世界を騙しつづける科学者たち
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世界を騙しつづける科学者たち
Merchants of Doubt: How a Handful of Scientists Obscured the Truth on Issues from Tobacco Smoke to Global Warming
著者
ナオミ・オレスケス、エリック・M・コンウェイ
訳者福岡洋一
発行日2010年5月(英語版)
2011年11月(日本語版)
発行元ブルームズベリー・プレス(英語版)(英語版)
楽工社(日本語版)
ジャンルノンフィクション
アメリカ合衆国
言語英語
形態文学作品
公式サイトhttps://www.merchantsofdoubt.org/
コード.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 1596916109(英語版)
ISBN 4903063526(日本語版上巻)
ISBN 4903063534(日本語版下巻)

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『世界を騙しつづける科学者たち』(せかいをだましつづけるかがくしゃたち、原題: Merchants of Doubt[† 1])は、アメリカの科学史家ナオミ・オレスケスとエリック・M・コンウェイによる2010年のノンフィクション本である。日本語版は2011年に楽工社から出された。本書では地球温暖化に関する論争と、それ以前の喫煙酸性雨DDTオゾンホールなどに関する科学的論争に共通点があるという指摘がなされている。著者らによると、これらすべての論争において、規制に反対する側は、科学的なコンセンサスが成立した後になっても疑念を喚起して混乱を作り出すことで「論争を終わらせずにおく」という基本戦術を取った[1]。特に、フレッド・サイツとフレッド・シンガー(英語版)をはじめとする反主流論者(英語版)の科学者が保守系シンクタンクや民間企業と結託して多くの現代的問題に関する科学的コンセンサスを攻撃してきたとされた[2]

本書は題材となった人物から批判を受けているが、ほとんどのレビュアーには好意的に受け止められた。あるレビュアーは、本書は徹底的な調査によって裏付けられており、2010年の最も重要な書籍に数えられると評した。別のレビュアーは本書を科学関連書籍の年間ベストに選んだ[3]。2014年にはロバート・ケナー監督により『世界を欺く商人たち(原題: Merchants of Doubt )』のタイトルで映画化された[4]
テーマフレッド・シンガー(2011年)。温室効果ガス規制反対派の代表格だった。

オレスケスとコンウェイは、保守的な政治傾向を持つ一握りの科学者が特定の産業界と強く結びついて「論争中の問題に関する議論で不適正な役割を果たした」と書いた。またそれにより引き起こされた「意図的な混乱」が世論や政策決定に影響したといっている[5]

本書の原題 Merchants of Doubt(疑念の商人たち)は、ウィリアム・ニーレンバーグ(英語版)、フレデリック・サイツ、フレッド・シンガーを筆頭とする、アメリカを中心とする科学界のキーパーソンたちを批判して呼んだものである。この3人はいずれも物理学者であり、シンガーは宇宙(英語版)と人工衛星の研究に、ニーレンバーグとサイツは原子爆弾の開発に携わっていたが[6]、それぞれ専門の第一線から退いた後に酸性雨喫煙地球温暖化農薬などの分野で活動を行い始めた。本書はこれらの科学者が、喫煙の有害性、酸性雨の影響、オゾンホールの存在、人間活動に由来する気候変動の存在など各分野の科学的コンセンサスに異論を唱えてその影響力を削いだと主張している[5]。サイツとシンガーは米国のヘリテージ財団、企業競争研究所(英語版)、ジョージ・C・マーシャル研究所(英語版)のような諸団体に関与している。これらの団体は企業や保守系財団から資金提供を受けて米国市民に対する様々な国家干渉(英語版)や規制に対抗してきた。本書はそれらのケースで共通して取られた戦術を「科学の信用を傷つけ、虚偽の情報をまき散らし、混乱を広げ、疑念を喚起させる」と総括した[7]

本書によれば、サイツ、シンガー、ニーレンバーグ、ロバート・ジャストロウ(英語版)らはいずれも激烈な反共主義者であり、政府による規制を社会主義共産主義への第一歩とみなしていた。ソビエト連邦崩壊すると、彼らは自由市場資本主義を脅かす新たな脅威を探し求め、環境保護主義にそれを見出したのだという。サイツらは環境問題への過剰な反応が政府による強引な市場介入や生活の侵害を呼び込むことを恐れていた[8]。オレスケスとコンウェイは、議論が長引くほどこれらの問題は悪化し、保守派や市場原理主義者が最も恐れる厳しい措置の必要性が高まると述べている。すなわちサイツらは科学的証拠を否認し、引き伸ばし戦略に加担し、それによって彼ら自身が恐れていた状況を招くことになった[8]

著者らは偽りの真実と本物の科学をメディアが区別できるかについて強い懸念を示している(科学の名において検閲を行うべきだとまでは主張していないが)[9]。一方に偏らず両者の主張を伝えるというジャーナリズムの原則は、著者らによると反主流論者のミスリードを助長することになった。オレスケスとコンウェイはこう述べている。「少数の人々でも大きな負の影響を作り出すことができる。とりわけ彼らが組織され、強い意図を持ち、権力に近い場合には」[7]

本書の最も重要な結論は、反主流論者の「専門家」たちがイデオロギー的な動機によって規制論を支える科学の信用を失墜させようとしなかったなら、政策決定はもっと早く進んだはずだということである[9]。同様の結論はオーストラリアの学者クライブ・ハミルトンによる先行書 Requiem for a Species(英語版)(2010年)ですでに、特にサイツとニーレンバーグについて引き出されていた。
反響

ほとんどの批評家は本書を「熱烈に」評価した[10]

フィリップ・キッチャーは『サイエンス』誌で著者オレスケスとコンウェイを「傑出した歴史家」と呼び[5]、本書を「心が動かされる重要な研究」と評した。本書の論調はニーレンバーグ、サイツ、シンガーに対して厳しすぎるようにも見えるが、キッチャーはそれが「ロジャー・レヴェル(英語版)やベン・サンター(英語版)のような卓越した気候学者がマスコミによって利用され、不当な攻撃を受けた経緯を詳らかにしたことで正当化される」と述べている[5]


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