七宝_(技法)
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「シチホウ」、「シッポウ」、「七宝」のその他の用法については「七宝 (曖昧さ回避)」をご覧ください。

七宝(しっぽう)とは、主に金属の素地に、ガラス質の釉を焼きつけて装飾する技法[* 1]。素地には銅を用いることが多いが、金・銀・青銅・鉄・合金(例えば銅と亜鉛をまぜたタンパカ)などの金属、ときにはセラミック(陶器や粘土片)やガラスといった金属以外の材料も素地となる。

古今東西、特にシルクロード沿いの世界各地で多様な技法が存在するが、それらは日本で言えば象嵌七宝有線七宝描画七宝琺瑯)にあたる3種に大別することができ、西洋ではシャンルヴェクロワゾネペイントエナメル、中国では内填琺瑯?糸琺瑯画琺瑯がこれに相当する。それぞれ、「主に素地の凹みに釉をさす(象嵌)」、「素地の上に金属線の区切りをつけて釉をさす(有線)」、「素地に直接釉で絵柄を描く」、といった違いがある[1]。本項では、各地域の様々な技法の違いについて述べる。


地域による名称の違いや歴史については「七宝」を参照



西洋の技法クロワゾネ・エナメル

以下では、主にヨーロッパのアンティーク・ジュエリーに見られるエナメルの技法について述べる。
シャンルヴェ

シャンルヴェ (champleve) とは、土台の金属を彫りこんで、できたくぼみをエナメルで埋めて装飾する技法。初期の頃は、輪郭線の部分をライン状に彫りこんでいた。技術の発達につれて、逆に、面になる部分を彫りこんでエナメルで装飾し、彫り残した金属部分を輪郭線とするようになった。詳細は「シャンルヴェ(英語版)」を参照
クロワゾネ

クロワゾネ (cloisonne) とは、土台となる金属の上に、さらに金属線を貼り付けて輪郭線を描き、できた枠内をエナメルで埋めて装飾する技法。シャンルヴェよりさらに細かい表現が可能になる。詳細は「クロワゾネ(英語版)」を参照
バスタイユバスタイユ(Faberge

バスタイユ (basse-taille) とは、エナメルの半透性を生かし、土台の金属に刻まれた彫刻模様(ギヨシェ)を見せる技法。金属に施された彫刻が主眼となるので、使用されるエナメルは単色。ピーター・カール・ファベルジェの作品に、この技法を使用したものが多い。詳細は「バスタイユ(英語版)」を参照
プリカジュール

プリカジュール (plique a jour) とは、薄い金属箔の上に、クロワゾネとほぼ同じ工程でエナメルを焼き付け、その後に薬品処理によって箔を取り除く技法。金属枠のみによって支えられたエナメルは光を透過するので、ステンドグラスのような効果を得られる。アールヌーボー期のジュエリーに好んで使用された。美しいが非常に繊細で、衝撃に弱い。1997年の映画『タイタニック』に登場したヒロインの蝶のには、この技法が使用されていると思われる。詳細は「プリカジュール(英語版)」を参照ロンドボス・エナメル
The Dunstable Swan Jewel (c.a. 1400)
ロンドボス

ロンドボス (ronde bosse) とは、金などの立体像の表面全体に、エナメルを施す技法。ルネサンス期のジュエリーなどに多く例を見ることができる。詳細は「ロンドボス(英語版)」を参照
ペイントエナメル

ペイントエナメル (painted enamel) とは、あらかじめ単色で焼き付けたエナメルを下地とし、その上に、筆を使ってさらにエナメル画を描き、焼き付ける技法。人物や植物を描いたミニアチュールが例として挙げられる。特に絵柄の細かい高度なものは細密描画などとも呼ばれている。詳細は「ペイントエナメル(英語版)」を参照
グリザイユ

グリザイユとは、モノクロームで描く技法。また、描かれた絵画のこと。フレスコ画やエナメルで描かれたものが含まれる。フランス語で gris とは「灰色」を意味し、色は一般に灰色か茶色が使われるが、他の色がつくこともある。詳細は「グリザイユ」を参照
中国の技法?絲琺瑯菱花口? (明朝早期)

中国の琺瑯の技法は3つの技法に大別できる。
内填琺瑯

内填琺瑯(ないてん ほうろう)は、シャンルヴェ、あるいは、象嵌七宝に相当する技法。詳細は「鏨胎琺琅(中国語版)」を参照
?糸琺瑯

?糸琺瑯(こうし ほうろう)は、クロワゾネ、あるいは、有線七宝に相当する技法。詳細は「景泰藍(中国語版)」を参照
画琺瑯

画琺瑯(が ほうろう)は、ペイントエナメル(描画七宝)に相当する技法。詳細は「?瓷(中国語版)」を参照
日本の技法

日本における七宝の技法は、釉薬や器胎の種類など材料の違いと、線付けの有無など製作方法の違いによって大別できる[2]
象嵌七宝並河靖之 花鳥文花瓶/明治時代ロサンゼルス・カウンティ美術館所蔵

胎を鋳造や彫るなどによって凹ませた部分に七宝を施す技法。凹面に直接釉薬を入れる方法と凹面と同じ形の胎に七宝を施しはめ込む方法などがある。江戸時代中期頃までの作品はこの手法を用いたものが多く見られる古来の技法。凹面の内部に有線を施すものもあるが、全く植線をせず金属の凹みに直接釉薬を入れたものに関しては西洋のシャンルヴェの技法に近い技法である。
有線七宝

リボン状の薄い金属線で模様をつける技法。薄い金属線で模様を描くため、緻密な図柄を表現できる反面、植線の手間のかかる手法である。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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