「下水」はこの項目へ転送されています。漢字の部首(したみず)については「水部」をご覧ください。
古代ギリシャ、アテネの下水道。(アクロポリスの地下鉄駅での展示)ローマ時代の下水道の遺跡(ポルトガル、Vidigueira
下水道(げすいどう)は、主に都市部の雨水および汚水を、地下水路などで集めた後に公共用水域へ排出するための施設・設備。下水道は水を排出する施設であり、水を供給する施設である上水道と対置される[1]。多くは浄化などの水処理を行う。 下水道の役割は国によって異なり、時代によっても大きく変遷している[2]。日本、アメリカ合衆国、イギリスなどでは、下水道は都市域の排水システムとして構築され、その後の工業化による水質汚濁に対応するためその下水の処理も付加されてきた歴史を有する[3]。例えば日本では下水道法2条で「下水」や「下水道」が定義されているが、この定義は日本で整備されるものを前提とした固有のものであるため、「下水」からは農業排水が除外されているほか(条文上の「耕作の事業を除く」)、「下水道」からは浄化槽も除外されている[4]。しかし、浄化槽や農業排水なども含めて下水の処理を考察しなければならない場合もあり、これらも含めた「広義の下水道」について論じられる場合もある[4]。 下水道には以下のような役割や効用があるとされる[2][4][5]。 特に衛生面では、赤痢やコレラなど水系伝染病の防除、トイレの水洗化による居住環境の改善や悪臭の防除、ドブ等の改善による蚊やハエの発生の抑制、汚濁源の削除による河川や水路の水質改善、低湿地の排水状況の改善といった効用がある[4]。 下水道は都市基盤整備の一環として多額の建設費を投じて整備され、完成後も維持管理や更新に多額の経費を要す国家レベルの公共事業である。それゆえ先進国ほど普及率が高い傾向を示している。 日本の下水道普及率は2022年3月時点で81.0%[6]とかなりの水準を達成してはいるが、先進国としては低い値であるうえ地域格差が非常に大きく、未普及地域における早急な整備が求められている。 一方、開発途上国では先進諸国で用いられているような水洗式下水道施設を単純に持ち込むことは一部の人口が集中した都市を除いて的外れになりかねないという指摘がある[2]。世界銀行(世銀)の調査では既存の下水処理技術は開発途上国には不向きなものが多いとし、これに代わるサニテーション(衛生処理)の整備も図られている[2]。 各種下水のうち雨水を除いたものを汚水と呼ぶ場合もあり、このときの汚水量を晴天時下水量という[7]。 下水道が整備された地域でも、流れ込んだ水が常時100%処理されるとは限らない。集中豪雨の雨水や、起源不明の「不明水」などが流入して処理が追い付かないこともある[8]。 下水の排除方式には水で流し去る水運式や暫時保留して時々搬出する保留式などがあるが、下水道は水運式にあたる[9]。水運式には以下の合流式と分流式がある[9]。 雨水と家庭などからの排水を同一の渠でまとめて導く方式を合流式という[9]。以下の特徴がある。 雨水と家庭などからの排水を別々の渠に分けて導く方式を分流式という[9]。
概要
雨水の排除(浸水の防除)[2][5]
汚水の排除による生活環境の改善(便所の水洗化)[2][5]
公共用水域の水質保全[2][5]及び水質改善による水資源の確保[4]
処理水や汚泥の再利用によるリサイクル型都市づくり[4][5]
下水道施設の活用(処理場の上部利用、下水道管に並行した光ファイバーの設置)[5]
下水処理の対象
家庭下水
住宅、商業建築その他公共建築などから排出される液状廃棄物をいい、生活に伴って当然に発生するもので、台所、浴場、洗濯等で発生する排水と水洗式便所からの屎尿を含む[7]。生活排水も参照。
工場下水
各種工業で排出される液状廃棄物をいうが、従業員の生活に伴って発生したものは家庭下水に属する[7]。工業排水も参照。
雨水
雨水は不定期かつ大量に生じることを特徴とする[7]。街路洗浄水などについては雨水に含めて差し支えないとされている[7]。
地下水
地下水は本来は下水ではないが、下水渠からの侵入が一定量あるため全く無視することはできないとされている[7]。
下水の排除方式
合流式
合流式は埋設深さが深くなるため個々の土工費は大きくなるが、全工費は分流式の雨渠の合計よりも遥かに廉価である[10]。
上水道、ガス、電話などを敷設する他の地下埋設物との関係からも施工が容易である[10]。
雨水によって渠内が自然清掃される[10]。
1本の大渠となるため、検査、修繕、掃除などが比較的容易となる[10]。
下水量の変化が著しくなり、晴天時には流速が低下して沈殿物多量となるため、渠壁に汚物を残して悪臭を発することがある[10]。
雨水を合わせるため最後処理場の容量を大きくする必要がある[10]。
道路上の雨水の流入口から悪臭が逆流することがある[10]。
降雨時は急増した下水を未処理または簡易処理のみで放流する。このため、混入している汚水による水質汚濁が生じる。このように放流される汚水は合流式下水道越流水(CSO:Combined Sewer Overflow)と呼ばれる。
逆に、初期降雨に含まれるノンポイント汚染源に由来する汚濁物質を、遮集して処理することが可能。
上記への対策として、雨水滞留池や雨水スクリーン、スワールなどの建設が推進されている。
マンホール蓋や側溝などに雨水排除用の排水孔があり、管路からの臭気や害虫による問題がある。特にビルピット
分流式
埋設する管路が汚水管と雨水管の2本である分、合流式より施工費が大きい。
合流管に比べて汚水管は小さいため、人が入れず清掃や点検等が行いにくい事が多い。
Size:107 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
担当:undef