両生類
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両生綱 Amphibia
生息年代: 後期
デボン紀?現世 Pre??OSDCPTJKPgN

分類

:動物界 Animalia
:脊索動物門 Chordata
亜門:脊椎動物亜門 Vertebrata
上綱:四肢動物上綱 Tetrapoda
:両生綱 Amphibia
Gray, 1825

下位分類群

本文参照

両生類(りょうせいるい)とは、脊椎動物亜門両生綱 (Amphibia) に属する動物の総称である。
概論

両生類は、古生代石炭紀頃以降、多くの化石種が知られている。しかしながら、現生のものは、長い尾を持ち、短い四肢のある有尾目(サンショウウオなど)、尾がなく体幹が短くまとまって四肢の発達した無尾目(カエル類)、それに四肢を失い、細長い体の無足目(アシナシイモリ類)の3群のみである。両生類は、約3億6000万年前[1]陸上においての生活も始めたと考えられており、これが脊椎動物の中では初めて陸上生活が可能となった事例だと考えられている。ただ陸上生活が可能とは言っても、その身体の構造、生活史、生理、生殖などにおいて、陸上生活への適応を示しながらも不十分であり、水辺への依存度が強いという特徴を持っている。特に幼生は、一般に水中生活をしているなど、基本的に水中環境が欠かせない。

現生のは、ほぼ全てが淡水域を生活の場としている。原始的な形では卵を水中で産卵し、幼生は四肢を持たない形で生まれ、鰓呼吸で水中生活を行う。その後変態を経て肺呼吸で出来る成体になる。ただし、多くの例外があり、その生活は多様である。基本的に皮膚呼吸に頼る面が多いことから乾燥に弱いため、水辺などの湿った環境が生息域の中心であり、陸上で活動可能な体を持ちながら、生活や繁殖を水に依存した生涯を送ることからこの名がある[注釈 1]。「両生」類の名は、水中生活と陸上生活の両方が可能という意味ではなく、両方の環境が必要な動物であるという意味である(これが近年の両生類の減少に繋がっているとの指摘もある)。

本来、欧名を漢訳した両棲類、両棲綱であったが、「棲」の字が常用漢字に含まれないため、現在は多くの場合「両生類」「両生綱」と書かれる。ただし、明治の書物でも、教科書として扱われた「新撰理科書」や「新撰普通動物学」などで「両生類」の表記が見られる[2][3]

20世紀後半から、世界的に両生類の減少が著しく、多くの両生類が絶滅しつつある。カエルツボカビ症をはじめとする感染症や吸虫の被害のほか、粘膜に覆われた脆弱な皮膚が、環境変化への対応を困難にし、個体数の減少をもたらす原因になっていると考えられている。一説に因ればこのままのペースで減少が続くと、50年以内に全ての両生類が絶滅するとも言われている。
外部形態

成体は原則的には指のある四肢を持つ。ただし様々な程度にそれを退化させたものもある。無足目は完全に四肢を失っているが、化石種では四肢を持つものが知られている。有尾目のサイレン科は前肢しか持たない。

現存種は前脚には親指がないため前肢の指は基本的に4本で、後肢の趾は5本である。有尾目では後肢の指が4本であったり、前後肢とも3本以下であったり、アンフューマ科のように指趾が1本から3本という種類もある。

両生類の皮膚は分泌腺や毒腺が多くなめらかである。爬虫類のように、体表の多くの場所を覆うようなは持っておらず、また、体表のほとんど(場合によっては体表の全て)は角質化していない。これは皮膚が呼吸器としての役割(皮膚呼吸)が多くの割合を占めているからであるが、それゆえ乾燥に弱いという弱点にもなっている。なお、アシナシイモリの体のしわの間に小さな鱗がある。また、化石種には鱗をもったものもある。
生理

