三島由紀夫レター教室
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三島由紀夫レター教室
作者
三島由紀夫
日本
言語日本語
ジャンル長編小説
発表形態雑誌連載
初出情報
初出『女性自身1966年9月26日号-1967年5月15日号
初出時の題名「三島由紀夫レター教室――手紙の輪舞」
刊本情報
出版元新潮社
出版年月日1968年7月20日
装幀渡辺藤一
総ページ数199
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『三島由紀夫レター教室』(みしまゆきおレターきょうしつ)は、三島由紀夫長編小説。登場人物のやり取りする手紙で構成されている異色の作品である。年齢も職業も違う5人の男女の騒動をユーモラスで娯楽的な趣で描きながら、その千変万化な手紙がそのまま文例、手本となる形式となっている。最後に付録的に、「作者から読者への手紙」という章で、三島が手紙を書く際の肝心な要点をまとめ、締めくくられている。

1966年(昭和41年)、週刊誌『女性自身』9月26日号から翌年1967年(昭和42年)5月15日号に「三島由紀夫レター教室――手紙の輪舞」として連載された[1][2][3]。単行本は1968年(昭和43年)7月20日に新潮社より刊行された[4][3]。文庫版は1991年(平成3年)12月4日にちくま文庫で刊行されている[4]
あらすじ

45歳の未亡人・氷ママ子は英語塾を経営している元美人。友人に同じ歳の山トビ夫というニヤけた有名デザイナーがいる。氷ママ子の英語塾の元生徒には、空ミツ子という20歳のピチピチしたOLがいる。一方、山トビ夫の店には、芝居の演出の勉強をして劇団にいる23歳の炎タケルが、衣裳のことで出入りして、氷ママ子や空ミツ子とも知り合いとなっている。空ミツ子には、丸トラ一というテレビを見ながら食べているのが大好きな25歳のまるまる肥った従兄がいる。丸トラ一の目下の願いはカラーテレビを買うことである。

山トビ夫は空ミツ子にラブレターを出すがフラれ、氷ママ子や炎タケルは、それぞれ気のない相手や同性愛者からラブレターを貰ったりしながら、お互い相談し合ったりしていた。そんな中、空ミツ子と炎タケルはしだいに恋仲になり、結婚をしようとするが、密かに炎タケルに恋していた氷ママ子は嫉妬し、他人を装い、空ミツ子に炎タケルの有らぬ噂の密告手紙を出し、2人の仲を引き裂こうとする。

ひょんなことから、その手紙を書いたのが氷ママ子であることを見破った丸トラ一は、氷ママ子から口止め料としてカラーテレビを買うお金を貰い、それ以来、氷ママ子のスパイとして、従妹の空ミツ子と炎タケルの様子を報告する役目を担う。空ミツ子と炎タケルはタケルの田舎の両親から結婚を反対されていた。氷ママ子は山トビ夫に、さらに2人の仲を裂くように工作を頼むが、山トビ夫は逆に空ミツ子と炎タケルの結婚を応援し、炎タケルの両親を説得してしまった。山トビ夫は長年友人として付き合ってきた氷ママ子を愛していたことに気づいたからだった。怒った氷ママ子は山トビ夫と絶交する。

山トビ夫は、自分に何の嫉妬もせずに慰謝料代りにずっと計画的に小金を溜め込み、自分名義のアパートまで買っていた辛気臭い女房と別れたことなどを、何でも話しやすい丸トラ一に全部話し、女房を失ったことよりも悪友だった氷ママ子を失ったことが身に堪えていることを告白した。そして、氷ママ子との仲直りを取り持ってほしいと丸トラ一に頼む。単純な丸トラ一は、そっくりそのままのことを氷ママ子に報告した。山トビ夫と氷ママ子は晴れて恋人となり、同じビルの上下でそれぞれの店や塾を開き、結婚する予定となった。
登場人物
氷ママ子
45歳の未亡人。かなり肥っているが、元美人。むかし夫と
アメリカに3年間暮らし、そこでおぼえた英語を生かして自宅で英語塾を開いている。口八丁、手八丁。大学生と高校生の息子がいる。夫は7年前に死亡。社交的で恋愛も忙しい。筆まめ。
山トビ夫
45歳の有名ファッションデザイナー。チョビ髭を生やし、痩せている。何でも自分が最も洗練されていると自負し、皮肉屋で文学的だが、どこか田舎くさい。鹿児島県生まれ。15歳の時に家出をし、東京の伯父を頼ってデザイナーになった。恋愛生活が豊富。客だった氷ママ子とは、お互い異性の好みが違うので親友の関係。お針子上がりの妻がいる。妻は主人の生活に干渉しない。
空ミツ子
20歳のOL。商事会社に勤めているが、結婚するまでの腰かけ。おっちょこちょいだが、叱られても明るく謝るので、人に憎まれない。小柄で、大きな目をしていて鼻の形がかわいらしいピチピチした娘。ママ子の塾のかつての生徒。ママ子に気に入られ今も行き来がある。字が上手いので自然と筆まめ。
炎タケル
23歳。ある劇団の大道具係などをしながら、芝居の演出の勉強をしている。大真面目な理屈っぽい左翼青年。山トビ夫を通じて、氷ママ子や空ミツ子とも知り合うが、彼らのブルジョア的雰囲気には反感を持っている。文才があり、手紙の代筆を頼まれることがある。顔つきは理論ほど深刻でない。
丸トラ一
25歳。空ミツ子の従兄。大学を3年も留年している。まるまる肥り、楽天的な風貌。頭はそう悪くないが怠け者で、テレビを見ながら食べているのが好き。体を使わないことなら、わりに無精ではなく、方々にペンフレンドを持っている。切手収集家。不器用でいつもぼんやりしている空想家。空想の中では自分を加山雄三のような青年と想像している。
作者(三島由紀夫)
読者へ手紙の書き方の要点を教授。
作品評価・研究

『三島由紀夫レター教室』は、三島由紀夫の作品の中でも娯楽色の強い小説で特に深遠なテーマというものは見られないが、三島のエンターテイナーとしての才能が発揮されている作品である[3]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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