不敬罪
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「不敬」はこの項目へ転送されています。「不敬」の語義については、ウィクショナリーの「不敬」の項目をご覧ください。
ジョージ3世の真影に放屁するジョン・ブル(1798年)

不敬罪(ふけいざい、Lese-majeste、lese-majesty)は、国王皇帝などの君主王族皇族の一族と宗教聖地墳墓などに対し、名誉や尊厳を害するなど、不敬とされる行為の実行により成立する犯罪

日本国内においては、1947年(昭和22年)の刑法改正により、天皇皇后および皇族に対する不敬罪は廃止された。
概要

王室などに対する不敬罪は、絶対君主制などの主権者たる君主国家の存立を同一視する体制において定められることが多い。現在では、法の下の平等[注 1]思想・良心の自由表現の自由の観点から、君主制を採用している国家でも、刑罰が廃止・失効している場合がある。サウジアラビアなどのイスラム諸国デンマーク[1]スペイン[2]タイ王国カンボジア[3]は、現在も不敬罪が存在する数少ない例である。
現行法不敬罪が現行法の国
ヨーロッパ
ベルギー

2021年10月28日、ベルギー憲法裁判所は、1847年に制定の君主の侮蔑を罰金もしくは禁固刑に処する法律が、ベルギー憲法および欧州人権条約で保証されている表現の自由の権利侵害だという判決を下した[4]
デンマーク

デンマークでは、君主は通常の名誉毀損罪(最大4か月の懲役を定めるデンマーク刑法第267条)によって保護されており、現行の君主が名誉毀損の対象である場合、同法第115条は通常の刑罰を2倍にすることを定めている。王配王妃王太后王太子が対象の場合、罰金を50%増額することがある[5]
オランダ

オランダでは、国王、王妃、王位継承者とその配属者、摂政に対する不敬罪が2020年1月1日をもって撤廃された[6]。国王、王室の配偶者、法定相続人またはその配偶者、または摂政を侮辱することは、公務員と同じレベルで公務員として罰せられるようになった。
スペイン

刑法第490条・第491条は不敬罪を規定している。 国王、王妃、その先祖、またはその子孫を中傷、侮辱した者は、最高2年間の禁固刑に処されうる[7]
中東
サウジアラビア

サウジアラビアでは国王や王族のみならず、預言者ムハンマドを侮辱した場合でも不敬罪に問われる。2012年2月、サウジアラビア国内で若手ジャーナリストのハムザ・カーシュガリー(アラビア語版、英語版)がムハンマドに対して「私はあなたについて好きなところも嫌いなところもある。それに理解できない面もある」「私はあなたのために祈りを捧げない」とTwitterでつぶやいたところ、預言者ムハンマドを冒涜したとして国内において死刑を求める声が高まった。

彼はマレーシア亡命するために出国したものの、クアラルンプール国際空港で身柄を拘束された[8]。その後約2年間にわたって拘留されたが、2013年10月に突如釈放された[9]
アフリカ
モロッコ
アジア
タイラーマ9世の肖像に拝礼するタイの政府高官

タイ王国における不敬罪は、刑法第112条によって定められている。国王、王妃、王位継承者あるいは摂政に対して中傷する、侮辱するあるいは敵意をあらわにする者は、何人も三年から十五年の禁固刑に処するものとする[10]。 ? 刑法 第112条

1956年制定の当初は、刑期を「7年以下」と規定していたが[11]、1978年のクーデター後、「国家統治改革団」の命令41号によって下限・上限が広げられ重罰化された[12]

この条項に書かれている行為を行うことは、一般に「ご威光を侮辱する (????????????????????) 」と表現され、「ご威光を侮辱する罪(すなわち「不敬罪」、?????????????????????????????)」とされる。また、外国の君主、妃、王配(皇配)あるいは元首を侮辱した場合も、別の条項によって罰せられる[13]

「ご威光を侮辱する」の範囲は明確ではなく、誰でも告発でき「公然と敬意を表さないこと」をも含めるか否かで議論がある。2006年のクーデターの反対運動を行っていた政治活動家のチョーティサック・オーンスーンは[14]、同様に映画館でタイの王室歌が流れた際に起立しなかったため、不敬罪で2007年に起訴されたが、その際に表敬しないことは有罪ではないという旨の主張を行い[15]、その友人らはチョーティサックの主張を受けて無罪を主張する署名活動を行っている[16]

2009年1月には、2300ものタイ王国にあるウェブサイトが王室侮辱の廉で、タイ王国情報技術通信省により閉鎖させられた[17]。同年8月にはタクシン派組織「反独裁民主戦線」の幹部、ダラニー・チャーンチェンシラパクンが集会における国王批判(表敬をしなかったという理由ではない)で禁固18年の刑を宣告され控訴している[18]

2015年12月には、ラーマ9世の愛犬トーンデーンFacebookで中傷したとして、27歳の男性が逮捕され[19]、また「プラチャタイ」の電子掲示板に書き込まれた王室批判に対処しなかった廉で、ウェブサイト担当管理者が執行猶予つきの有罪判決を受けた[20]

一方でマグサイサイ賞受賞者で、弁護士のトーンバイ・トーンパオは、表敬するように要求があった場合に表敬しないことは罪であると主張し、過去には王室歌が流れたときに起立しなかったチュラーロンコーン大学の学生が、2年間の禁固刑を受けていることを指摘している[21]

タイの人権擁護団体によると、2014年のクーデターから2016年7月15日までの約2年間では68人が不敬罪で摘発、58人が反乱罪に問われたとしている[22]

首相を務めたアピシット・ウェーチャチーワは「過去の事件で政治的に不敬罪が濫用されていた」と、懸念を示している。2020年に行われた学生デモでは、刑法第112条の廃止を要求するものも見られるようになった[23]
カンボジア

カンボジア憲法は国王を「国家の統合と永続の象徴」などと規定しており、フン・セン政権が不敬罪の新設を目指してきた[24]。国際人権団体などから「露骨な独裁主義へと向かっている」と批判される中、2018年2月に成立[3]。同年5月にはノロドム・シハモニ国王に対する不敬容疑で、中部コンポントム州の小学校校長が逮捕された[3]。カンボジアに不敬罪が成立してから初の適用となった[3]
旧法
日本

皇室に関する罪の件数(1924-1941年)[25][26][27][28]西暦年元号年認知件数[注 2]検挙件数


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