不妊
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「不妊治療」はこの項目へ転送されています。正反対の用法については「不妊手術」をご覧ください。

不妊(ふにん、英語: Infertility)とは、自然な状態で妊娠に至れない状態。妊娠自体はするものの妊娠を一定期間以上維持することが出来ず、流産死産を繰り返す状態については「不育症」を参照。

この項では主に加齢による女性の妊孕力(妊娠能力)低下、又は疾患が原因の不妊について述べる。
概説

妊孕力の正常なカップルでは、排卵期に一回の膣内射精で妊娠する確率が20代女性では約50%である。更に、正常な生殖能力を持つ男性が年代ごとの女性に1年間腟内射精した際の妊娠率は20歳?24歳86%、25歳?29歳78%、30歳?34歳63%、35歳?39歳52%、40歳?44歳36%、45歳?49歳5%、50歳以上0%となる。そのため、WHO日本産科婦人科学会ともに、不妊を「妊娠を望む男女が避妊をせずに性行為をしているのに1年以内に妊娠に至れない状態」と定義していて、妊娠希望のカップルの10-15%に見られる。

1生理周期当たりの妊娠率は30歳が25%?30%、35歳18%、40歳5%、45歳1%である。つまり、妊活中で避妊しなかった40歳の女性の一回生理期間中の妊娠率は僅か5%であるが、1年で36%の人は不育症・遺伝子疾患等の可能性もあるが妊娠自体はする。逆に1年間も避妊していなくても約7割の40歳妊活女性は妊活を断念せざるを得ない現実であることを意味する。アメリカの生殖医学会では、更に女性の年齢が35歳以上の場合には、膣内射精しているのに妊娠しないことが半年を過ぎた時点で検査することを推奨している[1][2][3][4][5][6]。更に35歳以上の妊娠は「ハイリスク妊娠」であり、国際産婦人科連合(FIGO)では35歳以上の初産、または40歳以上の経産婦の出産を「高齢出産」と定義している[7]。健康的な女性でも40歳で閉経することもあり、逆に40歳以前に閉経した場合は「早期閉経」とされる。卵子完全消失した早発卵巣不全、卵子が子宮内に存在しているが排卵がされないゴナドトロピン抵抗性卵巣症候群の二種類がある。30歳未満の女性の1/1000人、40歳未満の1/100人にみられ、無月経女性の5?10%は早期閉経である[8]

男性不妊患者は生まれつきの性器不全や精子の病が理由が占め、20歳-40歳男性の3%が男性不妊患者である。逆に不妊症ではない健康な男性も35歳から45歳にかけて、精巣のサイズ縮小・精液量と精子の質が緩やかに衰えてくることから流産・染色体異常の確率が加齢ごとに高まり始める。しかし、その人の中で「最も発育の良い卵」とはいえ子宮内に毎月僅か1つ排卵される卵子[9]と違い、精子は数が多く、一部の精子の質が劣っていても、生き残っている精子の数もある程度いることが多いため、妊娠率は同年齢の女性より高い。自然妊娠の成功率は男性は40歳ぐらいから徐々に落ち始めるものの、健康な男性は思春期から死ぬまで生殖能力自体を持つ。そのため、70歳でも健康な生殖能力があり、男性は長い生殖期間を持つ[10][11][12][13]。30歳代と比較すると50歳代の男性は精液量が3?22%、精子運動率は3?37%、精子正常形態率は4?18%低下する。このような精子老化などが原因の不妊症については「男性不妊症」または「性機能障害」を参照[5][12][14]
定義

世界保健機関による定義は「妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交しているのに12ヶ月以上にわたって妊娠に至れない状態」となっている[1][15][16]。アメリカ生殖医学会も患者向けガイドラインの中で「1年以上」としており、「もしあなたが35歳以上であるならば、6か月以上避妊せずに性交しても妊娠が起きなければ医学的な検査を始めるべきだ」と推奨している[15]。なお、妊娠に至れない状態を原発性不妊、一度以上の妊娠・分娩後妊娠に至れない状態を続発性不妊と区別する場合もある。

2015年8月29日日本産科婦人科学会が理事会において、不妊の定義を従来の2年から、諸外国に合わせて1年に変更した[2]

日本では妊孕能が正常なカップルでは妊娠を希望し、膣内射精を行った場合は、6か月以内に65%、1年で80%、2年で90%、3年で93%が妊娠に至るとされている[17]。なお、両者妊娠適齢期で膣内射精しているのに不妊な場合において、男性側にのみ問題があるケースが約24%、女性側にのみ問題があるケースが41%、両性双方に問題があるケースが24%、原因不明な場合が11%あるとされている[18]

