万有引力
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日本の劇団については「演劇実験室◎万有引力」をご覧ください。

万有引力(ばんゆういんりょく、(: universal gravitation)または万有引力の法則(ばんゆういんりょくのほうそく、(: law of universal gravitation)とは、「この宇宙においては全ての質点(物体)は互いに gravitation(重力)・attraction (引力、引き寄せる作用)を及ぼしあっている」とする考え方、概念法則のことである。
歴史
前史

この万有引力という見方がどのようなものであるか、その正しい位置づけ・真価を理解するには、一旦、この概念が生み出される以前に人々がこの世界をどのようにとらえていたのか、その思想、世界の見え方(世界観)に寄り添って理解し、そこからどのように変えていったのか、その相違の程度を理解する必要がある。
アリストテレスの考え方

石を手から離せば自然に地面へと落ちる。古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、その原因は、石を構成する土元素(四元素のうちの一つ)が、本来の位置である地へ戻ろうとする性質にあると考えた[1]。土元素が多いものが重い、と考え、それが多いものほど速く落ちる、と考えた[2]
中世の考え方

中世ヨーロッパではアリストテレスの考え方が広く知られていたので、人々はそうした見方で世界を見ていた。以下のような考え方である。

我々人間は、それぞれの家に住んでいる。人間は何かの理由で家から離れることがあっても、結局はその家に帰ろうとする。動物も同じだ。地リスは地面に巣穴を持っている。何かの理由があると、たとえば危険を感じると、穴から一時的に離れることはあるが、危険がさればやはりその巣穴に戻ろうとする。鳥もそうだ。も何かの理由、例えば食べ物を探すために一時的に巣から飛び立つことがあるが、結局はその巣へ帰ってくる。あるものは全て、それぞれの性質に応じて本来の位置というものをもっていて、一時的にそこから離れることはあっても、結局はそこへ帰ろうとするものだ[1]

生き物がそれぞれ本来の位置というのを持っているように、物(無生物)も、それぞれの性質に応じて本来の位置を持っている。たとえば小石はその本来の位置を地に持っている。はその本来の位置を天上に持っている[1]

例えば、小石を空中に投げれば、小石は本来の位置から離されることになり、小石は一旦は抵抗を示しながら上に上がるが、結局はできるだけすみやかに、その本来の位置である地に戻ってこようとする[1]

だが、無生物でも、その本来の位置を持たないと思われる存在がある。天に見える天体である。天体は永久に同じ運動を繰り返すばかりで、その本来の位置を持っていないように見える[1]。そこで中世の人々は、地上の存在と天の存在は本質的に異なっていると考え、地上の存在はただの存在であり、それに対して天の世界に属する存在、永遠に運動を繰り返す天体は、いわば的な存在である、と考えた[1]。中世の人々は、天の世界は地上とは全く別の法則が働いている別世界なのだ、と考えていたのである。また、天の世界の、地上とは異なった性質を説明するために、地上は四元素でできているのに対して、天体は第五元素でできている、とも考えていた。
地上の範囲での、従来の自然学への疑念と改良

さて、アリストテレスの考え、「土元素が多いものが重い、それが多いものほど速く落ちる」については、パドヴァ大学ベネデッティ(Giambattista Benedetti、1530-1590)が異論を唱えた[2]。またオランダのステヴィン(Simon Stevin、1548-1620)は、重さが10倍異なる二つの鉛玉を9メートルほど落下させ、ほとんど同時に落ちることを確かめて、このアリストテレスの理論に異議を唱えた[2]

自然学者ガリレオ・ガリレイ(1564-1642)も、上記の中世の考え方(の一部)に疑問を投げかけた[1]。(ところで、先行する14世紀の自然学者ビュリダンインペタス理論(いきおい理論)を提唱し、その理論では、物体を投げると手からインペタスが物体の内部に移ることで飛び続け、空気や重さなどの抵抗により内部要因のインペタスが減り、落下に伴ってインペタスが増加し、ますます速く落ちるようになる、と説明した。)ガリレイは、当初、このインペタス理論を採用していた[2] が、やがてガリレイは物体の運動をモーメント(重さ以外の、距離や速度などをひとまとめに呼ぶ、ガリレオによる概念)という考え方で理解しはじめ[2]、(内部要因の変化で説明する)インペタス理論は採らなくなった[2]。では落下速度はどのような理屈で増加するのか? 落下距離に比例するか? 落下時間に比例するか? という点で、1600年ごろガリレイは悩み悪戦苦闘したらしい[2] が、1604年には(経緯が詳しくは分かってはいないらしいが)「落下速度は時間に比例する」という仮説にたどり着いた[2]、という。こうしてガリレイは動力学に貢献した[2]。ガリレイは斜面で球を転がす実験を多数行い、水平面では等速になることから、「加速・減速の外的原因が取り去られている限り、いったん運動体に与えられたどんな速度も不変に保たれる」という考え方をするようになった[2]。これは現代で言う慣性の法則に近いものではあるが、ただガリレイは、それは地上の物体にだけ通用する法則であって、天体には通用しないと考えていた[2]。ガリレイも古代ギリシャ以来の考え方をなぞり、天体は天体で別の性質を持っている、円運動をする性質を持っているのだ、と考えていたのである[2]
ニュートン、フック、ハリーらの活動アイザック・ニュートン肖像画
ニュートンの発想 ?ガリレオ動力学の天体への適用?

一般には、アイザック・ニュートン(1642-1727)が1665年に、地上の引力が月などに対しても同様に働いている可能性があることに気付いた、とされている。

ウィリアム・ステュークリ(1687 - 1765)の著書『回想録』には、ステュークリが、ニュートンが死去する前年である1726年4月15日にロンドン西方の彼の自宅を訪問した時、昼食をともにしたあと庭に出て数本のりんごの木陰でお茶を飲んでいたところ、話の合間にニュートンが「昔、万有引力の考えが心に浮かんだ時とそっくりだ。瞑想にふけっていると、たまたまリンゴが落ちて、はっと思いついたのだ」と語った、と書いてあるという[2]。詳細は、アイザック・ニュートン#リンゴについての逸話を参照。
同時期の、フックによる引力に関する活動ロバート・フックの想像画(Rita Greer、2004年)。(存在したはずの唯一の肖像画は、その後ニュートンとの確執の中で失われたと推測されている)

王立協会の書記であったロバート・フックは、1665年に刊行した『顕微鏡図譜』で引力の法則についても論じたあと1666年には王立協会で「引力について」(On gravity)と題して講演をおこない、次の法則を追加した。

移動する物体は何らかの力を受けない限りそのまま直進する(慣性の法則

引力は距離が近いほど強くなる

また、フックは1666年に王立協会と交わした書簡において、世界のしくみについて次の3点を述べた[3]

全ての天体は引力(gravity)によってその各部分を中心に引きつけているだけでなく、天体間で相互に引き付けあって運動する

外部から力が継続的に加わらない限り、天体は単純に直進し続ける。しかし、引力によって天体は円軌道楕円軌道などの曲線を描く

引力は天体同士が近いほど強くなる。ただし、距離と引力の強さの関係は発見できていない

当時、惑星の運動についてケプラーの法則が学者たちに知られていた。
第1法則
惑星は太陽を焦点とした楕円軌道を描く
第2法則
惑星は太陽に近い軌道では速く、遠いところではゆっくり動き、惑星と太陽とを結ぶ直線が等しい時間等しい面積を掃くように動く(面積速度一定の法則)
第3法則


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