三幕構成
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三幕構成の見取り図[1]ウェンデル・ウェルマンによるプロット・ライン・グラフ (一部追記)。
赤とオレンジは主人公が敵対者と衝突するシーン[2]

三幕構成(さんまくこうせい、Three-act structure)は、脚本の構成である。三幕構成では、ストーリーは3つの (部分) に分かれる。それぞれの幕は設定 (Set-up)、対立 (Confrontation)[3]、解決 (Resolution) の役割を持つ[4]。3つの幕の比は1:2:1である[5]

幕と幕はターニングポイントでつながっている。ターニングポイント (プロットポイント) は、主人公に行動を起こさせ、ストーリーを異なる方向へ転換させる出来事である[6][7][8]

一般に、映画の脚本は三幕構成になっている。国際的には、映画は三幕構成のモデルに基づいて制作されている[9][10][11][12]。三幕構成のモデルは、小説[13][14]コミック[15]ゲーム[16][17]テレビドラマ[18]、およびドキュメンタリーなど他の分野にも応用される[19]

三幕構成の枠組は1979年、映画に共通して見られる基礎として、シド・フィールドによって理論化された。フィールドの教本 Screenplay: The Foundations of Screenwriting[注釈 1] は、世界22カ国語以上に翻訳され、数回の改訂を重ねている[20][注釈 2]
構成

一般に、映画は「設定」「対立」「解決」の役割を持つ3つの幕 (act) に分けられる[注釈 3]。ストーリーの始まりが「設定」であり、中間が「対立」、終わりが「解決」である[4]。第一幕 (設定) では、誰が、何をするストーリーであるのかが設定され[注釈 4]、主人公の目的が示される[21]。第二幕 (対立、衝突) では、主人公が自らの目的を達成するために、その障害と対立、衝突する[22][23]。第二幕の後半には、主人公が敗北の寸前まで追いつめられる[24][25][26][27]。そして、第三幕 (解決) では、ストーリーの問い、すなわち「主人公は目的を達成できるのか?」という問いに対する答えが明かされ、その問題が解決される[28][29]

第一幕の終わりと第二幕の終わりには、ターニングポイント (プロットポイント) がある[注釈 5]シド・フィールドによれば、ターニングポイント[注釈 6]とは、「アクション (行動) を起こさせ、物語を違う方向性に向かわせる事件やエピソードなど」をいう。ターニングポイントは主人公に関するイベントである[30]。それは劇的で大きな場合もあれば、そうでない場合もあり、ときには台詞や決断のみである[31]。ターニングポイントの目的は、解決に向けてストーリーを前進させることである。幕の最後のターニングポイントにおいて、主人公が問題を解決するための選択をすることにより、設定から対立へ、対立から解決へと幕が転換する。もしストーリーに対立がなければ解決はなく、解決がなければ結末はない[32]

それぞれの幕の時間配分は、1:2:1である (ただし現在の第三幕はより短い[33][注釈 7])[34]。このとき、第一幕がおよそ4分の1、第二幕がおよそ半分、第三幕がおよそ4分の1である[35]。通常、2時間映画の場合[注釈 8]、第一幕は開始から約30分間であり、第二幕はその次の約60分間であり、そして第三幕は最後の約30分間である (映画の1分は、脚本ではおよそ1ページになる)[4]。そして、第一幕から第三幕のそれぞれにまた、始まり、中間、終わりがある[36]。このような配分を全く無視した映画は、観客の関心を維持できなくなる可能性が高まる[37]

ほとんどの場合、映画は複数のストーリーライン (物語の筋) から出来ており、メインプロット以外に少なくとも1つのサブプロット(英語版) (とくにラブ・ストーリー) を持っているが、サブプロットにも始まり、中間、終わりがある。さらに、より高度なサブプロットには、はっきりとした目的とターニングポイントが確認できる。メインプロットとサブプロットが互いに影響し合うことで、ストーリーは非常に多くのバリエーションを持つことになり、その展開は観客の予想を超えたものとなる (映画に複数のプロットを持たせることは伝統的な手法である[注釈 9])[38]
全体の流れ

一般に、映画は最初のおよそ10分間において、主人公とその周囲に関する必須情報が紹介され、主人公の目的 (問題) も設定される (セットアップ)[39][40][41][42]。セットアップの終わりに起こるインサイティング・インシデント (きっかけとなる出来事) によって、ファースト・ターニングポイントが起こり[43][44][45][46]、主人公は別世界の第二幕に進む[47][48]。第二幕の中間のミッドポイントで、ストーリーは前半と後半に分かれる[49][50]。ミッドポイントでは、衝撃となる出来事が起こり、ストーリーは正反対に転換する[51][52]。そこから第二幕の後半を通して主人公の状況が悪化していく[53][54][26]。そして、主人公が最悪の状態に陥ったとき、セカンド・ターニングポイントで決断を迫られる[23][55][27]。そこで主人公が正しい決断をすることにより、続く第三幕での最後の試練に勝利 (または敗北[56]) する[57][58]

ブレイク・スナイダー(英語版)の分類、すなわち「ブレイク・スナイダー・ビート・シート」(BS2) は、このような三幕構成のモデルをより具体的にした15分割のテンプレートである[59]。この項目はBS2を参考程度に掲載しているが、BS2は一般的な三幕構成のモデルとは異なり、他の教本から引用されていないため、あくまでもスナイダー個人の意見として扱っている。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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