『ヴェローナの二紳士』(ヴェローナのにしんし、The Two Gentlemen of Verona)は、ウィリアム・シェイクスピアの初期の喜劇。シェイクスピア劇の中では登場人物の数が最も少なく、ヒロインが少年に変装する最初の作品。テーマは友情と背信。一部で劇の呼び物と言われているのは、プローテュースの道化た召使いラーンスとその犬クラブで、クラブは「シェイクスピア正典中、最も場面をかっさらった喋らない役」とも言われている[1]。 シェイクスピアが『ヴェローナの二紳士』の材源としたのは、ポルトガルの劇作家ホルヘ・デ・モンテマヨール
材源
『魅せられたディアナ』の第2話で、ドン・フェリックスはフェリスミーナに恋し、恋文を送る。フェリスミーナは『ヴェローナの二紳士』のジュリア同様に恋文を拒み、侍女と悩むふりをする。一方、フェリックスもプローテュース同様に父親に旅に出され、少年に変装したフェリスミーナを小姓にする。フェリスミーナはフェリックスが新たにセリアに思い寄せていることを知り心を痛め、さらにフェリックスの使者としてセリアの元に使わされる。二人の恋人たちは森の中での戦いの後、最後に和解するが、セリアは架空の小姓に恋し、悲しみながら死んでゆく。 『ヴェローナの二紳士』の創作年代はわかっていないが、シェイクスピア作品の中でも最古の作品の1つと考えられている。1598年のフランシス・ミアズ(Francis Meres 「ヴェローナの二紳士」とはヴァレンタインとプローテュースのことである。劇は、ヴァレンタインが人生経験のためヴェローナからミラノに旅立つところから始まる。プローテュースもミラノ行きを誘われるが、恋人のジュリアと離れ離れになるのが嫌で、ヴェローナに残るという。恋を知らないヴァレンタインはプローテュースを愚かしく思う。 しかし、プローテュースも父親の命令でミラノに行かなければならなくなる。プローテュースはジュリアに永遠の愛を誓い、ヴェローナを去る。 ミラノでヴァレンタインは恋を知った。しかし、その相手シルヴィアの父親のミラノ大公は娘を、シューリオという財産はあるがとんまな男と結婚させようとしていた。そこにプローテュースが到着する。プローテュースはたちまちシルヴィアに恋をして、シルヴィアを手に入れるため、ミラノ大公に嘘を吹き込み、邪魔者のヴァレンタインをミラノから追放させる。新たな恋のために昔の恋(ジュリア)と友情(ヴァレンタイン)を裏切ったのである。 プローテュースと会いたい一心でジュリアも男装してミラノにやってきた。プローテュースはジュリアとは気づかずに、ジュリア(セバスチャンと名乗る)を小姓にし、シルヴィアへの恋文を届けさせる。しかし、シルヴィアは恋人を裏切るプローテュースが許せず、ジュリアの目の前で恋文をびりびりに引き裂く。 ヴァレンタインが好きなシルヴィアは家出をする。その頃、ヴァレンタインはひょんなことから山賊の頭になっていた。シルヴィアを追いかけて、プローテュース、小姓に化けたジュリア、シューリオは森にやってくる。そこで山賊に連れ去られかけたシルヴィアを救出し、プローテュースはシルヴィアを力ずくで自分のものにしようとする。そこにヴァレンタインが現れ、プローテュースを裏切り者となじる。プローテュースは反省して謝罪する。ヴァレンタインはそれを赦し、友情の証として、シルヴィアをプローテュースに譲ると言い出す。それを聞いたジュリアはショックで失神する。ジュリアの正体がわかり、プローテュースは反省し、和解する。
創作年代とテキスト
登場人物シルヴィア(チャールド・エドワード・ペルギーニ画)
ミラノ大公(DUKE OF MILAN) - シルヴィアの父。
ヴァレンタイン(VALENTINE) - 二紳士の一人。
プローテュース(PROTEUS) - 二紳士の一人。
アントーニオ(ANTONIO) - プローテュースの父。
シューリオ(THURIO) - ヴァレンタインの愚かな恋敵。
エグラモー(EGLAMOUR) - シルヴィアが家出する時の援助者。
スピード(SPEED) - ヴァレンタインの小姓。
ラーンス(LAUNCE) - プローテュースの召使い。
パンシーノー(PANTHINO) - アントーニオの召使い。
宿屋の亭主(HOST) - ミラノでジュリアが泊まる宿の。
山賊たち(OUTLAWS) - バンランタンの仲間。
ジュリア(JULIA) - ヴェローナの貴婦人。プローテュースの恋人。
シルヴィア(SILVIA) - ヴァレンタインの恋人。
ルーセッタ(LUCETTA) - ジュリアの侍女。
召使いたち(SERVANTS)、楽士たち(MUSICIANS)
あらすじ