世界大戦争
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世界大戦争
The Last War
[出典 1]
監督

松林宗恵(本編)

円谷英二(特撮)

脚本

八住利雄

馬淵薫

製作

藤本真澄

田中友幸

出演者

フランキー堺

宝田明

乙羽信子

星由里子

山村聡

音楽團伊玖磨
撮影

西垣六郎(本編)

有川貞昌(特撮)

編集岩下広一
製作会社東宝[6][7]
配給東宝[6][7]
公開 1961年10月8日[出典 2]
上映時間110分[出典 3]
製作国 日本
言語日本語
製作費3億円[12]
配給収入2億8,499万円[13]
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『世界大戦争』(せかいだいせんそう)は、1961年昭和36年)10月8日に公開された、東宝制作の特撮SF映画[8][9]。監督は松林宗恵カラー東宝スコープ多元磁気立体音響[8][5][注釈 1]

昭和36年度芸術祭参加作品[出典 4]。併映は『アワモリ君乾杯!』(原作:秋好馨、監督:古澤憲吾[3][5]
概要松林宗恵監督(前列左から4人目)と松林組スタッフ。

「連邦国」と「同盟国」の2大勢力間で勃発した世界最終戦争を、市井に生きる人々の姿を通して描く反戦映画である[1][9]。また、製作当時は劇場公開直前に起きたベルリンの壁構築や翌年のキューバ危機に代表されるように東西冷戦の危機感が色濃く出ていた世相に合わせ、それを反映して第三次世界大戦を意識して制作された人間ドラマでもある[出典 5]。『私は貝になりたい』のテレビドラマ版と映画版の両方に主演したフランキー堺が、理不尽な運命に翻弄される平凡な小市民を熱演している[14]

近代兵器のようなミニチュアを用いた特撮シーンの完成度も見どころの一つである[16]。兵器や軍服のデザインや国章から、連邦国は資本主義陣営、同盟国は社会主義陣営を意識して描かれているが、劇中の台詞には両陣営とも英語が用いられている。準備稿の段階では、アメリカやソビエトといった実在の国名で書かれていた[17]

従来の近未来SFでは、希望的な未来を描いていたのに対し、本作品ではそれらを否定する結末となっているのが特徴である[9]。僧侶でもある監督の松林は、本作品の根底を流れるテーマとして、仏教の「無常」観を挙げている。

東宝プロデューサーの田中友幸は、1980年代のインタビューで現実の兵器類が本作品中のものに近づいていることに恐ろしさを感じていることを語っていた[18]
ストーリー

戦後16年が経過し、急速な復興を遂げた日本。主人公・田村茂吉は家族の幸せを願いながら、東京にて外国人記者の集まるプレスセンターの運転手として日々働いていた。そんな中、田村の長女・冴子は下宿中の青年航海士・高野と恋仲になり、笠置丸での長い航海を終えて帰還した彼と久々の再会を喜ぶ。冴子と高野は結婚の決意を茂吉に語り、驚く彼に反して妻のお由は賛同する。茂吉もついには冴子と高野の関係を認め、2人は結ばれることになる。

一方、世界は連邦国と同盟国の2大陣営に分かれ、両陣営は互いに核兵器を持ってにらみ合っていた。まもなく、北大西洋にて行われた同盟国陣営の軍事演習エリアへ連邦国陣営の潜水艦が侵入したことをきっかけに、両者の関係は緊迫する。田村が担当する記者・ワトキンスも、その状況を危惧し始めた。日本政府も国民の間に動揺が広がりつつあることを考慮し、両国の関係改善の道を探ろうとする。だが、緊迫した朝鮮半島北緯38度線の情勢をワトキンスが取材に向かったその数日後、小型ながらも実戦で核兵器が使われるという事態が発生し、連邦国・同盟国陣営双方で発射装置のボタンが押されれば核弾頭を搭載した弾道ミサイルが直ちに発射される一触即発の状況となる。

日本では総理が病身を押して公務を行い、両国の緊張をこれ以上高めまいと懸命の努力を行う。現場にいる軍人たちも最悪の事態だけは避けたいという思いを胸に、発射装置の故障や想定外の事故による偶発的なミサイル発射を阻止していた。やがて、南北朝鮮間で停戦協定が結ばれたことによって緊張が解け始めるが、北極海上にて発生した軍用機同士の戦闘をきっかけに再び関係が悪化し、世界各地にて武力衝突が発生する。日本政府は核兵器の使用だけはあってはならないと全世界に訴え続けるが効果は無く、日本でもついに核ミサイルへの警戒が始まり、人々の不安は頂点に達する。

大都市から避難しようとする人々でターミナル駅は大混乱となり、街は無人と化す。しかし、田村一家は自宅に残り、最後の晩餐(ばんさん)を開く。冴子は開戦直前に再び長い航海に出ていた高野へ、覚えたてのアマチュア無線で最後のモールス通信を行い、洋上の高野もそれに応える。「サエコ・サエコ・コウフクダッタネ」「タカノサン・アリガトウ」。また、夕陽を前にして茂吉は叫ぶ。「母ちゃんには別荘を建ててやるんだ! 冴子には凄い婚礼をさせてやるんだ! 春江はスチュワーデスになるんだ! 一郎は大学に行かせてやるんだ! 俺の行けなかった大学に……!!」

その夜、東京は核の閃光に包まれて壊滅し、溶岩が流れる火の海と化した廃墟には黒い雨が降り注ぐ。翌朝、洋上の高野たちは自分たちにも残留放射能による死が訪れることを覚悟のうえで、東京へ帰ることを決意するのだった。

かつて東京だった場所に生じた巨大なクレーターを背に、以下のメッセージを大写しにして物語は幕を閉じる。

「この物語は すべて 架空のものであるが 明日起る 現実かも 知れない」「しかし それを 押しとめよう! われら すべてが 手をつないで…」「まだ それが 起らない中(うち)に」
登場兵器
連邦国側
無人戦車
[19]
装軌式の車体に、12連装の戦術核搭載ミサイル発射台を装備する[19]。また、回転式のマストがあり、V-107ヘリコプターから遠隔操作される。38度線で同盟国側の砲台を攻撃するが、同盟国側の攻撃機の反撃によって指揮ヘリコプターもろとも全滅する。

攻撃シーンは後に『ノストラダムスの大予言』(1974年)に流用されている。

核ミサイル
連邦国側のICBMで、核弾頭を装備。運搬車のトレーラーはそのまま垂直に直立し、ミサイルの発射台として使用できるほか、C-130による空輸もできる[19][20]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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