『ヴォルコシガン・サガ』 (The Vorkosigan Saga) は、アメリカの作家ロイス・マクマスター・ビジョルドによる共通の架空宇宙における SF小説のシリーズ作品の総称。1986年から書き始められ、最新の作品は2018年に出版されている。 シリーズは主にマイルズ・ネイスミス・ヴォルコシガンとその家族や友人を中心に描かれ、遠い未来においてワームホールで結びつけられた数十個の惑星世界と宇宙船が舞台である。各惑星には人類の子孫のみが居住するが、それぞれ独自の文化や政治体制を築いている。各惑星世界は、現代の国家のように国際貿易、外交関係、そして侵略戦争などによって干渉し合う。身分の高い生まれでありながらハンディキャップを背負うマイルズは、出身惑星のバラヤーの利益のため、外交官、スパイ、傭兵部隊の長、さらに聴聞卿として奮闘する。 ビジョルドのスタイルは種々のジャンルにまたがるが、常にユーモアとコメディの要素がある。軍事冒険、政治的なスリラー、ロマンス、そしてミステリーを織り交ぜる。女性、同性愛者、身体障害者およびそのクローンの兄弟、あまり教育を受けていない人物など多様な視点人物の目を通して描く。 シリーズの重要な焦点は医療の倫理ジレンマである。生物工学、遺伝子操作、クローン、長命化などによりアイデンティティーが影響される様が描かれている。 多くの作品において、進歩したテクノロジーを持ち社会民主主義的で平等主義的なベータ植民惑星と、英雄主義的で軍国主義的で階級社会的なバラヤーが対照的に描かれている。シリーズの大部分の作品の主人公であるマイルズはベータ出身の母とバラヤー貴族の父の間に生まれ、この対照を具現している。 アイザック・アシモフのファウンデーション・シリーズと同様に、人類は競争相手となるような知的生物が存在しない銀河系全体を植民地化している。植民地化の最初の成功例はベータであり、これはシリーズ開始時の400年ほど前の出来事である。数十の惑星が独自の文化を持つようになっている。 星系間の移動は、遠く離れた地点への即時ジャンプを可能にする空間特異点である、ワームホールによって可能となっている。ワームホールを持つ星系はワームホール・ネクサスと呼ばれる。ほとんどのワームホールは宇宙ステーションにより、軍事的および商業的に管理されている。このような宇宙ステーションは、惑星政府、惑星上の企業、あるいはいかなる惑星からも独立した組織によって保持・運営されている。 ワームホール移動は、5空間航行の数学により可能になっている。多くの星系には、人間が居住可能なように改造された惑星が一つ存在する。一般的には単一政府が惑星全体を支配する。セタガンダとバラヤーはともに、周辺のワームホールを通って他の惑星を征服し、星間帝国を樹立している。 時間の長さには、地球の標準単位が用いられている。たとえば、バラヤーの一日は26.7地球標準時間である。 ビジョルドの父親と兄弟はエンジニアであり、20世紀の技術を無重力および別の太陽系に投影した描写がされている。人工子宮のような発明は大きな意味を持っているが、ほとんどの装置は遠い未来の日常生活を彩るだけのものである。 ビジョルドは、生命工学における技術の廃止の問題や、R&Dプロジェクトの高い失敗率の問題を扱っている。廃止された脳インプラントを持つジャンプ・パイロットや、停止された生命工学プログラムに沿って設計されたため、生理学的に置き去りにされた改造人間たちを描く。 作品世界の宇宙ステーションにおいては、『名誉のかけら』の200年前頃までは、人工重力は存在せず、無重力および遠心力による部分的重力の一般的であったが、現在では人工重力が用いられている。『自由軌道』および『外交特例』では無重力文化と重力に依存する文化の関係が描かれている。 小さな宇宙船ですら高加速の影響から乗客を守るために人工重力を発生させており、太陽系を時間や日の単位で横断することが出来る。軍用宇宙船、商用宇宙船だけでなく、個人的な”ヨット”まで描かれている。 地球のような重力と大気を備える惑星上の個人旅行には、ライトフライヤーやエアカー、そして車輪は持たないが反重力クッションで浮かぶ地上車が使われる。地上車はスポーツカータイプから武装リムジンまである。公共輸送には決められた路線を走って目的地に向かうようにプログラムされ、個室を備えたバブルカーや、長距離移動のためのモノレールがある。乗りもの以外には、反重力を使う装置として乗客を上階下階に移動させるリフト・チューブ、車椅子の役を果たすフロート・チェア、反重力ベッド、反重力椅子、台車やフォークリフトの役を果たす浮きパレットなどがある。
概要
背景
宇宙の設定
テクノロジー
反重力テクノロジー
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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