世界大学ランキング
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世界大学ランキング(せかいだいがくランキング)とは、高等教育機関をさまざまな指標によって順位付けした国際的な大学ランキング。高等教育機関のランキングには、一元的な序列のランキングから多元的なランキング、または特定項目を羅列しただけのものまでさまざまなものがある。その中で世界の大学を対象としたランキングが作られるようになったのは、グローバル化によって、国境を越えた人の移動の増加によるものと考えられている。大学ランキングは、雑誌新聞個人、および政府企業や大学、第三者機関などさまざまな機関が作成し、ランキングを発表している。

特に有名なものとして、「QS世界大学ランキング」(QS World)、「THE世界大学ランキング」(THE World)、「世界大学学術ランキング」(ARWU World) が挙げられる。その他に、「CWTSライデン・ランキング(英語版)[1]」(CWTS World)、「CWUR世界大学ランキング」(CWUR World)、「USNWR Best Global Universitiesランキング(英語版)[2]」(USNWR Global)がよく用いられる。
歴史

高等教育ランキングは、1967年に始まった『ゴーマン・レポート(英:Gourman Report)』が最初の大学ランキングと言われている。「ゴーマン・レポート」は1967年以降も何年ごとかに発表しており、アメリカ・カナダおよび世界の主要大学が対象となり、大学と大学院版が発表されている。しかし、各大学の職員からの内部資料、大学に関する公的資料、実業界の有力者の意見などを参考にしているとされているものの、評価方法が公表されておらず、評価方法についての問題やデータの正確性の問題など懐疑的な見方をされることも多かった。そこで、1983年から始まった「USニューズ&ワールド・レポート(英:U.S.News & World Report)」による大学ランキング『アメリカのベスト・カレッジ(America’s Best Colleges)』が高等教育ランキングの始まりだとされることもある[3]。しかし、USニューズ&ワールド・レポートのものはアメリカ国内の大学限定で、他に作られたランキングもビジネス・スクールのランキングといった特定の分野や、イギリスやアメリカといった特定の地域のみが対象となるランキングで、世界中の大学を対象としたランキングは「ゴーマン・レポート」がほとんど唯一の資料といえた。日本では、1984年に出版された『大学評価の研究』が初めてのもの。

「ゴーマン・レポート」は1998年以降、改訂版が公表されておらず国際的な大学ランキングも作られていなかったが、2003年になって、江沢民総書記が母校の上海交通大学に世界の大学と中国国内の大学を比較して国家投資をするために作った『世界大学学術ランキング(英:Academic Ranking of World Universities)』が公表されるようになると、2004年には、イギリス「タイムズ紙」の別冊「タイムズ・ハイアー・エデュケーション(英:TIMES Higher Education Supplement)」による『THE世界大学ランキング』、2006年にはアメリカ「ニューズウィーク紙」による『大学ランキング世界トップ100』が発表されるなど世界中の大学を対象としたランキングが次々と作られるようになった。現在、大学ランキングは20カ国以上の国で定期的にランキングが作られ、国を越えたグローバルなランキングも増えている。世界の国を対象としたランキングが増えている原因に、グローバル化が進んだことによる研究者や学生の流動化、特に世界的な留学生の増加によるニーズが挙げられる。1975年に世界の留学生人数はおよそ80万人だったが、1990年には130万人、2000年で180万人になり、2010年では580万人と言われている。こういった状況から指標としてランキングが求められ、国際的な大学ランキングが作られているものと考えられている[4]。また、ヨーロッパで1999年に採択されたボローニャ宣言、そしてユネスコが2005年に出した『国境を越えて提供される高等教育の質保証に関するガイドライン』によって高等教育機関の質の保証、国の枠組みを超えて一定以上の質が保たれることが求められたことから、国際的なランキングに注目が集まった。

正確な情報に基づいた国際的な大学ランキングは、各大学や国、消費者のための情報ツールとしての役割を担い、高等教育機関間の競争を促すなど、高等教育機関の質の向上にも役立つが、それにはデータ収集の手法や評価指標などランキング製作者の質が問われることになる。そこで2004年に、ユネスコ・ヨーロッパ高等教育センターと高等教育政策研究所によって、国際ランキング専門家グループ (IREG) が結成され、2006年にベルリン原則?高等教育機関のランキングに関するベルリン原則?がつくられた。
IREG-世界大学ランキング審査


世界大学ランキングの質の評価

ランキングの透明性の向上

ランキングの質の向上

信頼できるランキングを認識する手段の提供

高等教育機関のランキングに関するベルリン原則

2006年に、IREG(国際ランキング専門家グループ)[注 1] が大学ランキングの質とグッド・プラクティスに関する原則(ベルリン原則)を策定。大学ランキングを編集する際の実施・作成に関する枠組16項目[5]

ランキングの目的・目標

高等教育のインプット、プロセス、アウトプットの多様な評価手法のひとつであること。ランキングは、高等教育についての比較可能な情報を与え、理解を高めるが、高等教育がどのようなものであり、どのようなことを行うかについて評価をするための主要な手法となるべきではない。ランキングは、市場に基盤をおく見方を示し、そのことによって、政府、アクレディテーション団体、そして独立した評価機関の業務を補完することができる。

