下水処理場
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三河島水再生センター東京都荒川区)。
国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成(1989年撮影)

下水処理場(げすいしょりじょう)とは、下水道汚水浄化し、河川湖沼または放流する施設のことである。日本の下水道法では、「終末処理場」という用語を用い、「下水を最終的に処理して河川その他の公共の水域又は海域に放流するために下水道の施設として設けられる処理施設及びこれを補完する施設」と定義している。施設名称としては、ほかに浄化センター、水処理センター、クリーンセンター、水再生センターなどと呼ばれている[1]
概要

下水処理場は、下水道の目的における「浄化[注 1]」を主な目的として建設・運営されるほか、汚水排除における消毒と、内水排除に付随する関連施設のコントロール拠点としての役割を担う。

処理工程を経て浄化された処理水は、消毒して公共用水域に放流されるか、工業用水等の雑用水として再利用される。放流水の利用先として最も高度なものは、上水源としての利用である。大都市では地下水源の利用が難しく、表流水より水質で勝る高度処理水は重要な水資源となっている。そのほか河川維持、修景、防火、消雪、灌漑、などに利用される。処理場内で再利用する場合、目的によっては消毒を省くこともある。

下水処理場の内部には、水処理施設と、水処理の過程で発生した汚泥処理施設を併せ持つ。水処理設備は、最初沈殿池反応タンク最終沈殿池消毒施設などで構成され、汚水を一定基準まで浄化する機能を持つ。汚泥処理施設は、汚泥の濃縮・消化・脱水・焼却・脱臭などを行い、汚泥を減量・安定化したものにする。
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この節の加筆が望まれています。

中世ヨーロッパでは、コレラチフスなどが大流行した時期がある。このとき、上水と下水は明確に区別されておらず、共同井戸から水を汲み、し尿なども含めて開いた水路に流していたため、上水のなかに下水がまざることもめずらしくなかった。

そこで、感染症などの対策として、まず上水と下水を分離することが始まるとともに、下水を暗渠に集めることがなされた。

その後、下水をよりきれいにして河川に放流する技術が進んだ。大きなごみ・砂などを流さないようにするためのスクリーニング・沈殿にはじまり、汚水に含まれる有機物の除去による水質汚濁の改善を下水処理場で行っている[2]

しかしながら、今もなお、下水道整備が追いついていない都市近郊の河川で、垂れ流される汚水に含まれる有機物が溶存酸素を消費し尽くした結果、酸欠状態に陥り・水中生物の死滅・腐敗による水利障害・悪臭による住環境破壊などの被害が生じている[要出典]。

日本では1922年(大正11年)3月26日、東京市三河島町に作られた三河島汚水処分工場(現三河島水再生センター)が稼働を開始[3]。わが国初の近代的な下水処理場となった。
水処理施設

下水処理場における水処理の工程は、最初沈殿池に至るまでに行う、物理的に固形物などを分離・除去する「一次処理(物理学的処理)」、微生物などを利用し、有機物を除去する「二次処理(生物学的処理)」がある。なお、後述のとおり、これら2つで処理で除去できない浮遊物・窒素リン・有機物などを除去する「三次処理(高度処理)」も行われ始めている。これら水処理工程を経て、消毒・滅菌し、処理水を河川や海へ放流する。

なお、最初沈殿池の前に、流入下水中の砂を除去する沈砂池[4]や、下水流入量の変動を吸収するための汚水調整池を設けることもある[5]

これらの水処理において有機物を除去する主な目的に、河川の酸欠防止があげられる。汚水の中の有機物が溶存酸素を消費し尽くすか、著しく低くなると、河川の汚濁を招くためである。これを処理するために、二次処理が考案された[6]

また、病原体が消毒されずに河川へ流入すれば、感染症の流行に繋がるため、その対策も水処理として行われている。
最初沈殿池

主に比重差を利用し、重力沈降により下水中の沈殿性有機物を分離・除去する。反応タンクへ流入する水・汚泥の負荷を調整し、生物処理のための準備をする役目も持つ[7]。ただし、オキシデーションディッチ法(OD法)のように、最初沈殿池のない下水処理場も存在する[8]
反応タンク

曝気槽とも言う。微生物などにより、下水中の有機物・窒素・リンを中心とした汚濁物質を処理する[9]
最終沈殿池

反応タンクで処理された活性汚泥の分離を行い、澄んだ処理水にする[10]
ろ過施設

施設内で使用する水のためのものと、後述する、高度処理の一環として設置されているものがある[10]
消毒施設

放流する水を滅菌し、安全性を確保するための施設。塩素消毒が一般的であるほか、紫外線消毒・オゾン消毒といった消毒方法や、二酸化塩素臭素系などの薬剤による消毒、膜で細菌をろ過・除去する方法などがとられている。
高度処理施設

主に処理水の活用や放流先の環境保全(特に閉鎖性水域湖沼、閉鎖性のなど)における富栄養化対策を主眼とすることが多い)を目的として、二次処理に付加し浄化を行うための施設。当然に相応の費用が求められるため普及は捗らなかったが、2003年の下水道法改正で促進される見通しとなった。

方法としては、反応タンクの処理方式の改良、ろ過、凝集剤による沈殿促進などがある。

下水道の高度処理は京阪神地区に水道水を供給する琵琶湖を擁する滋賀県で、琵琶湖に排水される生活排水の中の窒素リンが原因で赤潮アオコなどのプランクトンが大量発生。その対策として「滋賀県琵琶湖の富栄養化の防止に関する条例(琵琶湖条例)」と共に下水道整備と高度処理設備の設置が進められ、現在では琵琶湖に注ぐ下水道はすべて高度処理が施されている[11]。また琵琶湖から流れる淀川水系の流域下水道では6ヶ所[注 2]で高度処理設備は導入され、京都市の4ヶ所の下水処理場でも高度処理が行われ、鳥羽水環境保全センター吉祥院支所[注 3]と伏見水環境保全センターでは匂いや染料の色度除去・消毒のためにオゾン処理が施されている。
下水処理場での水処理

下水処理場で行われる水処理には、物理的処理・生物的処理・化学的処理・消毒がある。
物理的処理

主に比重差を利用し、重力沈降により下水中の沈殿性有機物を分離・除去する「沈殿」が代表的である。浮遊性や溶解性の物質には効果が薄いが、ごく低コストである程度の浄化を行うことが出来る。その他、浮上、濾過などの物理的作用による処理工程が汚泥処理や高度処理で採用されている。
生物的処理

多くの有機物が微生物の生存と増殖で代謝・資化されることを利用し、下水中の溶解・浮遊性有機物を培養した微生物の餌とすることで水と炭酸ガス等に酸化分解する方式で、活性汚泥法が代表的である。「生き物」である微生物を適切に育成・管理する必要があるが、比較的低コストでかなり高度な浄化を行うことが出来るため、ほとんどの処理場で主処理(二次処理)工程として採用されている。


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