一方で妊娠するのだが、習慣的に流産となってしまう場合を不育症という。不育症は広義の不妊症の一部に組み込まれることもあるが、基本的には概念が異なる。なお、日本生殖医学会では加齢による難妊化や、45歳以上の女性の有効卵子枯渇も「不妊症」の範疇に含めており、人類の高齢女性は全員が不妊症であり、不妊症でない人は存在しないとの認識となっている[19]

日本では妊娠を望んで体外受精を行う女性の年齢自体が高くなっていること、体外受精で採卵の際、事前に薬を投与して卵巣内で卵子を沢山培養してから採る方法ではなく、卵巣内で自然に育った卵子だけを採る「自然周期」が多く行われている。しかし、この培養しない手法は、その成功率の低さゆえに、他の先進国では行われておらず、英国立医療技術評価機構〈NICE〉の診療ガイドラインには「自然周期の体外受精は患者に提案しないこと」と定められている。 上記の2つの理由のために「国際生殖補助医療監視委員会(International Committee Monitoring Assisted Reproductive Technologies:ICMART)」の報告によると体外受精の実施件数が世界一多いが、1回の採卵あたりの出産率は世界最下位で「不妊治療で出産できない国、世界1位」と報道されている[20][21]

不妊治療を終えると決意した夫婦が特別養子縁組の選択肢を検討することがあるが、民法によって、子供側は15歳未満、親は25歳以上かつ子どもが20歳になった際に65歳以下となるように親と子どもの年齢差を、子供側0歳児だった時の年齢を45歳未満[注釈 1]に制限しているため、治療を諦めてから特別養子縁組を検討しても間に合わない場合がある[22][23]
歴史

不妊の原因は男女片側、双方側の3パターンとも存在し、不妊原因が「女性のみ」41%、「男性のみ」24%、「男女双方」24%である。そのため、半数が男性側に(も)原因が認められる。[14][24]

一方、不妊原因が「加齢による難妊化が要因」となっている場合は、女性原因に大きく偏る。日本生殖医学会によれば、健康状態の如何に関わらず、一般に45歳を越えた女性は概ね妊娠自体は不可能となる。35歳未満の妊娠成功率は3割を越えるが、35歳を越えると2割半ばまで低下する。そのため、子供が一人でも欲しい夫婦は34歳までに出産することを考えて家族計画するのがよい。

しかし、20代女性でも6%は不妊症であり、女性の年齢が若いほど妊娠できる可能性は高くなるため、不妊治療を早期に開始するためには産婦人科で自分の体の状態を診てもらうように義務教育等で教育すべきとの声がある。不妊治療に対する女性への保険適用も、ドイツは40歳まで、最も高いのは42歳以下までとしているフランスである[25][26]。日本国内においての不妊症の治療は、人工授精や体外受精などには、以前は健康保険は適用されていなかった。これを根拠として「不妊は病気でない」と主張する者もいる[27]。なお、2022年4月より日本国内でも不妊治療が保険適応された。

なお1989年に至っても、一部のフェミニストは「健康上問題が見られないのに不妊が病気であるという考え方は、子供を儲けられない女性は、一人前ではないという考え方に至る。その上不妊治療による女性への身体的負担は非常に大きい。また、独身者の場合は問題とならないという側面からも、病気とは認められない」などとして、不妊症が病気であることを否定していた例が存在する[28]

厚生労働省国立社会保障・人口問題研究所が5年毎に行っている、出生動向基本調査の2010年第14回出生動向基本調査によると、20歳?49歳の不妊の心配・治療経験、検査や治療を受けたことがある割合は16.4%になっており、加齢と共に増加している[29]

年齢を理由としてない女性の不妊は、卵子形成障害が多く、同様に男性の不妊理由は、原因不明の精子形成障害が9割である。この場合は、男性の治療は技術確率がなされておらず、治療困難である排卵する卵子の年齢は、アンチエイジングなど見た目の若さは関係なく、実年齢と一致する。35歳の時に排卵された卵子は、35年前に女性の体内で造られた卵子という事である。そのため、「卵子の老化」という卵巣内にあった期間が長いほど、卵子の質・卵子の機能が低下する[30]
女性の不妊原因

世界保健機関による統計では、精子や卵巣の病気など加齢を考慮に入れない不妊原因で、原因が男性のみにある場合が24%、女性のみが41%、男女ともが24%、不明が11%と報告されている[18]。加齢が原因の不妊場合、平均値で健康な男性は40歳から、健康な女性は26歳から生殖能力が下落する[31]

以下のような要因が不妊の原因になると示唆されている。
年齢による卵子老化・妊孕力低下


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