変温動物であり、体温は周囲の気温とともに変化する。温帯から寒冷地に住む種は冬眠を行う。

心臓は、2心房1心室より構成されるが無尾類と有尾類では若干構造が違い、心房中隔が無尾類では完全だが有尾類では隙間があるという違いがある[注釈 2][4]
肺循環体循環の区別があるが、心室中隔がないので動脈血静脈血が心室で混じり合って体全体および呼吸器の双方に送られる。ただし大動脈と肺皮動脈(哺乳類で言う肺動脈)の付け根に「らせん弁」というものがあり、心室の収縮時に入ったときの位置関係から動脈血はらせん弁で隠された肺皮動脈にはほぼ入らず、逆に静脈血は大半が肺皮動脈に流れる(一部は左大動脈にも流れる)[5]。また、皮膚呼吸への依存が大きいため体循環側でもガス交換が行われているほか、無尾類では肺循環側(肺皮動脈)からも体表側に通じる血管が存在しており、成体になると鰓に行く血管(腹大動脈から分岐)が退化する代わりに肺皮動脈から皮下動脈が分岐し、心臓から直接こちらに血液が送られるように成って皮膚呼吸の効率を高めている[6]

生息域は一般に、川、沼、湖などの淡水およびその周辺であることから、海水魚からではなく、淡水魚から派生して誕生した動物群であると考えられている。実際に、両生類の体は塩分に対する耐性が低く、海産の種も確認されていない。(汽水域に生息する種はいる:カニクイガエル)ただし化石種には海に住むものも存在した。

現生種・化石種を含め、完全な植物食の種は知られていない[7]

アミノ酸の代謝などによって生ずるアンモニアは、両生類にとっても有害な物質である。このアンモニアの排泄を行う方法も生育環境で大きく異なり、無尾目同士でも普通のカエルの場合は幼生(オタマジャクシ)の時は鰓からアンモニアのまま大半を排出する[8]が、変態後はアンモニアを尿素に変えて腎臓から排出する[8]方が主流となるのだが、生涯を水中ですごす種類の場合は幼生・成体共にアンモニア排出のままになる。これも、水を潤沢に利用できる[注釈 3]のか、そうではないのかが関係しているものと見られている。

普通のカエルと生涯水棲のゼノパス(ツメガエル)の窒素排出物の構成比の違い[注釈 4][9]種類アンモニア尿素
カエル(幼生)7510
カエル(成体)3.291.4
ゼノパス(幼生)7822
ゼノパス(成体)7525

生活史

現存する無尾目、有尾目、無足目の3目はいずれもかなり生態に差異があり、同じ目内でも例外が多い。

卵生のものが多く、基本的には水中に産卵する。有尾目と無足目では
卵胎生の種も多い。受精方法も体外受精体内受精の双方があり、体外受精は無尾目の大半やサンショウウオ上科など一部の有尾目に見られる。一方、体内受精は精包を受け渡す形(有尾目の多く)で行うものから、外部生殖器を持ち交尾するもの(無足目の大半と、無尾目の例外的なオガエル [10]など)が存在する。

卵は殻を持たず、ゼラチン質で包まれ、水中に生み付けられる。しかし、ヤドクガエル科プレソドン科など陸上で産卵する種類も珍しくはない。幼生や変態の終わった幼体を直接産む種類もいる。

成長過程で、変態を行い大きく形が変わるものが多く、特に無尾類の幼体は親とは別にオタマジャクシと言う。幼体は四肢が無く尾鰭があるなど魚類に似ているが、無尾類の幼体はかなりずんぐりしており、有尾類の場合は発達した外鰓を持つ(無尾類は孵化直後にはあるがすぐに隠れる)など、一般の魚類[注釈 5]とは異なる所も多い。

成体は基本的に四肢が生え(無足類やサイレン科は例外)、陸上生活を営めるものも多いが四肢があっても生涯を水中で生息する種類もいる。

呼吸に関しては全種、幼体・成体を問わず皮膚呼吸が発達しており、特に有尾目では皮膚呼吸のみで肺呼吸をしない種類(ハコネサンショウウオ属アメリカサンショウウオ科)が過半数(全425種類中の275種類)を占める[注釈 6]が、幼体時から肺呼吸をするメキシコサンショウウオもいるなど呼吸方法の多様性が強い、無足目も詳細不明なものが多いが同じように多様性が強いと考えられている[11]。逆に無尾目では孵化時点から機能はせずとも肺があり、幼生期(時期は足が生え始める前から変態直前まで色々)からこれが発達して肺呼吸をする方が多くの科に見られ[注釈 7]、例外的にヒキガエルの仲間やナガレガエルの仲間は変態完了まで肺が機能せず肺呼吸をしない[12]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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