この項目では、天体の一種について説明しています。SF小説の短編集については「中性子星 (短編集)」をご覧ください。
中性子星 右上方向にジェットを放出するほ座のベラ・パルサー。中性子星自体は内部に存在し、ガスに遮蔽されて見えない
中性子星[1](ちゅうせいしせい、英: neutron star[1])とは、質量の大きな恒星が進化した最晩年の天体の一種である。 中性子星は質量が太陽程度、直径20 km程度、大気の厚さはわずか1 m程度で、中性子が主な成分の天体である。密度は太陽の1014倍以上もあるとされている。およそ109 t/cm3とその桁外れに大きい密度のため、中性子星の表面重力は地球の表面重力の2×1011倍もの大きさがあり、脱出速度は 1/3 c にも達する。中性子星は大質量の恒星の超新星爆発によってその中心核が圧縮された結果形成されるが、中性子星として存在できる質量にはトルマン・オッペンハイマー・ヴォルコフ限界と呼ばれる上限値があり、それを超えるとブラックホールとなる。上限の質量は、理論的に太陽質量の1.5倍から2.5倍の範囲にあると考えられており[2]、2010年に約1.97倍の中性子星[3]、2013年には約2.01倍の中性子星[4]が確認されている。下限は太陽質量の0.1倍から0.2倍程度[5]。 重力崩壊によって非常にコンパクトに圧縮された結果として、角運動量保存の法則によって元の恒星よりも遥かに高速で回転しており、典型的な自転周期は 30 秒から1/100秒(2 - 6000 rpm)である。中性子星に強い磁気がある場合、その磁極から電磁波が放出されるが、2つの磁極(地球でいう北磁極と南磁極)を結ぶ線が自転軸と一致していない場合、中性子星の自転により電磁波が放出する方向を変えながら放たれるパルサーとなる。中性子星自身は可視光線を発していないため、パルサーとして実在が確認された。 中性子星は、中性子のみから構成される大きな原子核と見なすことができる。原子核内部では、陽子と中性子が互いに束縛されつつも動ける状態にあるため、液体といってもそれほど間違いではない(液滴模型も参照)。中性子星のコアは、その極めて大きい密度のため超流動状態になっているとするモデルも存在する[6]。 中性子星は恒星の超新星爆発によって形成される。恒星進化の最終期に中性子星が残るかどうかは恒星の質量によって決まる。(詳しくは恒星進化論を参照のこと。) 太陽質量の約0.46倍より小さい恒星は赤色矮星とも呼ばれ、温度が低いためヘリウム燃焼は発生せず、水素を燃やし尽くした後はそのままヘリウム型の白色矮星になる。 太陽質量の約0.46倍から約8倍までの恒星では、中心核で水素を燃やしつくした後でヘリウム燃焼が始まり、炭素・酸素・窒素が作られるが、それ以上の核融合反応は進まず、赤色巨星の段階を経て白色矮星となる。 太陽質量の8?10倍の質量を持つ恒星では炭素・酸素からなる中心核でさらに核融合反応が起こり、酸素やネオン・マグネシウムからなる核が作られる。この段階の中心核では電子の縮退圧が重力と拮抗するようになり、この中心核の周囲の球殻状の部分で炭素の核融合が進むという構造になる。中心核を取り巻く部分で起こる核反応生成物によって次第に中心核の質量が増えていくが、やがて中心核を構成する原子内で、陽子が電子捕獲により中性子に変わった方が熱力学的に安定となる。
概要
中性子星の形成