不正乗車
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この項目では、旅客輸送において旅客が定められた運賃を不正に免れる行為について説明しています。有料道路の不正通行については「不正通行」をご覧ください。

不正乗車(ふせいじょうしゃ)とは、鉄道を初めとする旅客輸送旅客が、その乗車において、定められた乗車券類を所持せずに運賃・料金の支払いを不正に免れようとする行為である。本記事ではバスタクシーへの不正乗車のほか、車両ではないが航空機旅客機)への不正搭乗についても記述する。
鉄道での不正乗車不正乗車の防止を呼びかける、東日本旅客鉄道(JR東日本)の張り紙モスクワ地下鉄の駅で、自動改札を乗り越えて突破する人(2015年
主な類型
自動改札機の強行突破

自動改札機のゲートを押し通ったり、飛び越えたりする[1]
中間無札

区間の連続しない2枚以上の乗車券類を使用して、その間(乗車券を持っていない)の区間を乗車した場合、これは不正乗車に当たる。これを中間無札と呼ぶ[2]。敬老パスや福祉乗車証(後述)を併用する事例もみられる。

一般的にはキセル乗車と呼ばれることが多い。この意味の由来は、両端が金属、中央がでできているキセル(煙管)とかけて、「両端だけを使っている」ということに掛けている[3]。これに対して、乗車券代節約など何らかの理由で、乗車券を乗車区間の途中で分割して2枚にした場合であっても、各々の乗車券の有効区間が連続していれば、不正乗車ではない。もし仮に各々の乗車券の有効区間の一部に重複箇所が存在しても、不正乗車とはされない。これらのように、2枚以上の乗車券を使用して乗車しても、不正乗車とは限らない。これと似た例として、フリー乗車区間が設定された乗車券のフリー乗車区間外から、そのフリー乗車区間の端の駅までの乗車券を別途購入した上で、フリー乗車区間内で下車した場合も、特別な条件が設定されていない限り、不正乗車ではない。

有料道路不正通行と同様に、途中の駅で乗車券を交換し、乗車駅に近い駅で下車するという手法も不正乗車となる。
経路外乗車

鉄道の運賃は実際に乗車した経路の通りに計算されることが原則であり[4]、乗車券に表記のない経路に無断で乗車すると、不正乗車として乗車券が無効となる[5]。区間外乗車とも呼ばれる[2]

ただし、大都市近郊区間(同一の大都市近郊区間内相互発着)や選択乗車経路特定区間など、乗車券に表記のある経路以外に乗車可能な例外もあるほか、SuicaなどIC乗車カードにおいては最安運賃で自動計算する場合もある[6][7]
折り返し乗車

いったん目的地と逆方向の駅に行って折り返し、そのまま目的地に行く行為である。折り返す区間の運賃を払わなければ特例(分岐駅を通過する列車に乗車する場合など)で認められている場合を除き、不正乗車となる。折返乗車をする理由としては、目的地までの区間外の駅にある駅ナカ施設へ行く、ラッシュ時に着席するために列車の始発駅あるいはその近くの乗客がまだ少ない駅まで行って折り返す、目的地や優等列車の通過駅から逆方向にある優等列車の停車駅に行って折り返し、本来乗る予定の列車を途中で通過して追い越し、目的地に早く到着したりするなどがある。

終着駅や始発駅手前駅の通勤定期券利用者(通学定期券は自宅と学校最寄駅から最短・最速・最安のいずれかに該当する区間しか買えないので伸ばすことが出来ない)はそこまでの定期券を所持していることが多いが、東急東横線横浜駅からの乗客が、朝ラッシュ時、馬車道駅みなとみらい駅で折り返して渋谷駅方面へ向かう行為が指摘された例があり、横浜高速鉄道は啓発ポスター掲示や監視を行っている[8]
日本の鉄道における正当な乗車券の所持

日本の鉄道では利用者はICカードや乗車券を予め購入し、出発駅で改札処理を受け、到着駅で改札または集札処理を受けて駅の外に出る運賃収受方式が一般的である[9]。日本の公共交通機関では信用乗車方式が採られている例は極めて少なく、乗り越し精算が認められていることが多い。これは、ヨーロッパなどで見られる懲罰的損害賠償日本の最高裁判所が否定しているためである。路線バス路面電車では降車時の支払いが多く、目的地までの乗車券を持っていなかったとしても到着地で精算すれば必ずしも不正乗車には当たらない[9]。これらにおいて乗車地は乗車整理券で証明する形式で、コミュニティバスや中心街区間・大都市圏の路線バスでは一律料金も多い(100円バスなど)。
欧米の鉄道における正当な乗車券の所持
信用乗車方式

ヨーロッパの鉄道では、車内改札に重点を置き、利用客は発券された切符に日付が印字されていなければ、予め駅等に備え付けられた刻印機で日付を刻印するシステムが一般的にとられている[10]。ヨーロッパの鉄道では信用乗車方式が採用されており、乗車駅から降車駅までの正確な乗車券を購入することを義務付け、乗り越し精算を認めていない交通機関も多い。そのため降車駅までの正確な乗車券を提示できなければ不正乗車とみなされうる[9]。また購入した切符への日付の打刻を忘れている場合も不正乗車とみなされることがある[11]
オーストリア

オーストリアの公共交通機関では改札口又は車内での乗車券への刻印が義務付けられており、検札員の確認時に誤った区間の乗車券を持っていると罰金が科せられる[12]
ロンドン地下鉄

ロンドン地下鉄では下車時の乗り越し精算の制度はなく確実に目的地までの乗車券を購入することとされており、乗り越すと罰金が科せられる仕組みとなっている[13]
その他不正乗車となる類型
偽造乗車券による不正乗車

有人改札では定期券をカラーコピーし、原券を払戻して使用していた事例がある。カラーコピーするとホログラムが浮かんだり、真っ黒または真っ白になったりする紙を鉄道事業者側が使用したことでカラーコピー使用は減ったが、金券ショップでは偽造券が混ざっていることがある。また、従業員・関係者が原紙を持出し、コピーして使用すると言う手口も発生している[14]。2017年11月にはジャパンレールパスの偽造券を使用したオーストラリア人が逮捕された[15]。2020年12月には青春18きっぷをパソコンで偽造して使用した国土交通省職員が逮捕されている[16]
入場券等を利用した不正乗車

入場券や初乗り運賃で入場して列車に乗車し、目的駅で協力者と合流、協力者からその駅の入場券を受け取り出場するという不正乗車があり、一部では「MK」とも呼ばれている。この場合、不正乗車の協力者が目的地側におり、協力者と事前に申し合わせている[17]

2013年3月には日本旅行の幹部社員2人が静岡駅東海道新幹線改札口で、出場することで特急券が無効となるのを防ぐために、迎えの者が事前に用意していた入場券を不正使用したとして静岡中央警察署に逮捕された[18]不起訴処分[19])。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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