与論島方言
[Wikipedia|▼Menu]

与論島方言
与論語
ユンヌフトゥバ
話される国
日本
地域与論島鹿児島県奄美諸島
話者数950 (2004年) [1]
言語系統日琉語族

琉球語派

北琉球語群

奄美語

与論島方言




言語コード
ISO 639-3yox
Glottologyoro1243[2]
テンプレートを表示

与論島方言(よろんじまほうげん)または与論方言(よろんほうげん)は鹿児島県奄美諸島与論島で話される方言言語)である。琉球諸語(琉球語、琉球方言)に属す。現地では「ユンヌフトゥバ」と呼ばれる。エスノローグでは与論語(よろんご)(Yoron language) としている。
分類的位置

与論島方言の分類的位置は議論があり、奄美方言(奄美語)に属するとする説[3][4]、奄美方言の中でも沖永良部島方言喜界島方言南部と共に「南奄美方言」[5]に属するとする説[6][7]沖永良部島方言沖縄北部方言と共に沖永良部与論沖縄北部諸方言に属するとする説[8]がある。エスノローグでは中央沖縄語(沖縄方言)・沖永良部語(沖永良部島方言)・国頭語(沖縄北部方言)とともに「南奄美-沖縄語群」と括っている[9]

与論島方言は上述のように分類が定まらないことがある。この方言の音韻は奄美・徳之島と異なっており沖縄方言に近い一方で、終止形を2つ有するなどの点でその文法は奄美方言との共通点を持っているという[10]
下位分類

与論島内には9つの集落があるが[11]、その方言差は小さい。地元の研究者である菊千代によれば、与論島方言は以下のように分類できるという[12]

茶花

朝戸、城、立長、叶、那間

麦屋西区、麦屋東区、古里

茶花は与論島西部の地域で港や役場などがあり、麦屋と古里は島の反対側に位置する。北岸?島中央部?南岸にかけて広く、朝戸・城・立長・叶・那間方言が分布するということになる。
音韻・音声
音韻・音声

与論島方言には以下の音素が認められる[13]

子音音素/p, b, m, w, t, d, n, s, ?, c, ?, j, k, g, ?, h/

短母音音素/a, i, u/

長母音音素/a?, e?, i?, u?, o?/

特殊音/N, Q/

子音表両唇音歯茎音硬口蓋音軟口蓋音声門音モーラ
鼻音mnQ

N
閉鎖音pbtdk??
破擦音c?
摩擦音sh
接近音wj
弾き音?

注釈

/p/の音声は、[p]のほか、無声両唇摩擦音[?]で発音されることもある[13]

子音がない/?/こともある。声門音/h/ および /?/と対立する。

/h/は /i/の前で無声硬口蓋摩擦音[c]、/u/の前で[?]となる[13]

/si/、/se/はそれぞれ [?i](日本語のシと同じ)、[se]?[?e](セ?シェ)となる[13]

/c/、/?/の音声はそれぞれ[t??]、[d??]である[13]

/N/と/Q/ は成音節要素である。(それぞれ鼻音と促音である)

日本語共通語との対応

主な対応のみリストアップする。

共通語の/e/は/i/に合流した
[13]

共通語の/o/は /u/に合流した[13]

与論島方言の/e?/は共通語の/ai/、/ae/に対応する[13]

与論島方言の/o?/は共通語の/aw/、/au/、/ao/に対応する。例えば、?o?(粟)、so?(竿)など(古里・那間・叶地区の例)[13]

共通語で/h/になったものについて、与論島方言は /p/を保存している[13]

与論島方言の/d/は、共通語の/d/と/z/に対応している[13]

共通語の/ci/(チ)と/cu/(ツ)はどちらも与論島方言で/ci/に合流している[13]

共通語の/si/、/su/、/se/はどれも与論島方言で/si/に合流している[14]

共通語の/ka/、/ke/、/ko/は、与論島では子音がhになり、それぞれ/ha/、/hi/、/hu/が対応している。ただし少数の語に対して共通語/ka/に/ka/、/ko/に/ku/が対応しているほか、共通語の/ke/に対し麦屋では/si/になる。/ki/と/ku/はそれぞれ/ki/と/ku/が対応している[13]

共通語の/ni/は与論島方言では/mi/が対応している[15]

与論島方言の/r/は母音と/i/に囲まれていると脱落する。

共通語の/o/のうち古い時代の/wo/に対応する部分は、麦屋では/hu/になる[16]

アクセント

与論島方言のアクセントは、ピッチの上昇位置を弁別する体系で、昇り核/○/によって弁別される。また語の拍数(n)が増えるに従い型の数(Pn)も増える多型アクセントである。麦屋東区方言が島内で最も多いPn=n+1の型の数を持ち、体系も安定している。4拍以下の語で東区方言の体系を示すと以下の通りである[17]

麦屋東区方言のアクセント体系[17]昇り核の位置1音節名詞
(2拍)2拍名詞3拍名詞4拍名詞
0(無核)/pa?/(葉)/mi?i/(水)/tatami/(畳)/mucigumi/(餅米)
-1(語末核)/pa?/(歯)/jama/(山)/pasaN/(鋏)/haNnjai/(雷)
-2/pa?/(外)/nabi/(鍋)/hatana/(刀)/purusiki/(風呂敷)
-3 /macigi/(松)/hubaNka/(叔母)
-4 /karatai/(唐竹)

東区方言の場合、拍音素(N、?)は語末かつ文末にあるときのみ、昇り核を担うことができる[18]。すなわち語中の拍音素に昇り核があることはない。またその後に他の要素が続くときは、核が1拍後ろへずれる[18]。また拍音素に限らず、語末の昇り核の後に2拍以上の付属語(助詞kara「から」等)が付くときや、付属語をつけずに次の文節が続く場合にも、核が1拍後ろへずれる[18]。ただし/aQca?/「明日」などが副詞的に使われる場合は核は動かない[18]

一方、茶花方言では東区方言の語末核(-1)が消失して無核(0)型となる傾向にあり、Pn=nの体系に近づきつつある。東区と茶花以外の地域ではその中間的な様相を示す[17]
文法
動詞

動詞の活用を以下に示す[10]

与論方言の動詞活用例語未然形連用形接続形終止形1終止形2連体形条件形
1型書くkak-akak-ikat??-ikak-juNkak-juikak-jurukak-i
2型助けるta?ikir-ata?ikir-ita?ikit-ita?ik-juNta?ik-juita?ik-juruta?ikir-i
3型見るm-jam-imit??-im-juNm-juim-ju?rum-i?
4型思うm-a(?)mu-imu?t-imu?-juNmu?-juimu?-jurumu-i
5型使うt??iQk-ot??iQk-e?t??iQko?t-it??iQk-eNt??iQk-eit??iQk-e?rut??iQk-e?

特徴的なのは終止形が二つある点である。終止形1(ン終止形)は話者の意志や主観を表現し、終止形2(イ終止形)は話者が目撃したことや、現に身体的に起きていること・感情を客観的に表現するときに使われる。与論方言ではこの使い分けを義務的に行わなければならない。
「もう宿題は済んだか」と聞かれて「これからするよ」と答える場合[19]


namakara sjuN. 可能。

namakara sjui. 不可能。

「見て、あそこから太郎が来る」と言う場合。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:31 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef