では冷静で、念仏の鉄が頭の血がのぼって喧嘩沙汰になりかけた時は仲裁にまわり、なだめる事も多かったが、時折甘さや未熟さを見せた場合は叱咤し、感情が先走りがちだった飾り職人の秀や子供じみた正義感を振りかざす西順之助に対し、鉄拳を振るったこともあり。旧友が仕置きの対象になり主水を利用して暗殺を止めた鋳掛屋の巳代松にいたっては特にこっぴどく鉄拳制裁を振るっていた。チームが危機に瀕した場合は、その原因となったメンバーを容赦なく斬るとも宣言していたが、仲間が危機に陥った場合は自ら死地に飛び込む場面も多く、実際に仲間を粛清したり裏切ったことはない。

がめつい性格ではあるが、仕置する悪人が主水を買収しようとしても拒み、悪人の金には手をつけない。また損得勘定で動くため、仕置料が安かったり相手が旗本や幕府関係者の場合は割に合わないと断る場合もあるが、最終的には正義感や義侠心から引き受ける。

仲間からは主に「八丁堀」と呼ばれ(町役人達も自称する)、苗字や名前で呼ばれる機会は少ない。

必殺仕事人2007』以降、主役の座を渡辺小五郎へ譲り、若手のサポート役に廻るようになる。だが血気盛んな仕事人たちを叱責したり諭すことも忘れなかった。

『新・仕置人』での重要な伏線として、前期シリーズでの主水は裏稼業の世界では知られておらず、主水も自分の正体を隠していた。特定の斡旋人(元締)に就かず、自身もそのような人物や組織については「人殺しの集団」「信用できない」と発言したこともある。シリーズを通して、寅の会や闇の会などに間接的に関わった例を除き、特定の元締から仕事を請け負ったのは『必殺仕事人』と『必殺仕事人・激突!』の時だけである[注 5]。主水の名が仲間以外の裏稼業の人間に知られるようになるのは『江戸プロフェッショナル・必殺商売人』第22話以降である。

一方、後期シリーズ(仕事人シリーズ)では裏の社会に主水の名が知れ渡り、様々な同業者たちと面識があった。その中には有力な元締もおり、仕事を斡旋されたこともあるが、特定の元締の下で働くことは稀である。後期エピソードの中には、悪党が闇の世界を牛耳るために主水を懐柔しようとする回が多数ある(『必殺仕事人V・激闘編』第24話、最終回。『必殺仕事人V・風雲竜虎編』第1話など)。『仕事人』第82話のように、主水のことを知らない裏稼業の者たちも登場している。
剣術

殺し技は、手持ちの刀を用いた剣術であるが。親しげに話し掛けて相手の油断を誘う不意討ちや騙し打ちを主に行う。その腕前は一流で、劇中の描写や設定によると奥山神影流、御嶽新影流、小野派一刀流、一刀無心流の免許皆伝で、心形刀流の心得もある。寺子屋では一番の腕前であったとも語られ、奉行所内では五本の指に入るといわれている。

仕掛人の西村左内とは異なり、状況に応じて様々な剣技を披露し、単に斬り掛かるだけでは無く、相手を挑発させて先に剣を抜かして返り討ちに合わせる事や、助太刀に見せかけて敵に切りかかる技も披露する、稀に多勢を相手に刀を抜く事もある。

『仕事人V』『仕事人V・激闘編』からは刀の仕込み打刀のような刃を仕込み、それを様々な形で使用する事が多くなる。基本は目釘を外した柄を鞘のように抜いて相手を暗殺する事もあるが、刀の長さを利用して仕込みの刀の刃先を槍のように用いて刺し殺したり、出会いがしらに茎を抜いて刀を握らずに接近してそのまま刺し殺す等、暗殺のレパートリーが増えて行く。

奉行所では昼行燈を装い、剣の腕前を周囲に隠している。奉行所での剣術の稽古や試合などでもわざと負けたり、実力がないように見せるため、竹光を腰に差すこともあった。

また、必殺シリーズでは剣豪の仕事人は西村左内や畷左門等の浪人が担当する事が多かったが、次第に主水が活躍が増えた事により、剣豪の殺し技は主水が一任することへとなった。
家族など「中村せん・りつ」も参照

妻のりつ、姑のせんと3人で、八丁堀の役宅に暮らしている。下総の筆頭同心 北大路家の次男である主水が、わずかな伝手を頼って、中村家に婿入りしたのがなれそめである。中村家の出自は清和源氏義光流[3]家紋は「丸に唐花」。宗派は不明だが、恐らく法華宗であると思われる[4]

『必殺仕事人W』第43話で、自らを「中村主水之介 玉五郎」と上司の筆頭同心 田中の前で名乗る場面がある[注 6]

身長は五尺三寸[5]、体重は十六貫五百匁。黒羽織は仕置人?仕置屋、新仕置人?仕事人III 第3話まで、アヘン戦争へ行くと剣劇人で着用、茶色羽織は仕業人と仕事人1話の冒頭、仕事人III4話以降?仕事人IVは茶色羽織と煤けた黒羽織を、薄い茶色羽織は仕事人V?風雲竜虎編12話まで着ている。

恐妻家で、元々世渡りが下手な上、やる気の無さゆえに奉行所での出世の見込みがないこと、主水自身の怠惰な生活態度から、家では2人から疎まれ、陰に日向にいびられ続けている。主水もまた、そのような態度で接する2人、特にせんに対しては相当に嫌気が差している様子が窺える。もっとも、表に出さないだけで深い愛情で結ばれており、それを示唆するエピソードも劇中に数多く見られた。

30歳を過ぎても子供ができず、懐妊の兆しもないことから、せんとりつからは「種無しかぼちゃ」と罵られている。子供が授からない理由ははっきりしないが、主水が子供のころにおたふく風邪にかかり高熱を発したことが判明したときは、せんとりつからはこれが原因ではないかと疑われていた[5]。『商売人』ではりつが懐妊するが、最終的には死産[注 7]という結末を迎えた。夫婦ともに性欲は旺盛で、りつが床入りを迫る場面があり、主水も時折、他の女性に浮気をしている。なお放送当時の社会を舞台にした2回のTVスペシャルにおいて主水ならびにせんとりつの子孫が登場しているが、主水の子孫とされた人物はそれぞれ名前も職業も違っている[注 8]

子供についてだが、必殺仕事人V・旋風編第11話「主水の隠し子現れる」で、17年前に、お島(中村メイコ)が、主水と一度だけ過ちがあった(不倫)と語っており、作中で、お小夜(三沢恵理)が主水の子供ではないかと問われた時、お島(中村メイコ)は否定しなかったが、その後お小夜は悪人によって殺害され、お島も死亡したため詳細は不明。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:70 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef