一様空間
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.mw-parser-output .pathnavbox{clear:both;border:1px outset #eef;padding:0.3em 0.6em;margin:0 0 0.5em 0;background-color:#eef;font-size:90%}.mw-parser-output .pathnavbox ul{list-style:none none;margin-top:0;margin-bottom:0}.mw-parser-output .pathnavbox>ul{margin:0}.mw-parser-output .pathnavbox ul li{margin:0}数学 > 位相空間論 > 一様空間

一様空間(いちようくうかん、: uniform space)とは、一様構造という構造を備えた集合である。一様構造は擬距離構造位相構造の中間の強さを持ち、位相構造だけでは定義できないコーシー列、完備性、一様連続性一様有界性全有界性などが定義できる。

また擬距離空間のみならず位相群(とくに位相ベクトル空間)に関しても自然な一様構造が定まる事が知られている為、一様空間の概念は関数解析学において有益である。

位相空間との違いは、位相空間が収束性、すなわち点に「近づく」事を定義可能な概念であるのに対し、一様空間ではある点が別の点に「近い」事が定義できる。しかしこの「近さ」は擬距離構造のように実数値で全順序づけされておらず、近縁と呼ばれる部分集合に属するかどうかで判断する半順序的なものである。
定義と基本的な性質

一様空間は、集合Xと、一様構造と呼ばれるX×Xの部分集合の族 U {\displaystyle {\mathcal {U}}} の組として定義される。 U {\displaystyle {\mathcal {U}}} の元Uは近縁と呼ばれ、直観的には(x, y) ∈ Uとなる事はxとyが(Uに入る程度には)「近い」事を意味する。例えば擬距離空間の場合には2点間の距離がε以下になるX×Xの部分集合Uεを U ε = { ( x , y ) ∈ X × X : d ( x , y ) < ε } {\displaystyle U_{\varepsilon }=\{(x,y)\in X\times X:d(x,y)<\varepsilon \}}

と定義し、 ∃ ε > 0   :   U ε ⊂ U {\displaystyle \exists \varepsilon >0~:~U_{\varepsilon }\subset U}

を満たすU ⊂ X×Xを近縁とみなす事で自然に一様空間とみなせる事が知られている(詳細後述)。
一様空間の定義

一様空間やそれに関係する概念を定義するために、まず記号を定義する。

記号の定義 ― Xを集合とし、U, V ⊂ X×Xを任意の部分集合とし、さらにa ∈ Xを任意の元とするとき、以下のように記号を定義する:

U − 1 := { ( y , x ) ∈ X × X ∣ ( x , y ) ∈ U } {\displaystyle U^{-1}:=\{(y,x)\in X\times X\mid (x,y)\in U\}}

U ∘ V := { ( x , z ) ∈ X × X ∣ ∃ y ∈ X ( x , y ) ∈ U , ( y , z ) ∈ V } {\displaystyle U\circ V:=\{(x,z)\in X\times X\mid \exists y\in X(x,y)\in U,(y,z)\in V\}}

U [ a ] := { y ∈ X ∣ ( a , y ) ∈ U } {\displaystyle U[a]:=\{y\in X\mid (a,y)\in U\}}

一様空間は厳密には、近縁全体の集合 U {\displaystyle {\mathcal {U}}} が下記の抽象的な公理を満たす事をもって定義される。前述した擬距離空間における近縁が下記の公理を満たす事を容易に確かめられる:

定義 (一様空間) ― Xを集合とし、 U ≠ ∅ {\displaystyle {\mathcal {U}}\neq \emptyset } をX×Xの部分集合の族とする。 U {\displaystyle {\mathcal {U}}} が以下の性質を満たすとき、組 ( X , U ) {\displaystyle (X,{\mathcal {U}})} を、 U {\displaystyle {\mathcal {U}}} を一様構造[1]: uniformity[2])とする一様空間[1]: uniform space[2])といい、 U {\displaystyle {\mathcal {U}}} の元を近縁[1]: entourage[3][4]: vicinity[4])という[5]
任意のx ∈ Xと任意の近縁Uに対し、(x, x) ∈ Uである。

Uが近縁なら、V ⊃ Uとなる任意のV ⊂ X×Xは近縁である。

U、Vが近縁なら、U ∩ Vも近縁である。

任意の近縁Uには V ∘ V ⊂ U {\displaystyle V\circ V\subset U} となる近縁Vが存在する。

Uが近縁なら、U-1も近縁である。

一様構造を一般化した概念として以下のものがある:

U {\displaystyle {\mathcal {U}}} が条件2,3以外の3つを満たすとき、 U {\displaystyle {\mathcal {U}}} を@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}前一様構造[訳語疑問点](: preuniformity[6])という。

条件5以外の4つを満たすとき、 U {\displaystyle {\mathcal {U}}} は準一様構造[訳語疑問点](: quasi-uniformity[7][8][9]) であるという。

条件2,3は U {\displaystyle {\mathcal {U}}} がフィルターである事を要求している。前述した擬距離空間における例では { U ε ∣ ε > 0 } {\displaystyle \{U_{\varepsilon }\mid \varepsilon >0\}}

が前一様構造になっている事を容易に確かめられる。

一方、準一様構造は一様構造の別の側面から一般化しており、擬距離から近縁を定義すれば一様構造が定まるのに対し、準擬距離[訳語疑問点](: quasi-pseudometric)から近縁を定義すれば準一様構造が定まる。
一様構造から定まる位相

距離構造が定める位相の定義を自然な一般化する事で、一様構造が定める位相を定義できる:

定義 ― 一様空間 ( X , U ) {\displaystyle (X,{\mathcal {U}})} に対し、下記の性質を満たす集合V ⊂ Xを開集合とみなす位相を定める事ができるこれを一様構造 U {\displaystyle {\mathcal {U}}} がXに定める位相(: topology of unifomity U {\displaystyle {\mathcal {U}}} )もしくは一様位相[1][注 1]: uniform topology)という[10]: ∀ x ∈ V ∃ U ∈ U   :   U [ x ] ⊂ V {\displaystyle \forall x\in V\exists U\in {\mathcal {U}}~:~U[x]\subset V}
位相空間の一様化可能性

上で一様空間には必ず位相構造が入る事を見たが、逆に位相空間上にそれと両立する一様構造が入る条件は以下のとおりである:

定理 (位相空間の一様化可能性) ― 位相空間 ( X , O ) {\displaystyle (X,{\mathcal {O}})} に対し、以下は同値である[11]

X上の一様構造 U {\displaystyle {\mathcal {U}}} が存在し、 O {\displaystyle {\mathcal {O}}} は U {\displaystyle {\mathcal {U}}} が定める一様構造と一致する

( X , O ) {\displaystyle (X,{\mathcal {O}})} は完全正則空間(詳細下記)である。

ここで位相空間の完全正則性は分離公理の一つであり、以下のように定義づけられる:

定理 (完全正則性) ― 位相空間 ( X , O ) {\displaystyle (X,{\mathcal {O}})} が完全正則であるとは、任意の点z ∈ Xとzを含まない任意の閉集合F ⊂ Xに対し、連続関数 φ   :   X → [ 0 , 1 ] {\displaystyle \varphi ~:~X\to [0,1]} で、 φ ( x ) = { 1 if  x = z 0 if  x ∈ F {\displaystyle \varphi (x)={\begin{cases}1&{\text{if }}x=z\\0&{\text{if }}x\in F\end{cases}}}


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