万年筆
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万年筆(モンブラン

万年筆(まんねんひつ)は、ペン軸の内部に保持したインク(インキ)が毛細管現象により、溝の入ったペン芯を通じてペン先に持続的に供給されるような構造を持った携帯用筆記具の一種。インクの保持には、インクカートリッジを用いたもの、各種の方法でインクを吸入するものがある。「萬年筆」とも書く。
万年筆の歴史
万年筆の開発史

現在の万年筆の原型はエジプトファーティマ朝カリフであるムイッズが衣服と手を汚さないペンを欲したことから、953年に発明された[1]

その後、1809年9月23日イギリスのフレデリック・バーソロミュー・フォルシュが、特許を取得したのが最初[2]イギリスのジョセフ・ブラーマーも7つの特許を取得した。ブラーマーの特許の中には鉄ペンの着想もあり、「fountain pen」(英語で泉のペンの意)の名称を初めて用いている[2]1819年には、リューイスが2色の万年筆を開発している[2]。また、パーカーが1832年に、てこを利用した、自動インク吸い取り機構を開発した[2]

その後の1883年に、アメリカ合衆国保険外交員ルイス・エドソン・ウォーターマンが、調書にインクの染みを作ってしまい、契約を取り逃がしたことをきっかけとして、毛細管現象を応用したペン芯を発明したことが万年筆の基礎となった[注 1]
日本における万年筆の歴史万年筆の手渡し方(国民礼法より)

日本では江戸時代後半の発明家国友藤兵衛が「御懐中筆」の名で万年筆あるいは筆ペンのようなものを発明していた[3][4]。近代的な万年筆が日本に入ってきたのは1884年で、横浜のバンダイン商会が輸入し、東京日本橋丸善などで販売された。当時は後半部分がほぼ英名の直訳である「針先泉筆」と呼ばれており、「萬年筆」と命名したのは、1884年に日本初の国産万年筆を模作した大野徳三郎と言われている[5]。大元堂の田中富三郎が万年筆の日本での普及に努めた。しかし、「末永く使える」という意味で「万年筆」の訳語を与えたのは内田魯庵というのが通説である[6]公文書へのインクの使用が解禁された1908年明治41年)以降、毛筆に代わって普及するようになった。そして国産化も進んだ。当初はペン先を輸入し、木地師の技術を受け継ぎ轆轤を扱える職人がペン軸を造って仕上げた。大正時代にかけて、今日のセーラー万年筆プラチナ萬年筆といった万年筆を含む筆記具メーカーが創業され、並木製作所(現・パイロットコーポレーション)は蒔絵を施した。ペン軸のエボナイト紫外線で黄ばみやすい欠点を克服するためで補強し、輸出につなげる狙いがあった。国外で好評だったが、内田魯庵は「奇妙なもの」と酷評した[7]

日本の万年筆製造は第一次世界大戦後に盛んになり、統計上は不詳であるが1940年にはピークを迎え、世界第2位の輸出国となっている[8]昭和初期には1,000社を超えるほどメーカーが増えた。しかし1940年には万年筆にも公定価格が導入され、軸外径、軸種、ペン先種、ペン先全長により15種(製図用を除く)に製品の規格化がなされた。価格は規格に応じて2円から4円95銭(税込)までとした[9]ため、高級品の製造が控えられ、廉価品は質の劣化が進行した。

高度成長期以後はボールペンが筆記具の主体となったが、現代でも愛用者は多く、オーダーメイドで手作りを請け負ったり、インクを調合したりする職人・企業もある[7]。また1950年代および2010年代には年間およそ1,000万本前後が日本から輸出されている[10]

万年筆はペンとともに1960年代ごろまで、手紙はがき、公文書など改竄不能な文書を書くための筆記具として主流であったが、徐々にボールペンに取って代わられた。1970年代に公文書へのボールペンの使用が可能になり、また書き味に癖がなく安価な低筆圧筆記具である水性ボールペンが開発されたこと、学生向けの筆記具としてはノック式シャープペンシルが普及したことにより、日本において万年筆は事務用・実用筆記具としては殆ど利用されなくなっている。1990年、消費者物価指数の対象品目から除外された[11]。むしろ、役所によってはサインペンと同等とみなされて使用禁止にされているところもある。

21世紀になると万年筆の希少性・独自性が見直され、趣味の文具やコレクター文具として復権し、万年筆を扱った書籍や雑誌が刊行されるようになっている。
筆記具としての特徴

万年筆はそれ以前のつけペンと比べ、インクを内蔵して携帯性を備えた点で画期的であった[12]。しかしこの特徴はボールペン(1940年代?)やサインペン(1960年代?)が登場して以降は特別ではない。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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