中国の知的財産権問題
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中国の知的財産権問題(ちゅうごくのちてきざいさんけんもんだい)では、中華人民共和国(中国)における特許権著作権などの知的財産権をめぐる問題について説明する。中国では、日本の特許権に相当する「発明専利益権」、実用新案権にあたる「実用新案専利権、意匠権に相当する「概観設計専利権」の3つの権利が中華人民共和国専利法(以下、専利法という)でまとめて規定され、専利権と総称される[1][2]
概説

中国政府は近年、特許など知的財産権の保護を強化する政策を進めており、2014年には知財紛争を専門に扱う裁判所を設立しているほか、政府は助成制度などで知財の出願を奨励しており、2014年の特許出願数は90万件超と5年間で3倍に伸びた。これに伴い特許に対する訴訟は年々増加傾向で年間約9000件程の訴訟数に達しており、これは特許訴訟の主戦場とされるアメリカの2倍の高水準である[3]

これは中国政府がこの10年間で知財保護制度を急速に整えてきたことが背景にある[3]。2014年11月からは北京や上海、広州に知財紛争を専門に扱う「知識産権法院」を相次いで設立し、大量の知財訴訟をさばき始めた[3]

中国では、これまで知財に限らず判例が法規範として機能していなかったが、知識産権法院は各地の判例を収集し、分析をすることを開始した[3]

今後、先例的価値が高いとして参考にすべきとする「指導的判例」を発表する見通しである[3]

権利行使に熱心なアメリカ企業と中国企業との間では、すでに訴訟合戦が起きている[3]。中国通信大手の華為技術(ファーウェイ)などは、アメリカ国内で訴えられた場合には中国で訴え返す戦略を用いる場合がある。

今後損害賠償訴訟が増えれば、この傾向はさらに加速するとみられる[3]

日本企業が中国の特許訴訟の当事者になる例はまだ少ないが、訴訟になった場合は日本企業が被告になるケースがほとんどである[3]

日本企業は侵害行為を確認しても訴訟に踏み出すには腰が引けてしまう傾向があると指摘される[3]
中国における知的財産権保護に関する国際条約と国内法整備
中国が加盟・締結した知的財産権保護に関する国際条約

中国がこれまで加盟した知的財産権保護に関する国際条約として、「世界知的所有権機関を設立する条約」(1980年加入)、「工業所有権保護に関するパリ条約」(1985年加入)、「文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約」、「万国著作権条約」、「許諾を得ないレコードの複製からのレコード製作者の保護に関する条約」(以上1992年加入)などがある[4]
知的財産権保護のための国内法整備

著作権

著作権法に続いて、著作権法実施条例(2002年8月2日公布、同年9月15日施行)、コンピューターソフト保護条例などが相次いで制定され、著作権の法的保護が強化されることになった[4]。保護される著作物の対象には、文学作品、口述の作品、音楽・演劇・曲芸・舞踏・サーカス芸術作品、美術・建築作品、撮影作品、映画など映像作品、工事・製造物設計図、地図・説明図、コンピューターソフト、法律・行政法規が定めるその他の作品が含まれる[4]

特許権

改革開放期に入るまでの中華人民共和国においては発明、発見、合理化建議に褒賞を与える法令(例えば、1963年11月3日公布・施行の発明奨励条例など)があっただけで、特許権として保護する規定はなかった[4]。1980年以降、国務院に特許局(現知識財産権局)が創設され、本「中華人民共和国専利法」と同法施行規則が2001年6月15日に公布され、翌2002年2月1日に施行された[4]。2008年には、中華人民共和国の世界貿易機関加盟に伴う法整備の一環として、本法の改正が行われた[5]

とりわけTRIPS修正協議書の内容を反映させること、創造性と新規性を発揚させること、および特許権保護を強化することが改正の主な目的である[5]。具体的には、まず発明・実用新案および意匠の定義を具体化・明確化した(第2条)[5]。次に、「出願前に国内外で知られている技術」でないことを明記して絶対的新規性を採用し(第22条)、これに関連して「公知技術の抗弁」が採用された(第62条)[5]。さらに、特許権保護の強化を目的として特許権者が侵害行為の差止に要した合理的費用(調査費、弁護士費用など)を損害賠償算定に際して斟酌することとし、あわせて賠償額の上限を、改正前の50万元から100万元に引き上げた(第65条)[5]。その他にも、これまで中華人民共和国民事訴訟法や司法解釈に散在していた提訴前仮処分の規定を一本化するとともに(第66条)、提訴前証拠保全手続を新たに設け(第67条)、特許強制実施許諾に関する規定も大幅に改正された(第48条から第57条)[5]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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