ランキングの目的及び、誰を対象としたランキングであるかを、明確にすること。ランキングはその目的に適切に沿うように設計されなければならない。ある特定の目的を満たしたり、ある特定のグループに対して情報を与えるように設計された諸指標は、他の目的やグループに対しては、適切ではないかもしれない。

高等教育機関の多様性を認識し、各高等教育機関の多様なミッション・目標を考慮すること。例えば、研究志向の高等教育機関の質を測る方法は、高等教育が行き渡っていないコミュニティに対して広範なアクセスを提供する高等教育機関の質を測る方法とは、非常に異なったものになる。ランク付けされる高等教育機関と、ランキングのプロセスに対して情報を提供している専門家に対しては、頻繁に相談がなされるべきである。

ランキングに用いた情報源の範囲及びそれぞれの情報源が発しているメッセージを明確に提示すること。ランキングの結果が適切かどうかは、その情報を享受する相手と、その情報の出所(例えば、データベース、学生、教授、雇用者など)によって決まる。良い実践のあり方としては、ランキングに含まれる高等教育機関に対してより完全な理解を得るために、これらの情報源から提供される様々な見方を組み合わせることが考えられる。

ランキングが行われている各教育システムについての、言語・文化・経済及び歴史的な文脈を特定すること。特に国際ランキングは、偏った見方となる可能性を意識し、ランキングの目的を明示すべきである。全ての国や教育システムが、何が高等教育機関の「質」を構成するのかに関して同じ価値や信念を共有しているわけではないし、そのような比較を強制するためのランキングを考案すべきではない。


指標のデザインと重み付け

ランキング作成に用いる手法に関して透明性をもつこと。ランキング作成に用いる手法の選択は、明確で、曖昧さをもたないものであるべきである。ここでは、データの出所だけではなく、諸指標の算定の仕方についても透明性を確保すべきである。

指標は、関連性と妥当性を考慮して、選ぶこと。データの選択は、そのデータが利用可能かどうかではなく、それぞれの尺度がもつ、高等教育の質及び学術上や機関の強さを表す能力があるかの判断に基づいて行うべきである。それぞれの尺度がなぜ採用されたのか、また、それらの尺度を何に表そうとしているのかを明確にしなければならない。

可能であるときは常に、インプットよりもアウトカム(事後的な効果)を優先して測定すること。インプットに関するデータは、すでに定められた体制や秩序の全般的状況を反映するのに適しており、利用可能であることが多い。アウトカムについての尺度は、高等教育機関やその教育プログラムの位置づけや質についてのより正確な評価を示す。ランキングの編集者は、適切なバランスを確実にとるようにすべきである。

(使用される)多様な指標に対しての重み付けを明示し、変更を制限すること。重み付けを変更すると、高等教育機関やそのプログラムの位置付けが変化したときに、それが本当の違いを表しているのか、ランキングの手法が変更されたために起きた変化なのかを消費者が見分けることが難しくなる。


データの収集と処理

この「原則」に示された倫理基準とグッド・プラクティスの勧告に対して適切な注意を払うこと。各ランキングの信頼性を保証するため、データの収集・使用や実地訪問を行う責任者は、可能な限り客観的で公平であるべきである。

可能であるときはいつも、監査され、検証可能なデータを使用すべきである。このようなデータは、高等教育機関によって実際受け入れられてきたし、高等教育機関の間での比較が可能であり、互換性もあるなどの利点がある。

科学的なデータ収集としての適切な手続きを通じて収集されたデータを含むこと。データの収集源である学生・教員その他のパートナーが代表性をもたなかったり歪曲されたサンプルであった場合、そのデータが高等教育機関やその教育プログラムを正確に代表していない危険があり、そのようなデータは取り除かれるべきである。

質保証の評価基準をランキングのプロセス自体に適用すること。ランキングのプロセスは、高等教育機関の評価に用いられる専門的技術に留意すべきであり、また、ランキング自体の評価にこの知識を用いるべきである。ランキングは、手法の開発にあたって絶え間なくこの専門的技術を利用する、ラーニング(学習する)・システムであるべきである。

ランキングの信頼性を高める組織分析の手法(organizational measures)を適用すること。この手法の実施にあたっては、望ましくは国際的な、アドバイスや指導を行う組織を関与させることが可能である。


ランキング結果の呈示

ランキングの開発に用いられるすべての要素について、消費者が明確に理解できるようにすること。また、ランキングをどのように表示するかを消費者が選択できるようにすること。これにより、ランキングの利用者は、高等教育機関やその教育プログラムのランキングに用いられる諸指標についての理解が深まるだろう。さらに、利用者がこれらの指標の重み付けを自分で決める、何らかの機会があるべきである。

オリジナル・データの誤りを除去するか、または減少させる方法を集積すること、また、誤り・過失を修正する方法を組織化し、公表すること。高等教育機関と社会は、発生した誤りについて知らされるべきである。

主要な世界大学ランキング


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