中国の青銅器
[Wikipedia|▼Menu]
婦好?尊 殷後期 劉鼎 殷後期 上海博物館

中国の青銅器(ちゅうごくのせいどうき)では、中国の古代文明を象徴する遺物である[1]青銅器の合金で作られた器物)について概観する。複雑な器形と文様、高度な鋳造技術を特色とする中国の古代青銅器は世界各地で愛好され、中国国内のみならず、欧米や日本など国外の美術館にも多数収蔵されている[2]
中国青銅器の製作年代 后母戊鼎(司母戊鼎)河南安陽武官村出土 殷後期

銅は、人類がもっとも古くから利用しはじめた金属である[3]19世紀デンマークの考古学者クリスチャン・トムセンは、人類の先史文明を「石器時代」「青銅器時代」「鉄器時代」という3つの時期に区分することを提唱した。これは、ある文明における青銅器や鉄器の出現を、当該文明が新たな段階に入ったことの指標とみなす考え方である。青銅とは銅を主成分として錫(および)を含む合金を指すが、青銅器の使用以前に錫を含まない自然銅を使用していた文化を銅器時代または金石併用時代と称する場合もある。馬承源等は、古代のエジプトや西アジアの文明は、おおむね紀元前4000年紀の半ばには青銅器時代に入っているのに比べ、中国が青銅器時代に入ったのはかなり遅く、紀元前2000年紀前半の二里頭文化期からであると主張している[4]。しかし、実際は甘粛省馬家窯文化遺跡で放射性炭素年代測定で5000年以上前に作られたと判明している青銅製刀器が発掘されているため[5]、中国は紀元前3000年よりも遥か前に既に青銅器時代に入っていたことが事実上証明されている。

それ以前、新石器文化に属する甘粛省青海省斉家文化(紀元前2200年頃 - 紀元前1600年頃[4])でも銅製の刀子・(のみ)などの小型の道具がすでに製作されていたが、この文化は金石併用段階とみられる[6]。なお、斉家文化の銅製品には青銅のものと紅銅(純銅)のものがあり、青銅器時代に先立って純銅のみを使用していた「銅器時代」の存在は中国では確認できない[3] 斉侯? 西周後期 上海博物館

中国が金石併用文化から青銅器文化の段階に入るのは、河南省洛陽市偃師区二里頭遺跡標式遺跡とする二里頭上層文化期(二里頭3・4期)である。この文化の実年代は論者によって異なり、正確には決めがたいが、おおよそ紀元前1700年頃と考えられている。この二里頭上層文化の遺物については、これを中国最古の夏王朝の文化とみなす見方と、(商)の初期に属するとする見方とがあるが、いずれにしてもこの文化が中国最古の青銅器文化とみなされている[7]。(時代と王朝名表記について)本項では、二里頭文化期の遺物については、「夏」「殷」の王朝名は用いず、「二里頭文化期」と表記する。「殷」は『史記』で用いられる表記で、現代中国語では通常「商」(または「商殷」)と表記されるが、本項では混乱を避けるため、日本語圏で一般的な「殷」の表記に統一することとする。

美術品として評価の高い殷周時代の青銅容器は、単なる酒器食器ではなく、宗教的儀礼のための祭器であり、後には器の所有者の地位や権威を象徴する政治的・社会的意味も担った。そのような意味を担う青銅器は「礼器(中国語版)」とも呼ばれる。中国の青銅器時代は(紀元前1600年頃 - 紀元前1050年頃)から西周時代(紀元前1050年頃 - 紀元前771年)を経て、春秋時代(紀元前770年 - 紀元前403年)まで継続し、春秋時代と次の戦国時代の交代期あたりに鉄器時代に入ったとみなされている[8]。青銅製の器物はその後も時代までは引き続き製作されるが、中国を統一した秦は、周の制度を徹底的に否定したため、従来のような礼器の製作は終わり、青銅で作られる器物は燭台、香炉といった日常生活用品が主体となった。それもやがて衰退していくが、例外的に作り続けられたのは銅鏡である。青銅製の鏡は他に適当な代替材料がなかったため、18世紀に至るまで作り続けられた[9]
特色 食人虎? 殷後期 チェルヌスキ博物館

中国古代青銅器には、武器・楽器などもあるが、現代において芸術品として高く評価されているのは酒器、食器などの大型の容器類である。これらの器物は用途に応じてさまざまな器種があり、複雑な形態と精緻な文様を有する。これらの器物は単なる日用品や美術品ではなく、神や先祖を祀る祭器としての宗教的な意味と機能とを有する神聖な器物であった[10]。特に二里頭文化期から殷代には祭祀において酒の果たす役割が大きく、最初期に作られた青銅容器はもっぱら酒器であった。クロキビから醸造した神酒や収穫した穀物を神や祖先の霊に捧げ、祭祀の終了後の宴席においては、人々がそれらを飲食したと考えられている[11]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:91 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef