上三角行列
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Binary lower unitriangular Toeplitz matrices, multiplied using F2 operations
They form the Cayley table of Z4 and correspond to powers of the 4-bit Gray code permutation.

数学の一分野線型代数学における三角行列(さんかくぎょうれつ、: triangular matrix)は特別な種類の正方行列である。正方行列が 下半三角または下三角であるとは主対角線より「上」の成分がすべて零となるときに言い、同様に上半三角または上三角とは主対角線より「下」の成分がすべて零となるときに言う。三角行列は上半または下半三角となる行列のことを言い、また上半かつ下半三角となる行列は対角行列と呼ぶ。

三角行列に関する行列方程式は解くことが容易であるから、それは数値解析において非常に重要である。LU分解アルゴリズムにより、正則行列が下半三角行列 L と上半三角行列 U との積 LU に書くことができるための必要十分条件は、その行列の首座小行列式 (leading principal minor) がすべて非零となることである。
目次

1 定義と簡単な性質

2 特別なクラス

2.1 冪単三角行列

2.2 冪零三角行列

2.3 フロベニウス行列


3 特徴的な性質

4 一般化

4.1 ボレル部分群とボレル部分環


5 関連項目

6 注

6.1 注釈

6.2 出典


7 参考文献

8 外部リンク

定義と簡単な性質

下三角行列または左三角行列は L = ( ℓ 1 , 1 0 ℓ 2 , 1 ℓ 2 , 2 ℓ 3 , 1 ℓ 3 , 2 ⋱ ⋮ ⋮ ⋱ ⋱ ℓ n , 1 ℓ n , 2 ⋯ ℓ n , n − 1 ℓ n , n ) {\displaystyle L={\begin{pmatrix}\ell _{1,1}&&&&0\\\ell _{2,1}&\ell _{2,2}&&&\\\ell _{3,1}&\ell _{3,2}&\ddots &&\\\vdots &\vdots &\ddots &\ddots &\\\ell _{n,1}&\ell _{n,2}&\dotsb &\ell _{n,n-1}&\ell _{n,n}\end{pmatrix}}} なる形に書ける行列を言い、同様に上三角行列または右三角行列は U = ( u 1 , 1 u 1 , 2 u 1 , 3 … u 1 , n u 2 , 2 u 2 , 3 … u 2 , n ⋱ ⋱ ⋮ ⋱ u n − 1 , n 0 u n , n ) {\displaystyle U={\begin{pmatrix}u_{1,1}&u_{1,2}&u_{1,3}&\ldots &u_{1,n}\\&u_{2,2}&u_{2,3}&\ldots &u_{2,n}\\&&\ddots &\ddots &\vdots \\&&&\ddots &u_{n-1,n}\\0&&&&u_{n,n}\end{pmatrix}}} の形に書けるものをいう。ここで用いたような、下三角行列を変数 L(left or lower の略)や上三角行列を変数 U(upper の略)または R(right の略)で表す用法が一般的にしばしば用いられる。

上半かつ下半三角な行列は対角行列といい、また三角行列に相似な行列は三角化可能であると言う。

上三角(resp. 下三角)であるという性質は様々な行列演算に関して保たれる:

二つの上(resp. 下)三角行列の和は上(resp. 下)三角行列である;

二つの上(resp. 下)三角行列の積は上(resp. 下)三角行列である;

正則上(resp. 下)三角行列の逆行列は上(resp. 下)三角である;

上(resp. 下)三角のスカラー倍は上(resp. 下)三角である。

これらの事実により、与えられたサイズの上(resp. 下)三角行列の全体は、同じサイズの正方行列の成す結合多元環行列環)の部分多元環を成すことがわかる。さらに加えて、リー括弧積交換子 [A, B] := AB − BA を与えれば、同じサイズの正方行列全体の成すリー環の部分リー環としても見ることもできる。この上(resp. 下)三角行列全体の成すリー環は可解リー環であり、またしばしば全行列リー環のボレル部分リー環(英語版)とも呼ばれる。

上記の記述においては下半と上半を混ぜた演算を行ってはならない(その場合、一般には三角行列にならない)。例えば上三角行列と下三角行列の和は任意の行列となり得るし、下三角行列と上三角行列との積も三角行列でないものになり得る。「アフィン群」も参照
特別なクラス
冪単三角行列

主対角成分が全て 1 の三角行列は単三角行列 (uni­triangular) という[注釈 1]。単位行列は上半単三角かつ下半単三角なる唯一の行列である。

任意の単三角行列は冪単である。上(resp. 下)単三角行列全体の成す集合はリー群を成す。
冪零三角行列

主対角成分が全て零の三角行列は狭義三角行列であるという。任意の狭義三角行列は冪零行列であり、上(resp. 下)三角行列全体の成す集合は冪零リー環 n {\textstyle {\mathfrak {n}}} を成す。このリー環はすべての上(resp. 下)三角行列全体の成すリー環 b {\textstyle {\mathfrak {b}}} の導来リー環: n = [ b , b ] {\textstyle {\mathfrak {n}}=[{\mathfrak {b}},{\mathfrak {b}}]} であり、かつこのリー環 n {\textstyle {\mathfrak {n}}} は上(resp. 下)単三角行列全体の成すリー群のリー環である。

実はエンゲルの定理により、任意の有限次元冪零リー環は狭義上三角行列からなる部分リー環に共軛、すなわち任意の有限次元冪零リー環は狭義上三角行列に同時三角化可能である。


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