世界文学全集
[Wikipedia|▼Menu]

世界文学全集(せかいぶんがくぜんしゅう)とは、世界の文学の名著をまとめた出版形態である。全集とは本来、「すべての書物」をさす言葉だが、そのような意味での世界文学全集を作成販売するのは不可能であり、主要作品をまとめたもののみで全集と称することが多い。
ブーム

全盛期の累計発行部数は2000万部から3000万部ほどであった[1]
世界文学全集の起源(大正時代)

以下は矢口の調査による。複数の世界文学をまとめて販売する作品集のはじまりは、新潮社の「近代名著文庫」8編9冊(1913年)とされる。その内容は以下。

作者訳者題
ダンヌンツィオ生田長江死の勝利
ドオデエ武林無想庵「サフォ」
ワイルド本間久雄「遊蕩児」
ツルゲーネフ大貫晶川「煙(スモオク)」
アルチバアセフ中嶋清「サアニン」
ドフトエーフスキイ昇曙夢虐げられし人々」上・下
ロチ後藤末雄「郷愁(守備兵の話)」
ハムズン杉井豊「世紀病」

他に大正?昭和初期に企画された作品集は下記がある。

出版社作品集名巻数出版時期内容
国民文庫刊行会 泰西名著文庫201914「レ・ミゼラブル」を「哀史」として馬場胡蝶
国民文庫刊行会泰西近代名著文庫241916「ジャン・クリストフ」を後藤末雄
博文館 近代西洋文芸叢書121916
新潮社世界文芸全集321920-1926「赤と黒」「ボヴリィ夫人」「アンナ・カレーニナ」
国民文庫刊行会世界名作大観501925-1928 「ドン・キホーテ」「ガリヴァの旅」「テス」
世界文豪代表作全集刊行会 世界文豪代表作全集181926-1928シェイクスピア、「ファウスト」「罪と罰」

昭和以後のおもな世界文学全集

日外アソシエーツの調査によれば、世界文学全集に相当するものは、個人全集、国や地域別全集、少年少女向け全集を除いても、日本で100以上出版されてきた。本項ではそのすべてを紹介する事は不可能なので、主に矢口の著作「世界文学全集」に紹介されたものを中心にあげる。
新潮社

日本における「世界文学全集」の名は、1927年開始の新潮社の全集に始まる。

全集名巻数判型出版時期備考
世界文学全集57A5弱1927-19321冊1円の「円本」と呼ばれた
現代世界文学全集46A5弱1952-1958
新版世界文学全集33A5弱1957-1960
世界文学全集50B61960-1964
新潮世界文学48A5弱1968-1972

改造社

「大衆文学全集」といいながら、「ロビンソン・クルーソー」「ガリヴァ旅行記」「ジェイン・エア」などを含む。ポーの短編も江戸川乱歩訳で紹介。

全集名巻数判型出版時期
世界大衆文学全集80巻A6強1928-1931

河出書房

「新社」とあわせて、世界文学全集の発行数は日本最多。

全集名巻数判型出版時期備考
新世界文学全集23B6強1941-1943大戦中の発行
世界文学全集19世紀篇60B6強1948-1955
世界文学全集古典篇27B6強1951-1956
世界文学全集決定版80+別巻5A5強1953-195919世紀篇と古典篇を統合

河出書房新社

1957年に河出書房は倒産し新社となった。

全集名巻数判型出版時期備考
世界文学全集グリーン版100B6弱1959-1966河出の世界文学全集の完成型
世界文学全集豪華版50A5弱1964-1968
世界文学全集カラー版50+別2A5強1966-1969
池澤夏樹=個人編集 世界文学全集30A5弱2007-2011平成のヒット全集

三笠書房

1950年代には、ヘミングウェイ、フォークナー、バール・バック、ミッチェルなど、20世紀アメリカ文学の翻訳で最先端だった。

全集名巻数判型出版時期
三笠版現代世界文学全集27+別巻4A5弱1953-1957

平凡社

世界を網羅する文学全集は多くないが、中国文学全集は他社の追随を許さない。ロシア文学全集もある。

全集名巻数判型出版時期
世界名作全集70+別巻3A6強(文庫本大)1958-1962

筑摩書房

紀元前にさかのぼる古典重視が特徴。河出と共通の訳者が多い。

全集名巻数判型出版時期備考
世界文学大系100A5強1958-1968
世界名作全集46巻中外国が38B6強1960-1962
筑摩世界古典文学全集50A5強1964-1974
世界文学全集69A5弱1966-1970
筑摩世界文学大系89A5強1971-1998ほとんど30年かけて完成。

集英社

1960年代以後に参入した、後発の全集出版社の代表格。

全集名巻数判型出版時期
世界短編文学全集17A5弱1962-1964
20世紀の文学・世界文学全集38A5弱1965-1968
デュエット版世界文学全集66B6強1968-1971
愛蔵版世界文学全集45B5弱1972-1976
世界の文学38A5弱1976-1979
世界文学全集ベラージュ88A5弱1977-1981
ギャラリー世界の文学20A5強1989-1991

中央公論社

若手の新訳者を抜擢し、「全巻新訳」と宣伝。結局新訳は過半くらい。

全集名巻数判型出版時期
世界の文学54B61963-1967
新集世界の文学46B61968-1973

講談社

少年少女向け全集に注力し、大人向けの全集参入は後発になった。

全集名巻数判型出版時期
世界文学全集48A5弱1967-1972
世界文学全集103+別巻1A5強1974-1991

学習研究社

本業の少年少女向けから大人向けに進出した。

全集名巻数判型出版時期
世界文学全集50巻A5弱1977-1979

「世界文学全集」によく採用された作品とその訳者

下記は「作家名から引ける世界文学全集案内 (I期)」を資料とした、収録された回数が多い作品である。短編は収録が容易なために、採用数が多い傾向がある。

世界文学全集の出版最盛期が1950-1970年代だった事を考慮すると、以下の作品は、その時代の価値観を反映しているかもしれない。
25以上収録されたもの
フョードル・ドストエフスキー罪と罰
中村白葉(世界文豪)米川正夫(河出、平凡)小沼文彦(筑摩)
スタンダール赤と黒
佐々木孝丸(新潮)桑原武夫生島遼一(河出、筑摩)富永明夫(筑摩、中公)
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ若きウェルテルの悩み
秦豊吉(新潮)高橋義孝(学研)国松孝二(筑摩)手塚富雄(河出)
ウィリアム・シェイクスピアハムレット
高原延雄(世界文豪)三神勲(河出、筑摩、学研)福田恆存(中公、河出)
エドガー・アラン・ポーモルグ街の殺人
谷崎精二(新潮)佐々木直次郎(河出)丸谷才一(中公、集英)
エドガー・アラン・ポー黄金虫
谷崎精二(新潮)佐々木直次郎(河出、創元、新潮)松村達雄(河出、筑摩)
エドガー・アラン・ポー黒猫
谷崎精二(新潮)松村達雄(筑摩、河出)小泉一郎(講談)
エドガー・アラン・ポー盗まれた手紙
江戸川乱歩(改造)佐々木直次郎(河出、新潮)丸谷才一(中公、集英)
レフ・トルストイアンナ・カレーニナ
原久一郎(新潮、集英)中村白葉(河出)米川正夫(筑摩、平凡)


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:71 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef