中心静脈カテーテル
治療法
右鎖骨下静脈に挿入された中心静脈カテーテル。皮下トンネルのないタイプ。
シノニム中心静脈ルート、中心静脈ライン、中心静脈アクセス
ICD-10-PCS
中心静脈カテーテル(ちゅうしんじょうみゃくカテーテル、英: Central venous catheter、CVC)は、鎖骨下静脈、内頚静脈、大腿静脈などの太い静脈に挿入するカテーテルである[注釈 1]。
静脈アクセス(英語版)の一種である。 重症患者や長時間の点滴治療を必要とする患者には、より信頼性の高い[注釈 2]静脈路確保のために、手足よりも心臓に近い位置にある静脈に大きなカテーテルを留置することがしばしば必要となる。これらのカテーテルは、一般に、首の静脈(内頸静脈)、胸部(英語版
概要
中心静脈ラインは、口から飲めない、ないしは血管障害性の薬剤・輸液の投与、血液検査、高速での輸液や血液製剤の投与、中心静脈圧(英語版)の測定に用いられる[1][2]。用いられるカテーテルの長さは通常15?30 cm、シリコンやポリウレタン製で、輸液注入用のルーメンが複数あるものもある[3](p8)。
中心静脈カテーテルの管理には、カテーテル内腔を注射器に充填した生理食塩水で洗浄することがよく行われるが、この行為はフラッシュ(英: flush)とよばれる。
合併症には、気胸、動脈穿刺、感染、カテーテル閉塞、カテーテルの位置異常、空気塞栓、血栓症などがある。
中心静脈カテーテルの留置にはガイドワイヤーを用いるセルディンガー法が用いられることが多く、近年はカテーテル留置時に超音波診断装置を併用することによって合併症の発生率は低下しつつある。 最初の中心静脈カテーテル留置は、1929年、ドイツの外科研修医ヴェルナー・フォルスマンによって成し遂げられた。彼は、プラスチック製の尿道カテーテルを自分の左腕の尺側皮静脈
歴史
適応セルディンガー法による中心静脈カテーテルの穿刺セット。@局所麻酔薬を充填した注射器と注射針 Aメス B超音波診断装置のプローベ先端に塗布する滅菌済ゼリー Cヘパリン加生理食塩水を充填した注射器に接続された留置針 Dガイドワイヤー Eダイレーター Fカテーテル Gカテーテルの皮膚への固定具(糸で縫合固定する) H創傷被覆材A dialysis two-lumen catheter inserted on the person's left side. Scars at the base of the neck indicate the insertion point into the left jugular vein(英語版).
中心静脈カテーテルの主な適応は次のとおりである[6]。
末梢静脈へのカテーテル留置困難 ? 末梢静脈カテーテルを確保または維持することが困難な場合、中心静脈カテーテルが留置されることがある(例:肥満、過去のカニュレーション(英語版)による静脈の傷跡、興奮した患者)
特殊な薬剤ないしは輸液の投与 ? 血管収縮薬(ノルエピネフリン、バソプレシン、フェニレフリンなど)、化学療法剤、高張(英語版)液などの薬剤は末梢静脈にダメージを与えるため、しばしば中心静脈ラインを必要とする。さらに、複数のルーメンを持つカテーテルからは、複数の静注薬を容易に同時投与できる。
長期間の点滴治療 - 長期間の高カロリー輸液や抗生物質の静脈内投与など、長期間(数日以上)投与する必要がある注射薬は、中心静脈ラインを通して投与される。
特殊な治療 - 血液透析、血漿交換、経静脈的心臓ペーシング、侵襲的血行動態(英語版)モニタリング(例:肺動脈カテーテル)等の医学的介入には中心静脈アクセスが必要である。
中心静脈カテーテルの使用に絶対的な禁忌はない[6]。相対的な禁忌は、血液凝固障害、留置部位の外傷または局所感染、留置部位よりも心臓に近い側の血管損傷が疑われる場合など。ただし、中心静脈留置に伴うリスクと合併症があるので、以下に述べる[7]。 中心静脈ライン挿入は、いくつかの合併症を引き起こす可能性がある。用いることで期待される利益は、これらの合併症のリスクを上回るものでなければならない。 気胸が疑われる場合は、立位で胸部X線撮影(英語版 動脈穿刺は、中心静脈穿刺の合併症として恐れられており、生命を脅かす可能性がある。幸いなことに、これらの事象の発生率は、特にカテーテルを超音波ガイドで留置した場合、非常にまれである。頚動脈(英語版 すべてのカテーテルは、血流に細菌を混入させる可能性がある。その結果、重篤な感染症を引き起こし、最大で25%の確率で命に関わることもある[14]。
合併症
気胸)は1.5?3.1%程度にもなるとされる。内頸静脈のカテーテル治療の場合、気胸のリスクは超音波画像で可視化しながら留置することで最小化される。英国国立医療技術評価機構やその他の医療機関では、合併症を最小限に抑えるために超音波診断装置のルーチン使用を推奨している[8]。
動脈穿刺
カテーテル関連血流感染症 (Catheter-related bloodstream infections: CRBSI)